僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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残り幾日かの狂騒曲

僕と漆黒の魔獣

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 双剣を構えた僕に向かって野獣が飛びかかってきた。
 鋭い爪が目の前まで迫りそれを剣で受けた。受けられたと分かった獣は口をカパッと開いた。噛みつきかと思ったが喉の奥に炎が微かに見えて、頭を下げる。


「『カトン!』」


  頭上を炎の球が通り過ぎてゆく。
 チリと後ろ毛が炙られた気もするが視線は獣がから外さない。先程獣は『カトン』と言っていたが恐らくは火遁かとんだろう。僕はそちらの方の勉強はしなかったが前世ではアニメや漫画にもなる忍びという団体が使っていたきがする。魔力の変動は感じられないのでこれも無能力彼等にとっては大事な力になっていることは間違いない。

  技が外れた事を理解して二回目の技を放とうとした獣を蹴り飛ばし距離を取る。だけど離れていては遠距離技のやり放題の的にされてしまう。当たるようなヘマはしないけど。

 スッと蹴られて体勢を崩した獣の側に寄る。獣の体格は僕の2倍ほどはありそうか。一応一撃でも当たったら身体の一部はふっとぶかもしれない。


「『マタダレカ隠れてイルノカ。』」
「さあね。」
「『オレハツヨクなった。術もジザイだ!』」
「‥…。」


 氷の矢が獣の周りに浮かび呼びかけるような技名と共にこちらに連鎖して襲いかかってきた。
 それを紙一重に避けていたが、足元にあった小石にバランスをとられて一撃だけ腕にかすってしまった。
 かすった所は氷にが出来かすった周辺を凍らせてしまった。
 矢が過ぎ去った後を見ると地面が凍りついている。確かに魔法が使えなかった男にしては強くなった事であろう。
 凍りついている腕を庇っていたら、クククて獣ご笑い声を上げた。


「『どうした。これでオワリか?』」
「何故こんなにも世界を混乱に陥れた?」
「『ナゼ?向こうのセカイに希望をミイダシタカラダ。』」
「希望‥…。」
「『お前のようにマホウが使えないモノの気持ちがワカルカ?』」


 獣は攻撃が当たり凍りついた僕の腕をみて気分が上がっているようだ。前回は手出し出来なかっ相手に攻撃が当たるようになったのだからそうなるのも分かる。そして殺すことだけしか思っていなかった相手の口が饒舌になる。


 彼の生い立ちから全てを壊した事、ムラキとの出逢いに希望が湧いた事。色々と情報を垂れ流してくれる。
 中でも要である宝石が5つ存在していた事、このグランドオールの地は他の場所に変えられない大事な地でありそれを任されて鼻が高いなどなど。そこで驚いて見せれば他の地についての情報を得れた。
 彼が後悔しているのはどうやら向こうの世界に行けなかった事らしい。


「『オマエに会わなければムコウノ世界で明るいジンセイガ送れたのにぃ!』」
「向こうの世界でも異質な存在は排除されるよ。」
「『オマエが向こうのセカイをシルワケがナイ!』」
「知っているよ。」


だってムラキの探しているのは僕なんだから。


 獣が息を飲むのを感じた。
 もう良いだろうと徐ろに凍っていた腕を抑えていた手を離す。
 軽く手を振れば氷は四散し怪我などない服だけが切れた後だけが残る。
 そう、元々バランスを崩す時点からわざとだったのだ。前回の強敵が弱く感じれば色々と語ってくれると思っていたがまさにそうだった。

 そのためにコウにぃと父様は隠れてもらっている。

 攻撃なんて何事もなかったような姿で対峙し直していると隠れていた二人も出てきた。


「別に一人でも大丈夫そうだな。」
「そうだね。砂クジラは小さいから逆に戦いづらかったのだろうね。」
「『な、ナゼダ。 』」
「君みたいな奴に殺られるなんてないよ。火遁は驚いたけどそれだけだ。ただ単に情報を引き出したかっただけさ。」
「『騙したな!』」


 喚いている漆黒の魔獣を暗器で吊るしあげる。
 軽い戦闘と調子に乗って語っていた間に蜘蛛の巣の様に張り巡らしてあったのだ。それで金魚すくいの様に掬って吊し上げているのだった。

 術や忍術?等を繰り出して糸を斬ろうとしているがこの糸は特別製のコウにぃからの贈り物であるそんなの効くわけない。


「色々と情報を有難う。この地は計画では大事な地なのだろ?その要の君を壊したらどうなるかな?」
「『むダだ。発動してしまえば影響は無い。』」
「それは試せば結果は分かるよね。君をあのときちゃんと殺しておけば良かったね。ゴメンね。」
「『やめろ!やめて下さい。ヤメテ‥…。』」


 糸の範囲を狭めて潰すように力を込めた。
 彼の者の謝罪は今は居ない彼が殺めた人達に届けば良いな。無能力で迫害されたとして彼はもその場所から 逃げ出すことはしなかった。逃げ出すことは自分自身が許せなかったのかもしれない。


「最後に教えてあげる魔法が使える僕だけど魔力はたったの50しかないんだよ。」
「『‥…。』」
「もう聞こえてないか。」


 無能力だと言われていたこの肉塊になった男より僕のほうが魔力は低かった。魔法が使えないのはどうしてかはわからないが僕としては羨ましいかぎりである。

 暗器を広げ、真っ赤に染まった漆黒の魔獣の腹にナイフを立てる。ゴリッと音がしてあのときの宝石が出てきた。

 躊躇することなくそれに攻撃をすれば宝石は使命をおえたかの様に砂へと変わる。空を見上げるが向こうの世界が近づいてきているのは変わらないようだ。






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