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残り幾日かの狂騒曲
僕と心のほわほわ
しおりを挟む空は曇天のままで雷鳴が時々轟く様を呈している。空の向こうにはネオンが輝く街が見えている。こちらとは違い鉄やコンクリの広いようで小さい世界は徐々にこちらに近づいてきている。あの場所は何処なのだろうか。空には物騒な兵器が積まれた飛行機が飛び回っていた。
やはり、宝石を壊したというのにあの獣が言っていたようにこの異変が変わることはないようだ。
あと2ヶ所探し出して壊さないと行けない。いや、合計5つと言っていたことを考えると僕たちが所持する石を抜いて予備を考えたらあと3つか。
漆黒の魔獣の遺体を他の動物や魔獣が食べないように浄化を施し、地面に埋める。処理を終えた後は森の主の砂クジラに感謝の意を込めて礼をしたあと、巨木の砂クジラにまた飲まれて入り口まで送ってもらう。
意外と父様に懐いた砂クジラに今度は他の家族と遊びに来ると伝えると魔の森から出る。ここで今度ピクニックか。まあ、家の家族なら大丈夫だよね。
「シンリ、連絡が入った。」
兄上が連絡を取るための器具を持ちそう言う。
どうやら、向こうの世界の術者の者とコンタクト出来たとのことだ。
本来ならこんな事は許されないのだが今は異常事態。魔神達が密かに手助けしてくれたのだろう。
そうなれば一度城に戻ったほうが良さそうだ。
「疲れると思うけど、また転移魔法お願いしても良い?」
「シンリと違って戦ってはないから問題無い。行くぞ。」
さて、誰が出てくるかな。
独り言の言葉が僕に届いたがどうやら向こうの術者はコウにぃの知り合いかもしれないようだ。
転移魔法を展開してくれたおかげで直ぐに皆が集まる謁見の間へとついた。
謁見の間には大きな鏡の様な装置があり側には女神様が控えている。そして僕たちの姿が見えると手招きをして鏡の前に連れて来られた。
鏡を覗くとそこに映るのは僕の姿ではなく知っている服装だけど知らない人の姿があった。
前世で神事をしたりしたときによく来ていた狩衣を身に纏い、僕の姿に一瞬だけ目を見開いた男がそこに居た。 少し明るめの黒髪に茶色の混じった瞳のthe日本人と言った色合い。父様やコウにぃには劣るけど顔立ちはそれなりに整っている様に思える。
向こうは不思議そうに見ている僕に気が付いた様で人好きするような笑みを浮かべた。
僕の背後から覗き込んでいたコウにぃが珍しく慣れたように軽く手を上げると、男も手を軽くあげる。これではっきりしたがコウにぃの知り合いの様だ。僕に記憶が無いのはまだ回収出来ていない石のせいだろう。
「僕はシンリ・ディーレクトゥスです。もしかして僕を知っているかもしれませんがちょっと思い出せなくて。」
『ああ。事情は聞いているから大丈夫。俺は神代 和季。陰陽の調和を守る者だ。』
「じゃあ、同業者か。」
『ああ。今回の異常事態をおさめるべく使命を受けた。』
それならば、話は早い。
先程得た情報を混ぜて今わかっていることを話してゆけば、未だに状況が飲みこめて居なかったこちらの者も顔色を悪くしながら大人しく聞いていた。
向こうの世界ではだいぶ世界が混乱しているようだがあちらでは神はほぼノータッチの姿勢でこちらでカトレア様が世界に警告したようには出来ていないそう。
『こちらの世界にも要があるはずだな。そちらの重要と言われていたグランドオール?の対になりそうなのは樹海かな。』
「僕もそうだと思う。あと属性的には水辺か火山か土辺か鉱山か。人魚の国で敵にはあって石を奪ったからこちらは水辺は無いと思う。」
『なら、こちらはそちらを探してみよう。』
別の世界とこんなにも色々と意見交換出来るとは思わなかった。
しかも相手も同じ同業者であるという事で1から説明しなくても通じるのは助かる。
『誰か、式神様を。』
『御意。』
ああ。こちらの式神達は宵月以外は世界を駆け巡って調和の乱れを正してもらっている。宵月はあいも変わらず僕の腕できゅうきゅうと護衛?してくれていた。
和季が映ったときは少し反応を見せてくれたが今は興味ないとばかりに腕輪のフリをしている。
「所で敵さんの情報は?」
『ん?あ、ああ。数日前に邑輝の目撃はあった。』
「あれ、こっちには居ないのか。」
『どういうからくりか戻ってきたようだね。きっと黒幕にそちらの世界について報告したのだろう。』
「黒幕も知っているの?」
『ああ。俺にとって憎いけど憐れむ存在だよ。』
そう語った彼はとても寂しそうな表情をしている。
その黒幕の目的が僕かもしれないのだけどこんな大掛かりな事をする意味とはなんなのか。
『それは分からないな。いつも狂っている奴らだからね。』
狂っている奴らと言った時に鏡の向こうから複数の殺気を感じた。本当に黒幕とは何者なのだろう。
「大変だ。芸術の国で異変だ!多分要があるはずだ。」
さらに黒魔について聞こうとしたとき、謁見の間にシアさんが慌てた様子で入ってきた。どうやら要がありそうな場所を見つけてくれたみたいだ。あそこは職人の街で音楽の街。あの、骨の楽器や巨大な赤子を産み出したのに手を貸していたのが彼らだったのなら間違いない。
「和くん金属性、鉱山も探索不要だよ。」
『お、あ、うん。』
「どうかした?」
『いや、何でもない。ほら、行くんだろ?』
「もちろん。」
『気をつけて。こちらの世界は任せといてよ。ね、皆。』
おお!という声が聞こえた。
なんかその声の中に懐かしい声が聞こえた気がしてほわほわとした気持ちになる。不安も感じないのは知らないはずの彼を信頼しているから。
僕はもっと話していたくて後ろ髪が引かれる思いを感じながらもその場を離れた。
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