僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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霊峰と深緑の山

開演

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 しんしんとどこまでも静寂が続く白い世界。
 男はそんな世界に突如として現れた。
 そう、突然現れたのだ。

 虹色に輝く瞳をパチクリとして身も凍えるような銀世界を見回した。

 先程まで師の元で一人前になるために修行をしていたというのにどうした事か。数日の断食、断水をえて強き精神と欲望に打ち勝ち、やっと食事にありつけるという予定であったというのに。


ぐうぅ


 思いだしたら自然とお腹がなってきた。
 とても空腹だ。

 辺りを見回しても白い世界で料理のありそうな場所はない。なだらかな傾斜があるのに気が付いてここが山だと理解した。冬の寒さが包む雪山だ。

 山ならばもしかしたら管理人か誰か居るかも知れない。
 生き物の住んでいる気配もするのでいざとなれば禁を破って食べてしまえばいい。しかし生き物が居るという事は山には木の実があるかもしれない。


 男は腹が空きすぎて喉元をかける吐き気を抑えると山を登り始めた。


 暫く山を登っていると祠のある空間にたどり着いた。そこには動物達が身を寄せ合い木の実等を集めている。
 その奥には彼らを優しく見つめている女性が居た。

 女性は雪がしんしんと舞う場には不釣り合いな薄着で彼が見たこともない薄緑色の肌をして鮮やかな紅葉のような真っ赤な髪をしていた。真っ赤な髪がこちらに気がついた斎に揺れる。

 男の姿を見たとき目を見開いて驚いた様子なのが分かった。
 男は彼女に近寄り、少しだけ食べ物を分けてくれないかと頼み込んだ。出来れば一晩の宿も頼みたかったがそこまで図々しくは出来なかった。

 女はその願いに眉間に皺を寄せて男の姿をまじまじと見つめる。男は修行中であったためボロボロの服で数日の断食で体つきも見窄らしかった。女は失せろとばかりに手をヒラヒラ振る。


『今は冬じゃ。この山で生きる者で精一杯じゃ。妾にはそなたに渡すものなど何も無い。まあ、水ぐらいはそこらの雪から採取できようぞ。』


 何とも失礼な女の言い方に男は怒りを顕にした。

 男は手を女に向けると呪いを掛けた。
 この山が1年中雪が溶けないように。



 男が次に向かったのは別の山だった。
 そこも先程と同じく雪が降り、山は静寂に包まれていた。
 
 男は先程と同様に山を登り始めた。

 暫くして今度は祠のある今は凍っている湖の畔へと出てきた。そこにも一人の薄着の女性が居た。肌が薄緑色で長く煌めくイチョウのような髪は目が離せなくなるほど美しい。
 思わず見惚れていて足元の枯れ木を折ってしまった。


『何方様ですか?』
「あ、怪しいものではないです。」


 男はとてもお腹が空いている事と食料を分けてほしいことを願い出た。


『それは大変でしたね。少しお待ち下さい。』


  女性は足元に居た小さな動物に何やら話しかけていた。すると動物は心得たとばかりに森に走ってゆく。暫く沈黙が訪れる。
 女性は優しい微笑みを携え何かを待っていた。
 それが分かったのはイチジカ程経ってからだった。

 女性の美しさに見惚れていた男の足にコツンと何かがあたったのだ。
 下を見るとそれは胡桃だった。
 突然胡桃が出来る訳がないと辺に視線を送ると先程の小さな動物が居た。その背後には沢山の動物がこちらに向かってきている。

 その動物達はそれぞれ何かを持っているようだ。


『豪華な食事は用意出来ませんが、山に棲む皆に一つだけ食料を分けて貰ったのです。お腹の足しにはなるのではないでしょうか。』


 次々と運ばれてくる木の実や食べ物に男は感謝の意を込めて手を合わせると、食べ始めた。数日ぶりの食事はとても甘く口の水分を持ってかれる物だ。
 目の前には食べ物が山となっていた。


『食べ終わりましたらあちらの洞窟でお休み下さい。』


 そう言って女性は祠の裏手にある洞窟を指さした。そこには先住のくまらしき者が寝床を整え人一人入りそうな空間を空けてくれていたのだ。

 男はこの山の全ての者に感謝をして山に1年中豊かになる祝福を授けたのだった。

 先程までしんしんと舞っていた雪が止まり、次第に暖かくなってきたが今は誰もそれには気が付かなかった。




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