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霊峰と深緑の山
雪見の山と一人の男
しおりを挟む「何故、山に入れないのですか!」
件の雪山に着いてもこもこの冬装備の姿で山の管理人の住まう、お社に向かった。お社は一見綺麗な洋館のようだが裏手には山へと続く道が繋がっている。通常の山ではこんな場所は無い。どうやらここは神が住まう山として近くの民から奉られているようだ。
そういうのは前の世界にもあったが、人々が特別な山として認めると管理人を立てて人が山に登るのを管理したりする。観光のためと言ったら良いのかこれならたとえ戦争になっても戦場にはなりにくかったのだ。
その建物に入ってゆくと一人の男が恐らくこの社の主人と言い合っていた。
「私は入らないといけないんです。」
「ですから、今から更に酷い吹雪となりますから。」
あの男はどうしても山に入らないといけないようだが外から見ても山には不穏な雲があって登山するのは普通じゃ難しい。
何となく男が気になるも別の空いている受付の所に向かった。
窓口には二人の言合いを心配そうに見ている年寄の姿。
話しかければこちらを向いて、話を聞いてくれた。
「山に入りたいのだけど。」
「あんた達もか。今は閉鎖しているんだよ。」
「僕達は女神様から頼まれてきました。」
山に入りたいといえば案の定とめられる。
そこですかさず女神様に書いてもらった書状を見せれば受付の老人が慌てて足をもつれさせながらも奥に入っていった。そして奥からガラガラと何かが崩れ落ちる様な音をさせながら別の者を連れてきた。
「ほ、本当に均衡の女神様からでしょうか。」
「ええ。かのお方は世界を守るために駆け回りお疲れでして僕達が来たのです。」
「こ、こんなに若いのに。」
「有難うございます。貴方ならこの書状が本物だと分かりますよね。」
奥から出てきた者はその場にはそぐわない宮司の様な袴姿だった。教会に牧師や聖女がいるようにこの山を奉るための存在がいてもおかしくはない。それを何と言えばいいのかわからないけど、書状を渡せば受け取った宮司(仮)がまじまじと中身をもんだあとにそっと返してくれた。
そして、静かにお辞儀をして迎え入れてくれる。
「失礼しました。わたくし、この山の山守をしています者です。どうぞこちらに。」
「待ってよ。そいつ等だけ通すのはずるいじゃないか。」
「そいつ等とは失敬な。」
僕達を止めたのはもう一つの受付で受付と言い争っていた男だった。
明るい茶髪で黒縁の眼鏡を掛けた男は僕達を指差して文句を言っている。僕達が振り返ると男は目を見開いて一瞬止まるがニンマリと笑って更に言葉を重ねる。
「あんな若い奴が行くんだ本当は大丈夫何だろ!」
「彼らは神様の使者です。普通の者達ではないのですよ。」
「はん!そうと言って本当はそいつ等からいくら貰った!皆に話してやる!」
「この!」
「行かせたら良いと思いますよ。」
何時までもこんな男に時間を費やすのはめんどくさい。
それならば自己責任で勝手に行かせてやれば良いのだ。彼だって危険なのは分かっていて無理を言って居るのなら死んだとしても訴えないだろう。
「契約書を書かせてこちらに非がないことを明確にしてやれば彼の家族に訴えられてもどうにかなるでしょう。アキさん、手伝ってやって。」
「分かりました。」
こういう事務処理はバルスさんから習っているようで今や頼りになるほど手際が良い。数分もしないうちに書類が完成して、山守の男に渡した。
山守に渡したのはここを直接指揮しているのが彼だからだ。下っ端が勝手にやった事で被害が来ることを避けたのだ。
中身をじっくりと確認した山守は男に紙を渡す。
それと同時に恐らく元々の山に入るための書類にもサインをもらっているようだった。
「これで入る許可を出します。しかし、ここの門は毎日10時から15時までしか開きません。もしも引き返すならその時間にしてください。」
「え、別に此処に戻らなくても出れるんじゃないの?山だし。」
「こういう山は初めてのようですね。」
普通の旅路とかで超える山とは違い、管理がされるほどの山ではその山の自然環境をこわさないように、密猟者が出ないように山神が境目を封じることがある。この雪山もその部類なのだろう。その証拠に山は雪で荒れてきたのに社の外では子供たちの遊ぶ声が聞こえてきている。外では荒れてはいないという事。
「出入りできるのはここだと思ってください。だから遭難者がいないと申しあげられるのですから。」
「まだ言うか!」
またガヤガヤしている男達を置いて僕達は門から一歩出て雪山に入って行った。そこは辺りを見回す限りの銀世界。
生物の気配がわかりづらい程に荒れた世界であった。この状態で山登りをするにははぐれそうで怖いものがある。
「ロープで互いを結んどく?」
「そうですね。先頭は風除けも兼ねて私がやります。次に公爵、宜しいですか?」
「ああ。」
「君たち、待ってくれよ。」
吹雪で前も見えないほどなので互いをロープでつなぎ逸れないようにしようとしたら、先程の男が僕達に追いついて声をかけて来た。
「オレも一緒に行って良いだろ?」
「何で?」
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