僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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霊峰と深緑の山

謎の男と雪の山

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「一緒に行ってくださいよ。」
「‥…。」
「良いじゃ無いですか。どうせあなた達も山を登るのでしょう?」
「‥…。」
「無視しないでくださいって。」



 ねえねえと話しかけてくる男。
 それを無視して先に進んでいるが、懲りる事もせずにずっと話しかけてくる。風の影響で体力を消費しないために最小限の影響になるように一列で歩いているのだが、そうすると最後に来るのは僕であり、男は先程から僕に話しかけてくる。



「見た目以上に体力があるみたいですね。」
「え?」
「我々に着いてこれているんですよ。」



 アキさんの言葉にハッとして男を見てしまった。
 男はニコニコと笑っている。
 茶髪の髪は前髪が長くよく目元が見えないが口元は弧を描いていて、声色も明るい。服装は冬の恰好をしているとはいえおしゃれ重視の僕らの装備より薄手の物だ。

 チャリチャリと音を立ててウォレットチェーンが煌めいている。


「お前は何者だ?」
「あ!やっとオレに興味が出た?」
「気にせず行きましょう。」
「待ってよ。オレはカズキ。」
「カズキ?」
「ああ。あれ、オレの事もしかして知ってる?オレってば有名人?」


 兄上が、その名前に反応して僕同様に男、カズキを見やった。その行動におちゃらけた感じで返すカズキ。その反応を見て興味が失せたのか立ち止まっている先頭のアキさんに声を掛けた。



「気の所為だな。行くぞ。」
「あ、ああ。冗談だって。待ってよ。」



 結局はカズキは後をつけて来る様だ。
 そして独り言の様に自分語りを始めた。

 名前はカズキ。
 この身はとある名家の分家に当たる家系であり、色々なしがらみが嫌になってお付きの者と逃亡中である。
 本当は大切な人を追いかけてきたのだけどそれは秘密だとの事だ。
 家にいたときは一族で行っている仕事のおかげで体力や能力などを鍛えられたそうでこの雪山もそんなに苦痛ではないそうだ。 
 自分の事を語るのが飽きてきたのか、今度は僕に狙いを絞り話しかけてくる。



「ねえ、君の名前は?」
「‥…。」
「君みたいな可愛いを久しぶりに見たよ。」
「‥…。」
「ねえねえ。お嬢さん。」
女子おなごだと‥…。』


 カズキが僕を女の子だと思い話しかけて来た。
 確かに僕の格好はもふもふのふわふわで色合いも女のコぽいかもしれない。だけどもこれも立派な男物である。確かにもこもこしていて体型がわからないから体つきでの判別はわからないかもしれない。

 勘違いをそのままにしていたら、どこからか女性の声がしてきた。
 その声は怒りに染まっている。


『許さぬ。許さぬぞ!』


 女の声がだんだんと強くなる。それと伴い地響きが起こりだす。
 この雪山で地響きが起こると発生するのは‥…。


「雪崩です。」
「うわぁあ!」
「ちょっ、おい!」


 白い波が高い場所からこちらに向かって流れて来た。
 足を掬うようにところだけ雪の流れが有るように感じる。それをロープで引っ張ろうとしてくれているコウにぃとアキさん。
 だけども混乱しているカズキが僕に抱きついていて身動きが取れない。このままだと兄上やアキさんにも、迷惑がかかる。
 スッと腰につけていた小型ナイフを取り出した。

 それを見て、兄上が首を振る。

 どうやらこの山の神様は僕が女性だと勘違いしている様だ。誤解を解いてじゃないとこの自然災害の足留めがこのあとも多発すると思われる。
 僕等なら関係ないだろう?
 うん。大丈夫だと思うけど他の生きし者達の被害が膨大そうだ。


「先に行って誤解を解いておいてよ。いやぁ、この母親似の美貌のせいでごめんね。」
「ちっ‥…お前のせいじゃない。そのくっつき虫を次に遭ったら殴る。」
「アキさん、兄上の事頼むね。」
「‥…はい。」


 僕の所でロープを切れば兄上を抱えてアキさんがその場を離れる。
 僕もこのお荷物がなければ追いかけられるのだけど火事場の馬鹿力か、抱きつく手はしっかりとしていて外せそうにない。そうしているうちに足は雪滑りで取られていき重さで更にうまる。

 こうしているうちに目の前には雪崩が迫ってきていた。

 殴ってでも引き離せば良かった。

 雪の白さに視界を取られた時に心底そう考えた。







 雪山の白さに目立つような鮮やかな色合いが雪に埋もれてしまった。
そのまま雪は大切な存在をどこかに持っていくかのように流れてゆく。これごときでどうにかなるなんて思ってはいないが眼の前で起こるこの事態は気分が悪くなる。

 そもそもあの勝手についてきた男がシンリを女だと言わなければこんな事にはなっていなかったのに。


あの男が少しだけ気になる名前だったから様子を見ていたが早々に排除しておけばよかった。今は全ての記憶を持たないシンリだが『カズキ』という名は彼奴にとっても大事な名前なのだ。
 だけど彼奴はシンリの前で死んだはずだ。

 万が一転生していたとしても魔神父親が何も知らせないのはおかしい。それにあんな馬鹿げた性格でもない。


「ちっ‥…。」
「アシュレイ様どちらに。」
「早く山の神にあって文句を言ってやる。」


 名残りおしそうにシンリがいた場所に視線を送るアキンドには同意しかなかったが、これ以上シンリに被害が出る前にどうにかしたほうが良いだろ。

 俺とアキンドは山登りを再開した。




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