僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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霊峰と深緑の山

雪山遭難アクティビティ

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 どのくらいたったのだろうか。
 雪崩に巻き込まれて暫くして移動が止まった。雪に埋まりどちらが上なのかも分からないが、呼吸のために顔の前に空間を開ける。そうすれば重力にのっといて水滴にしろ何にしろ落ちてゆくところが地面の方だ。

 暗闇で普通の人なら見えないかも知れないが僕が持つのは暗殺スキル。人よりは夜目に効く自身がある。

 そうした結果、僕は仰向けで埋もれているのが分かった。分かってしまえば上に向かって進んでいけば出られるのだが、身体の周りに火の気の精霊を召喚する。火の気の精霊が僕の周囲の雪を溶かし、辺に空洞を作ってくれる。立ち上がれるようになったので精霊にお礼を言うと照れたように輝いて消えてしまった。身動きが可能になったので、火の魔法を使い雪の中から飛び出ればそこは山の下の方だった。

 相変わらずの吹雪に視界は不良。
 兄上の気配も吹雪のせいでわかりづらい。


「うごご‥…うぐ。」


 どうしたものかと考えていると、蠢く存在が目についた。あのチャラチャラしたウォレットチェーンはカズキの物だ。ということは雪に上半身が埋まっているのはカズキなのだろう。
 頭をポリポリとかきため息をつく。
 見殺しにするのはどうにも後味が悪い。

 下半身がバタバタと暴れているのを当たらないように注意して指で魔力の円を彼の周りに書いた。


「『火炎』」


 じゅっと音がなりカズキの周囲が溶ける。
 

「アッツ!」


 多少は熱いかもしれないけど死ぬよりはマシだよね。
 
 僕は雪の周りを転げ回る彼を無視して移動することにした。視界が悪いから取り敢えずは洞窟で過ごす事になるだろう。

 
「『俺が彼奴に知らせようか?』」
「大丈夫。まだ君たちの手を煩わせないよ。」
「『了解した。』」


 久しぶりに出て来た僕の守護獣は心配性の様だ。


 カズキ隠すように腕輪を濡れた袖に隠す。何か知られてはいけない予感がするんだよね。

 
「ま、待ってよ。」
「君の目的は何だい?」
「雪崩で巻き込んだのは謝るよ。目的も言う。」

 その前に、カズキが言葉を止めた。

「凍えそうなんだよ。」


 思わずため息をついてしまった。




 濡鼠の僕らは岩の裂け目で出来た洞窟に潜り込む。空間魔法から乾いた木片を出して火を焚くと濡れた洋服を乾かすために脱ぐいだ。
 色々と肌に張り付いて気持ちが悪い。

 中のインナーも乾かそうと脱ぎかけた所でカズキが素っ頓狂な声を上げた。


「お、女の子がそんなだ、大胆!」
「目が隠れてないけどな。」
「だってオレ男だもん。」
「僕も男だけどな。」
「え?」


 よいしょとインナーを脱ぐとそこには2つの膨らみがなんてことはけして無い。
 どれだけ鍛えても兄上やアキさんの様にムキムキにはならないしなやかな身体が火に照らされている。濡れているからかツヤツヤとひかる様はまさにボディビルダーの様だ。


「‥…綺麗だ。」
「今のところ僕にはそのけはないのだけど。」
「なっ、オレにも無いよ。てか、今のところかよっ!ブエックシュ!」
「ほら、君も脱ぎな。風邪引くぞ。」


 何を驚いているのだか。好きな人が出来るなら性別なんて些細の事だろうに。

 僕に促されてカズキが服を脱ぎ始めた。
 道中の話のとおりに鍛えている体つきだ。所々に傷もあるようなので武道の嗜む家なのだろうか。
 上着を脱いだときに彼の眼鏡が地面に落ちた。

 前髪から覗く目と視線が合う。
 宝石の様なグリーンとグレーのオッドアイだった。この世界でも極稀にしか見ないオッドアイ。しかも引き込まれるように美しい色合いだ。


「あ、眼鏡が。」


 いそいそと眼鏡をかけるカズキは次に見ると出会ったときと変わらない姿に戻る。

 あの眼鏡、認識阻害の魔法でもかかっているのか?

 
「その眼鏡‥…。」
「‥…見たんだね。」
「やっぱり、その眼鏡は魔道具なんだ。」
「うん。オレのこの目は目立つから、付き人が用意してくれたのさ。」
「探していると言う?」
「ああ。あいつは空間系の魔法がで受付なんて通らなくても山に行ける。この山にある特殊な植物を取りに行って帰って来ないのさ。」


 それなら受付の人が見ていないのも納得だ。
 だからと言って空間をいじった魔法で山に行っているなんて口を滑らせたら大問題である。


「結界はどうしたのさ。」
「小さな綻びさえあればあいつなら侵入できるよ。」


 その人に少しあってみたいかも。
 それだけの技術を持つのならさらなる能力向上の足がけとなるかも知れない。この場に兄上がいれば盛大なため息をつかれたかもしれないけど、興味が出たものはしょうがない。


「そんなことが出来る人がこの山で手こずるとは思えないけど。」
「あいつは器用貧乏と言うか空間をいじる事は天才だけど他がそれなりなんだよね。現にちょっと採ってくると言ってこのザマさ。」
「君も大丈夫だとは思えないけど。」
「それはそう見えてしょうがない。他人には隠しておきたいからね。」


 だけどと彼は言葉を区切る。


「君になら見せても良い。とても気に入ったんだ。」


 ぞわりと背筋に薄ら寒いものが駆け巡ったように感じた。
 あのおちゃらけた軽い感じの男から発せられるきみの悪い空気に自然と生唾を飲みこんだ。


「ごめん。怖がらせたいわけじゃないんだ。」
「いや、大丈夫。」
「服を乾かしてそれからこれからの事を話そうよ。」


 今、一瞬だけ身体が強張った。
 別に戦ったとしても負けるような相手ではないのに。
 本当に彼は何者なのだろうか。






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