僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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霊峰と深緑の山

一方その頃

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 眼の前で大切な存在が消えるのを見るのは気分が良いものでははい。むしろ喪失感を感じでどうにかなってしまいそうだ。

 無事なのは分かっているのだがその気持ちはどうしょうもない。前にダンジョンで眼の前で消えたときにもう二度と起こさないと誓ったのに。
 それもこれもあの変な男のせいだ。

 最初はただの観光客だと思っていたが、あまりにもうるさいのでアドバイスをして雪山に入れる様にしてやった。だがそれがそもそも間違いだったのだ。
 ペラペラとよく回る口に、馴れ馴れしい態度。無視をしようがついてくるしぶとさにお貴族の様にすぐ追いつかなくなると思っていたのに意外とある体力。


 アキンドに指示をして速度を上げてもらおうとしたら男が『カズキ』と名乗ったので思いもかけずに動きが止まった。
その音はこの世界では珍しい響きだ。

 地球の日本人の転移者もいるだろうから全く無いとは言えないが偶然ともその響きの名前がつけられるとは驚きだ。


 カズキと名乗った男を見やると同じ音を持つあいつとは全く違うのは分かった。あいつはこんなにもチャラチャラしていないし、そもそも茶髪でもない。眼鏡の奥の野心はあいつとは別の男に似ているが、恐らくあの男ならこんなところで一人で居ないだろうから違うだろう。



 やはりと言うか男の失言により山の女神の怒りに触れてしまった。
 地響きが発せられそれにより雪崩が起こる。雪崩は不思議なことにシンリの元に向かっている。それもカズキがシンリをお嬢さんと呼んだせいだ。

 更に、パニックになっているのかシンリを抱きしめる様に拘束していて本当に邪魔な奴だ。雪に足が取られうまく抜け出せないシンリを更に溺れさせようとしているように見えた。

 シンリがこちらまで巻き添えになると判断したのだろう俺と繋がるロープを切断するためにナイフを取り出した。


「駄目だ!」


 声は出なかったが俺の意図は理解したのだろう。困った顔をしたあとに何かを言っている。


『先に行って誤解を解いておいてよ。いやぁ、この母親似の美貌のせいでごめんね。』


  唇を読めばそんな感じに軽い感じである。
 あまり良く知らないやつと一緒にしたいとは思わなかったが、シンリの袖から見える宵月が頷いているように見えたので盛大な舌打ちをした。

 シンリがアキンドにも何かを伝えてナイフを一閃させた。

 アキンドが俺を抱えて避難する時に白い波により攫われるシンリの姿。その背後にいるあの男がにやりと笑った気がした。




 暫くして地響きが落ち着くと俺たちは先に進む事にする。
 宵月が慌ててこちらに来ないことを考えて、予想通りシンリが無事なのはわかっている。だが、あの男の最後の表情が気になり、心が荒れる。


「アシュレイ様、あそこに祠が見えます。」
「行くぞ。」
「はい。」


 アキンドが指さした先には雪に埋もれた祠があった。
 祠を覗くと中には小さな動物達が身を寄せ合い暖を取っている。外は常に降る雪のせいで寒いからここは最適な場所なのだろう。

 それらを除くと見えるのは山の神を形どった手の平ぐらいの像だ。
 淡く光るそこにやつは居るのだろう。

 俺はその像を掴むと外に持ち出した。
 中の小動物を怯えさせるなんてシンリに怒られるからな。

 像を外に出した途端に像の中から女の神が現れた。

薄緑の肌に若葉な色の瞳。ボブの紅葉色の髪に今は白い帽子を冠っている女の神だ。若葉の様な色合いの目がこちらを睨みつけるように向いている。


『無礼者!妾にこのような仕打ち、赦されると思うな!』
「許してもらう事はしてないさ。」
『何を抜かす!』
「先に人のに攻撃してきたのはそちらだろ?」


 弟との言葉に意味がわからぬというように暴れる神にカトレアからの書状を見せつけた。


「俺と居たのはカトレアから直接頼まれた『魔神の愛し子』だ。あまりにも可愛くて美人だからと男と女を間違えるな。」
『お、男子おのこじゃと!?』
「そうだ。」
『そうは見えんかったぞ。』
「議論はそちらなんですね。分かりますけど。」


 アキンドの呆れた声が聞こえた。
 確かに本来なら『愛し子』に反応すると思うがあの顔立ちで男だと言う方が反応するものだろう。

 まあ、無礼者は向こうの方だどいうのは分かっただろう。


 ゴホンと咳き込み、像を投げやる様に放おると山の神が具現化して像を受け取り済まなそうに俺の眼の前に正座した。


『大神様を呼び捨てになさるとは貴方様も『魔神の愛し子』と見受けます。とんだ御無礼をお許しください。』
「取り敢えず、吹雪を収めろ。」
『それは出来ません。』
「何だと?」


 山の神は本当に申し訳ないとばかりに頭を下げる。

 この吹雪は山の神の意図に関係なく吹き荒れるのだという。むしろこの吹雪は山で生きる者に対しても害でしかなく食べ物も少なくなり寒さも重なり苦しんでいるのだとか。

 それにカトレアが言っていたという異質のものが関係しているかもしれない。

 取り敢えずできる限り抑えると言う山の神を信じるということでシンリの到着を待つしかなさそうだ。



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