239 / 245
霊峰と深緑の山
戻りましては主人公
しおりを挟む「何か吹雪が弱くなってきたみたいだ。」
服を乾かして軽い食事を終えた頃、外の景色が少し変わってきた。先が見えない程の吹雪から多少の荒れぐらいまで低減していた。
きっと兄上が神様の所に着いたのだろう。そんな確信があった。
「僕は行くけど君はどうする?」
僕達についてきたとしてもカズキが探している人物に会えるとは限らない。それならこの山の状態が落ち着いてから行動したほうが良いと話していたのだ。ついてこられて僕達の正体を知られるのも避けたいという思いもある。
カズキは少し考えた後に首を横に振った。
「オレはここに残る事にするよ。落ち着いたら帰って下で待つさ。もしかしたら入れ違いになってるかもだし連絡を取ってみるよ。」
「そのほうがいい。」
「あ、最後に聞いても良いかい?」
「何だ?」
「君に女の兄妹はいるか?」
最初から連絡を取ってくれたら良いのにと思ったが口には出さない。あの吹雪で通じるなんて考えられなかったのだろう。
それよりもその後に続いた言葉に身支度をしていた僕の手がピクリと反応してしまった。
一瞬だけカズキの眼鏡の奥に隠された瞳が見透かしているように見える。
「いるよ。僕にそっくりというか、僕と同じく母様にそっくりな娘が。」
「ふーん。今度再会できたら紹介してよ。君とそっくりなら期待出来そうだ。」
「嫌だね。大切な奴を紹介するかよ。」
反応してしまったし、隠すより居るようなフリをしたほうがシシリーが存在感を増すだろう。どういった事でシシリーがバレるかも知れない。なら、何処でも居るように振る舞うのは得策だ。
「えー。凄く好みの顔なのに。」
「僕はもう行くよ。」
「あ、待ってよ。」
まだ何かあるのかと彼を見やると小さな布袋を投げてきた。
それは掌で包めるぐらいの小さな袋で中には何か硬いものが入っている様だった。中を見ようとしたら静止がかかる。
「今回の君の任務の後に開けてよ。」
「怪しいものじゃないんだな。」
「それは天と地に誓って保証するよ。」
「分かった。」
天と地に誓ってと聞き慣れない言葉を使って保証された小袋を無造作に空間にしまい、僕だけが岩の亀裂から身体を出した。
視界はある程度良好なのでこれなら目的の場所にも簡単に行けるだろう。もしも、見慣れぬ人がいればカズキが待っていることを伝えれば良いし、早速兄上の元に向かうことにした。
そんな僕の背中を見つめるカズキの目が怪しく光っていることも知らずに。
僕が兄上と合流出来たのはそれから数時間後だった。
人が数人入れるぐらいの祠の入口で手を組んで待っている見慣れているのに輝いているように見える黒髪の超絶イケメン。
灰靑色の瞳がこちらに気づくと普段では見ることの出来ないホッとした表情を浮かべている。心配をかけてしまったようだ。
急いで側に行くと辺りをキョロキョロしていた。
「あの男は?」
「置いてきました。探し人がいるのは本当みたいでしたが下で待つと。」
「最初からそうしていればよかったのに。」
「ですよね。」
忌々しそうに言っている言葉は完全同意です。
祠の奥からアキさんの姿も見えて、向こうも僕の姿にホッとしていた。そのお隣で半透明の紅葉のような真っ赤な髪の女性がここの山の神様だろうか。
手に自らと同じ姿の像を拝むように持ってじっとしている。
「ここの吹雪や雪はあの女のせいじゃないとの事だ。」
「そうなの?」
「もしかしたらカトレアの気付いた異質の存在のせいかもな。」
「ああ。」
「おい。説明をしてやれ。」
『はい。』
彼女が拝むのを止めると外はまたとてつもない吹雪に逆戻りしていた。
祠の中にて話を聞こうとしたら小さな動物達が出て行こうとしていたので止めた。寒さを凌ぐための場所に後から来たのは僕達なのだから出て行かなくて良いと教えると、何故か山の神様の方が泣いてしまった。
『‥…済まない。妾はこのような者を排除しようとしてしまったのじゃな。』
「無事だから大丈夫だよ。」
『何と優しい愛し子なのか。』
「コウにぃ、虐めたな。」
僕が居ない間に何があったのかは想像できないがコウにぃもアキさんも僕が絡むと大人気ないところがあるからな。
よすよすと慰めながら山の神様の話を聴く事となった。
『事の始まりは冬の頃じゃった。』
山の神様の前に現れた見慣れぬ服装の男。
食事を求めて来たという。
この山は冬になると雪に覆われるの毎年のことで食糧になり得る木の実も限られていた。とても出ないが男に分ける量は無かった。
なので男を追い返したのだと。
『妾は昔から偉そうな言い方だと言われて来たがあの時男の目にはどんな風に写ったかしらぬ。だが、妾はこの山の者を守らねばならぬ。男が去った後から雪の匂いが濃くなり制御しきれぬ程の吹雪になり始めたのじゃ。』
「その男が原因で間違い無さそうだね。」
『男はツクバネに向かっていったのを動物達が見ておる。』
「情報ありがとう。」
次に向うのはツクバネか。確かカトレア様も一年中豊かな不思議な山だと言っていたな。
この山にかけられている呪いを解くのは本人のほうが簡単だ。だけどこの山の生きている者たちにはもう限界の者もいる。
呪い返しを施してから次に向かった方が良いだろう。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる