僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

文字の大きさ
245 / 245
霊峰と深緑の山

淡い恋の物語(ケッ)

しおりを挟む




 異界の神もどきの条件とは。


ちょいちょい


 大声で条件があると言ったのにいざ皆が注目するとオウメイは木陰に隠れて手招きをしている。その視線が向いているのは僕とアキさんの方である。 アキさんと二人で顔を見合わせて自分の顔を指差すと頷かれた。

  試しにアキさんも自らの顔を指差すがそこは違うみたいで首を左右に振っている。
 ならばと兄上もニヤリと指させば物凄い勢いで首を振る。
 再度僕の顔を指させばうんうんと頷いているのでご所望はどうやら僕のようだ。

 このままでは埒が明かないし呼ばれるがままに側に行けば背後からのとてつもない殺気を感じた。
 僕に対してではないのはわかるけどとてもいい気分ではない。


『も、もっと奥に‥…。』
「そのほうがやばい気がするから見えるところでやろう。」
『わかった。』


 殺気にビビって奥に行こうとする少年を止めて見える位置で話すことを提案する。
 案の定殺気がました気がした。いや、気の所為では無いな。
 それにオウメイも気がついたのだろう。ビクンと身体を震わせてせめてもの抵抗で兄上たちに背を向けて話し始める。


『ワイの恋が成就するのを手伝ってくれへんか?』
「こ、恋?」
『そう、ワイの甘酸っぱい恋の応援を、してくれたら呪を解く。』
「何で僕に言うのさ。兄上やアキさんの方が経験豊富だよ。」
『駄目だ。あいつらじゃ惚れられておしまいじゃ。』


 それは否定しない。


「相手は誰なのさ。」
『そんなのつ、ツクバネに決まっとる。』
「なおさら、仲の良いらしいフジネの呪を解いたほうがいいと思うけど。」
『そうか!』


 異界の神もどきがこちらの神に惚れるとは。
 確かに大声で話す内容では無いだろうし、最上級の顔を持つ兄上じゃ取る気は無くても勝手に向こうが惚れるだろうしな。アキさんは経験ありそうだけど奥手ぽいか。
 そんなことを言う僕だって前世の記憶があるとは言え、色恋毎には遠縁なものでアドバイスも出来ないと思うけどな。


『少しでもいい。ツクバネの想いを聞いてくれんか?』
「まあ、それくらいなら良いかな。」
『本当か!』
「でも、どこに惹かれたのさ。」


 色気ムンムンのお姉様とは真逆の大人しめの清楚とした女性だ。少しおどおどしている様にも見え自分から何かを起こすような娘ではないと感じた。そんな彼女のどこが惹かれたのか気になったのだ。


『腹ペコのワイにご飯を分け与えた心根もそうだし、この親にも気味がられた目を褒めてくれたんだ。』


そう言って長い前髪を押さえつけているその隙間から珍しい虹色の目が見えた。
 色んな色があるこの世界でもこんなに不思議な瞳は見たことが無い。もしも前世の世界なら場所によっては畏怖の物となっていたかもしれない。


『神の修行をつけてくれた師匠も気持ち悪いって言っていたのに彼女、ツクバネだけは綺麗です。山の紅葉みたいって微笑んでくれたんだ。』


 そんな女に惚れないわけ無いだろ。


へへと照れたように笑うオウメイに何かイラッと来るがここは我慢だ。
 ツクバネに取り敢えずは話しを聞いてみよう。


 僕はオウメイから離れてツクバネの所に向かう。
 ツクバネは何も分かっていない様子で僕に連れられるまま皆から少し離れた場所に来てくれた。一応オウメイのプライドもあるから皆に聞こえないようにね。



『どうかしましたか?』
「うん、ちょっとね。そういえばツクバネ様って好きな人います?」
『え、好きな人?』
「うん。気になる人でも良いよ。」
『そ、そうですね。』


もじもじチラリと視線を向ける先は腕を組んでこちらをガン見して観察しているコウにぃのお姿。


『初めてお会いしましたが、あの凛々しいお姿に神にも恐れぬ態度。とてもドキドキしてしまいました。』


 こっちが見ているのに気がついて僕に対してにこりと微笑むと兄上にポポポと頬を染めるツクバネ。その姿をみてオウメイがツクバネと兄上を見比べてギリッという顔つきで睨んでいる。ツクバネの気持が分かったらしい。

 兄上は男の僕から見ても非の打ち所の無い人だからそうなるとは思っていたけど。流石はチート大魔王。存在自体は彼らよりも上なんだけどね。


『それをお聞きに来たのですか?』
「いや、それはついで。警告とか色々としたかったんだ。」
『警告ですか?』
「この山はツクバネの統治下だからその性質に合って素晴らしい。」


 豊かだけでは成しえない山の柔らかな雰囲気はツクバネの性質がなすものだろう。だけど今この山にはそれをいい事に悪巧みを図る者達が居ることも間違い無い。その一端を担っているのがこの山の入り口を守る宮司の一人なのも我々は知っているから嘆かわしい。


「だから、少し人とは一線を引いた方が良い。」


 僕がそう忠告をすると、落ち込んだように表情を暗くする彼女。
 彼女の中では人と動物、魔獣たちが共に仲良く歩む姿が理想なのだろう。だけど本来ではありえない姿は平衡が崩れている証拠だ。
 いい事ではあるからもどかしい。
 彼女はしばし考えて深く頷いた。


『そうですね。守るべきはこの山の者達。誘拐されて親と離れ離れになるのは許せないですね。』


 規律を守らぬ者には制裁を。手伝ってほしい。

 そう力強く話す彼女に僕は頷き返した。、




 
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

ライ
2018.08.29 ライ

更新まだですか?めっちゃ楽しみにしてます!ヾ(≧∀≦*)ノワクワク……

解除
みかん箱
2018.04.02 みかん箱

おかえりなさいませー!
シンリ君の切り札含めて楽しみです。

解除

あなたにおすすめの小説

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する

ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。 皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。 ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。 なんとか成敗してみたい。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!

ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。 え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!! それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。