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霊峰と深緑の山
淡い恋の物語(ケッ)
しおりを挟む異界の神もどきの条件とは。
ちょいちょい
大声で条件があると言ったのにいざ皆が注目するとオウメイは木陰に隠れて手招きをしている。その視線が向いているのは僕とアキさんの方である。 アキさんと二人で顔を見合わせて自分の顔を指差すと頷かれた。
試しにアキさんも自らの顔を指差すがそこは違うみたいで首を左右に振っている。
ならばと兄上もニヤリと指させば物凄い勢いで首を振る。
再度僕の顔を指させばうんうんと頷いているのでご所望はどうやら僕のようだ。
このままでは埒が明かないし呼ばれるがままに側に行けば背後からのとてつもない殺気を感じた。
僕に対してではないのはわかるけどとてもいい気分ではない。
『も、もっと奥に‥…。』
「そのほうがやばい気がするから見えるところでやろう。」
『わかった。』
殺気にビビって奥に行こうとする少年を止めて見える位置で話すことを提案する。
案の定殺気がました気がした。いや、気の所為では無いな。
それにオウメイも気がついたのだろう。ビクンと身体を震わせてせめてもの抵抗で兄上たちに背を向けて話し始める。
『ワイの恋が成就するのを手伝ってくれへんか?』
「こ、恋?」
『そう、ワイの甘酸っぱい恋の応援を、してくれたら呪を解く。』
「何で僕に言うのさ。兄上やアキさんの方が経験豊富だよ。」
『駄目だ。あいつらじゃ惚れられておしまいじゃ。』
それは否定しない。
「相手は誰なのさ。」
『そんなのつ、ツクバネに決まっとる。』
「なおさら、仲の良いらしいフジネの呪を解いたほうがいいと思うけど。」
『そうか!』
異界の神もどきがこちらの神に惚れるとは。
確かに大声で話す内容では無いだろうし、最上級の顔を持つ兄上じゃ取る気は無くても勝手に向こうが惚れるだろうしな。アキさんは経験ありそうだけど奥手ぽいか。
そんなことを言う僕だって前世の記憶があるとは言え、色恋毎には遠縁なものでアドバイスも出来ないと思うけどな。
『少しでもいい。ツクバネの想いを聞いてくれんか?』
「まあ、それくらいなら良いかな。」
『本当か!』
「でも、どこに惹かれたのさ。」
色気ムンムンのお姉様とは真逆の大人しめの清楚とした女性だ。少しおどおどしている様にも見え自分から何かを起こすような娘ではないと感じた。そんな彼女のどこが惹かれたのか気になったのだ。
『腹ペコのワイにご飯を分け与えた心根もそうだし、この親にも気味がられた目を褒めてくれたんだ。』
そう言って長い前髪を押さえつけているその隙間から珍しい虹色の目が見えた。
色んな色があるこの世界でもこんなに不思議な瞳は見たことが無い。もしも前世の世界なら場所によっては畏怖の物となっていたかもしれない。
『神の修行をつけてくれた師匠も気持ち悪いって言っていたのに彼女、ツクバネだけは綺麗です。山の紅葉みたいって微笑んでくれたんだ。』
そんな女に惚れないわけ無いだろ。
へへと照れたように笑うオウメイに何かイラッと来るがここは我慢だ。
ツクバネに取り敢えずは話しを聞いてみよう。
僕はオウメイから離れてツクバネの所に向かう。
ツクバネは何も分かっていない様子で僕に連れられるまま皆から少し離れた場所に来てくれた。一応オウメイのプライドもあるから皆に聞こえないようにね。
『どうかしましたか?』
「うん、ちょっとね。そういえばツクバネ様って好きな人います?」
『え、好きな人?』
「うん。気になる人でも良いよ。」
『そ、そうですね。』
もじもじチラリと視線を向ける先は腕を組んでこちらをガン見して観察しているコウにぃのお姿。
『初めてお会いしましたが、あの凛々しいお姿に神にも恐れぬ態度。とてもドキドキしてしまいました。』
こっちが見ているのに気がついて僕に対してにこりと微笑むと兄上にポポポと頬を染めるツクバネ。その姿をみてオウメイがツクバネと兄上を見比べてギリッという顔つきで睨んでいる。ツクバネの気持が分かったらしい。
兄上は男の僕から見ても非の打ち所の無い人だからそうなるとは思っていたけど。流石はチート大魔王。存在自体は彼らよりも上なんだけどね。
『それをお聞きに来たのですか?』
「いや、それはついで。警告とか色々としたかったんだ。」
『警告ですか?』
「この山はツクバネの統治下だからその性質に合って素晴らしい。」
豊かだけでは成しえない山の柔らかな雰囲気はツクバネの性質がなすものだろう。だけど今この山にはそれをいい事に悪巧みを図る者達が居ることも間違い無い。その一端を担っているのがこの山の入り口を守る宮司の一人なのも我々は知っているから嘆かわしい。
「だから、少し人とは一線を引いた方が良い。」
僕がそう忠告をすると、落ち込んだように表情を暗くする彼女。
彼女の中では人と動物、魔獣たちが共に仲良く歩む姿が理想なのだろう。だけど本来ではありえない姿は平衡が崩れている証拠だ。
いい事ではあるからもどかしい。
彼女はしばし考えて深く頷いた。
『そうですね。守るべきはこの山の者達。誘拐されて親と離れ離れになるのは許せないですね。』
規律を守らぬ者には制裁を。手伝ってほしい。
そう力強く話す彼女に僕は頷き返した。、
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