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はじまりと記憶
僕の初めての山賊退治
しおりを挟む日を遮る様に生える木々により、その場所は薄暗く身を隠すには絶好な場所であった。
その男は数人の仲間と共にそこに隠れていた。
頭に浮かぶのは道が続く隣町にいる仲間が知らせた吉報。
『身なりの良い子供が護衛二人を付けてそちらに向かった。』
護衛二人は厄介だが、子供だけで出歩かせるバカ親だ、大したことないだろうそう思い馬車が来るのを待つ。
遠くの方で馬の嘶きが聞こえて、馬車の車両の音もわかるようになってきた。いよいよだ。
子供を捉えたら親にたんまり金を出させよう。
面が良ければ味見をした後に売っても良い。
これから起こる楽しみに舌嘗めずりをしながら、はやる部下を落ち着かせるが、自分の興奮も高まってきた。
そういえばと、先程襲った親子の母親が可愛らしい顔していたのを思いだし、後で相手してもらうことを決めた。
「それは良い情報だ。」
「?!」
声が聞こえた気がして辺りを見回すも、そこには仲間とよく繁った木々しか見られなかった。
背筋にうすら寒さを感じながらも道に視線を戻す。
道には、未だに馬車の姿はなかったが1人の子供の姿があった。
まあ、それが僕だけどね。
山賊達は僕の登場にヒソヒソと話をしている。どうせ、なぜこんなところに子供がとか、馬車はどうしたとか言っているんだろうね。
馬車はあまり遠くないところで待機している。
ハラハラドキドキのバルスさんと護衛二人はいつでも飛び出せるように獲物に手を掛けて、コウにぃは心配ご無用とばかりに馬車の中で居眠りしていたりする。
僕は木々とかに興味がある様に辺りをキョロキョロしながら山賊に近づく。
どうやら、山賊達は僕が馬車から気づかぬ内にはぐれた子供だと思い込んだみたいだ。
すぐそばの植え込みまで音もなく移動すると僕の腕を掴んだ。普通なら悲鳴をあげるからか直ぐ様口許を押さえられ抱き込まれるように捕らえられる。
普段お風呂なんか入ってないのか少しだけ鼻に酸いた匂いが漂い、顔を歪める。
それを恐怖によっての現象だと誤解した山賊1はこのグループのリーダー格である山賊0のもとに僕を連れてきた。
「見てくだせぇ、この上玉。」
「良くやった。オレの次に味見させてやるよ。」
「げへ、楽しみだぁ。」
おいおい、五歳児をそんな目で見んじゃねぇよ。
ふいっと指先を軽く動かす。うん、調子が良いぞ。
次に山賊達は僕を人質に馬車を襲う作戦に移った。どうやら、僕達が来た方面の町にはこの山賊のお仲間がいるようだ。そして、もう1人子供が居ることを知らされているらしい。
山賊0は予め用意していたロープで僕の手を後ろ手に縛り、口には先程山賊が口走っていた親子の物と思われる綺麗なハンカチで猿轡された。首を捕まれその痛みに眉を寄せる。
これ、痕でも残ってたらまずい。あとで、バルスさんにヒールでもしてもらおう。
首を掴んだまま、山賊達(数えたら5人いた。)は馬車の前に仁王立ちになり大声で叫んだ。
「この娘に危害を加えられたくなかったら言うことを聞け!」
……娘っておいっ!
絶対、兄上は笑ってるな。
他の人たちは人のこと言えないから微妙な顔でもしてるだろう。
反応のない馬車に舌打ちをする山賊0。
どこからか取り出したのかナイフを頬に突きつける。首を掴まれた状態なので顔を背けることも出来ない。
馬車組からは見える僕の表情はだぶん場違いな笑みで彩られているだろう。
ナイフが猿轡を切り、そのままシャツのボタンを切り裂く。肌に直接風が辺り少しだけ身体が震える。肩にシャツが掛かる状態になると山賊0は下卑た笑みを浮かべてナイフで胸をなぜる。
「ほら、お前も助けを叫べよ。」
「ん~?やだ。」
此所で僕が怖がってないことが分かった山賊達は、騒ぎだした。
何か仕出かす前に指を踊らせる。
すると、山賊達の身体には細い何かがまとわりつき動きを阻害する。それはもちろん山賊0も例外ではなく、僕に突き付けていたナイフを持つ腕は離れ、首を掴む手は手首で切断させてもらった。
血に汚れるのが嫌だったので、もちろん切断面は止血済。
よいしょと山賊の方に向き直ったら、そこには化け物を見るような表情のおじさまばかり。
「シン、終わったか?」
「うん。」
「本当に1人でやっちゃいましたね。」
「あっ、バルスさ~ん。」
馬車からぞろぞろと出てくる四人に駆け寄ると、バルスさんに抱きつく。そして、もう捕まれていない首筋を見せる。
「痕が残ってたら回復魔法を掛けて欲しいです。」
「ああ、内出血してますね。痛みます?」
「……。」
「いま、魔法を掛けますね。」
「……。」
「お願いします。」
「……。」
なんか、コウにぃが無表情な顔でこちらを見てくるんだけど。えっ、凄く魔王オーラ全開ですけど?
バルスさんも気づいた。
治療の動きが止まり、コウにぃの顔を見たとたんに悲鳴を上げて離れていった。
コウにぃは僕の首筋に指を這わせて、傷の具合を見ると転がされている山賊の元に歩き出した。
「コウにぃ、そいつら生かしといてね。被害居るから。」
「……わかった。」
死んだほうがましだという目に合わせてやるよ。
魔王陛下降臨。
とても怒っているのが分かる。
一応の歯止めとしてシヤさんがついていてくれるみたいなので、僕は治療とお着替え。
ナイフで切られちゃったからね。
護衛2号さんのおすすめのチャイナ風のシャツに変える。
ちなみに護衛2号さんはアキンドと言うらしい。アキさんって呼ぶことにした。
アキさんが鼻を押さえながら絶賛していると、晴れ晴れとしたコウにぃが帰って来た。
その背後には、青い顔をした山賊達と苦笑いのシヤさんの姿が。何をしたんだろうか。
「似合ってる。」
「ありがとう。で、どうなったの?」
「少しだけお仕置きしただけだ。」
「僕達の前に襲われた人達は?」
「まだ、聞いてないな。」
すっかり忘れていたと、山賊達に再度近づいて行くのに僕も着いていく。
シヤさんが山賊の持ち物のロープで彼らを縛り上げていた。
「お姫様、このリーダー格の奴を解放してくれます?」
「あっ、はい。」
指先を軽く動かせばプツンという音を立てて山賊0の身体が地面に臥せる。切断された手首を胸に抱えて苦しそうに蠢いている。
彼らを縛り上げていたのはコウにぃにもらった僕の暗器の一つ『蜘蛛』。
良く見ないとわからないほどの細い特殊糸を操るのだが、前世では1キロぐらい先の獲物も殺れたが、今は100も行かない。身体が小さくなり体力、集中力がきれやすくなったのが原因だろう。
あっ、そうそう、僕は人を殺すことに躊躇はしない。
自分の大切なものを守るなら何でもするとでも言っておこう。だから、山賊の手首を切断しても顔色一つ変えてはいないよ。
これでも、兄上を守る暗殺者だったんだから。
さて、コウにぃは山賊0を蹴って仰向かせてその瞳を見つめた。そのまま、静かな声色で語り掛けて行く。
「喋らなくて良い。仲間は何人だ。5人、6人、7人……7人だな。」
「寝蔵は何処だ。近い、遠い。東、西、北、南……。シヤ、南東500先だ。」
「了解。」
これは前世から持つ兄上のお得意技。
人の瞳の動きで真実が分かるのだとか。なにそれチート。
僕もできなくはないけど、読唇術の方が得意。お陰で山賊の呟きもとらえたしね。
この後、来た町を戻って町に居て町から出る人を知らせてた山賊の仲間も捕まえて、僕達の前に襲われた親子の商人さんを助けて、無事に解決しました。
親子の商人さんには感謝の印にポーションをいただきました。
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