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はじまりと記憶
僕は人形の国の真の姿を知る①
しおりを挟む人のように暖かみのあるシシリーさんの腕を傷つけないように布にくるみ、荷物に纏めると未だにぎゃんぎゃん騒ぐ宿屋の親父さんの前に立つ。
「お前たち、料理を食べなかったのか?」
「浄化魔法を掛けて頂きました。毒などは消えています。」
「お前、魔法を使えるのか!?」
親父さんの驚愕の顔に、やっぱりかとお互いに顔を見合せた。
これにはアキさんの具合が悪い理由が重なる。
アキさんのステータスでの分類は魔法剣士。そのなかでもその眼に精霊眼と呼ばれる特殊な能力を持つ精霊に愛されし魔法剣士なのだ。
アキさんの目にはこの国が凄い有り様に見えるのだとか。
魔法を使えるバルスさんや僕は気味悪い雰囲気は分かるのだが、その真実の姿は見えない。
例えば、ちょっと前に会った店のおばちゃん。
僕には普通の動くおばちゃんの人形にみえたのだが、アキさんには髪が抜け落ち、火に曝されたのか薄黒く歪んだ肌に片目は虚空を作り出していたのだと。
なにそれホラーでしかないじゃん。
国に広がる町も花一つ咲いてない荒れ果てた場所に見えると言っていた。
その見た目の違いに気付いたのは、あの国が見下ろせる場所での事だった。
『噂より綺麗な場所ですね。』
『何を言っているシヤ、あんなおどろおどろしい場所が綺麗だと?』
『え、だって花も舞っていて綺麗だろ?』
『お前の目は大丈夫か?あんな廃国に花など咲くわけがないだろ?』
『『え?』』
まあ、簡略するとこんな会話がシヤさんとアキさんでなされて、兄上のチートな瞳でも実はこの場所がオカルトチックな場所なのは分かるらしく、とりあえずシヤさんの感覚で入ってみようということになったのだ。
国がおどろおどろしい所に好んで来るわけないし、迷い込むのはシヤさんの様な人だろうし。と魔法使える事を秘密にして侵入してみた。
まさか、人形に話しかけられたり撫でられたりするとは思わなかったけど噂通りの自動人形なのはわかった。
それが人間から作られたのかはわからないけど、アキさんの顔色からはそういうのもいるのだと想像できる。
アキさんと同じ光景を見ているはずの兄上の不変さは、さすがとしか言えないが、その異常さに気づいたであろうこの旅のメンバーにはあとで、釘でもさしておこうかな。
まあ、そんな感じで今まできたのだが、さすがに夕飯はアキさんと兄上は食べたく無さそうだったので、食べたふりをしていた。
僕達は魔法を掛けて食べようとしたら、僕だけは止められ、同じく食べたふりをすることにする。いったい何を見たのだろうか。
「さて、親父さんこの国はいったいなんなのか教えていただけます?」
「はっ、誰が教えるかよ。拷問しても無駄だぜ。」
「人形を拷問して何が楽しいものか。」
「コウにぃ、この動いてる理由が分かるかもよ。細切れにしようよ。」
「そうだな。じゃあ、首は最後にしよう。」
なんて物騒な話を兄上は実行しつつ次なる行動を相談する。
きっと、次の人形達も来るだろうしなんか事情がよく知っていそうなシシリーさんも探さなきゃだし。
そうだ、宿に着いたときのアキさんの態度も気になるな。
「アキさん、何で僕とシシリーさんを見比べてたの?」
「ん?あ、あぁ。シシリーと言う名の人形がシンリ様にそっくりで。」
「えっ?」
「だぶんだけど、この国には幻術に近い何かが使われているのだと思う。だから、術の全く使えないシヤにはこの国が綺麗に見えるのだと。」
それはあの場所での話し合いにも出た事だけど、見下ろした国の姿が3意見に分かれていた。一つはシヤさんの美しい人々の活気ある国。2つ目はアキさんや兄上のおどろおどろしいホラーの様な国、そして僕達ぼろぼろな町並みに人形達が動いている様に見える3つだ。
術の耐性に関係があると考えると、アキさんが言うとおりシシリーさんは僕に似ているのだろう。ということはことさらにあの人形を追う必要がある。
彼女こそが僕達の探し求めている物の情報を持っている可能性が高いからね。
「よくまぁ、こんなBGMのなか話せますね。」
「まあ、僕には人形を切り刻んでるようにしか聞こえないからね。」
「シンリ様の言うとおりだ。ごみ処理中だ。」
「私には普通に人間がきりきざまれてるようにしか見えなくて胸糞悪いのですよ。」
それは確かに胸糞悪いですよね。
兄上は、そんな話を聞き流しつつとうとう胸部辺りまで開き始めた。胸部を開くと僕にはビニール人形特有の空洞とが見える。その空洞をしばらく覗いていると光る何かが目に付いた。そのまま手で触れようとするのを、兄上とアキさんに制され、動きを止める。
アキさんがぶつぶつと何かを呟きながら剣を抜く。剣には文字が浮かび蠢いている、その剣を使い光る何かを剣先で突く。
突かれた光は霧散して、それと共に親父さんの絶叫が響き渡った。親父さんが動かなくなるのと同時に半透明な石が足元に転がり落ちる。
その頃には、親父さんの身体は無惨な本来の姿を取り戻していた。
穴がそこらじゅうに開き、表情など全くと言って良いほど擦りきれ分からなくなっている。無惨に下半身が細切れになったゴム人形。それが、本来の姿である。
どうやら、シヤさんもその姿が認識できるようになったみたいで顔色が悪くなる。
うん、この親父さんの作ってた料理を食べてたもんね。
僕は光の元だった石を拾う。
今度は誰もその行動を止めなかった。
半透明な石は中に無数の文字や図形が刻まれていた。それを見れば、術の系列や内容を把握する事ができる。
観察していて分かったがこれは幻術の媒体なのだ。
恐らく人形一つ一つが媒体でこの国が美しく見えるのはこの媒体のお陰だ。それと同時に人形に意思を持たせて動かす媒体でも有るようだ。
「初めて見る術式ですね。」
「うーん、鏡幻術やゴーレムの秘術に似てる。」
「ゴーレムの秘術は知っていますが、鏡幻術ですか?」
「うん、ミラーダスト、鏡の粉を使う技だよ。」
「吸い込んだら危険そう。」
「本物ならそうだよね。これは大丈夫みたい。」
確かに鏡が媒体であるけど国全体を包んでいるわけでなく、人形自体に使われているみたいだ。人形に触るとさらさらと煌めく粉がついてくるから間違いない。
この術式を考え付くなんて余程の頭の良いやつか、それなりの経験を積んでいるかだ。この石から判断できるのはそれぐらいか。
ふむ、さてはて次はどうするかな。
下の方でがやがやしてきたし、シシリーの行方も探さないとだけど、このままじゃお尋ね者だよね。
「おい、シン。プランが無いならここの王に会いにいかないか?」
「王様に?別に良いけど。」
「シシリーて何か関係ありそうだからな。」
「でしたら……。」
今まで静かだったバルスさんが口を挟んできた。
えっ、バルスさんそれ本気ですか?
次回は12月上旬。
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