この記憶、復讐に使います。

SHIN

文字の大きさ
20 / 31

対する人

しおりを挟む


 クェイル王女が逃げ出したのを知ったのは、テンペスト国の用意した部屋に着いてからだ。
 リドリーさんに化粧を落としてもらい、肌を整えてもらった後に、お風呂に入り終えて水分補給がてら果実水を飲みながらのんびりしていた時だった。

 リドリーさんやイェシル殿下にフィシゴといつものメンバーが集まり、談笑をいているといきなり扉が開き、そこにはパーティーの時とは異なる衣装に身を包んだクェイル女王と従者その1とその2、それから宰相の息子である男が入ってきた。


「なんだ、内通者がいるとは思っていたが、いまいちだな。」
「もっと大物がつれるかと思ったのにね。」
「そもそも、逃げないでなんでこんな所に来やがった。」



 イェシル殿下の心底くだらないといった表情とため息に、宰相の息子はとくに怒ることもなく、シルバーフレームのメガネを整えて、やれやれと肩を竦めた。
 どことなく自信を持つ男はイェシル殿下の視線にも動じることのない。


「我が姫君がそこの女に文句が言いたいらしくてな。」
「…警備はどうした?」
「さあな。」


 その時、地下の小火のせいでパーティーの客を近場から避難させていたそうです。
 我々が居るのは離れの様な場所、小火も巻き込まれる恐れがもっともない所で、人手の足りない場所にそこの警備の者も向かってしまったらしいです。王族がいるのにそれは危機感がないですよね。

 まあ、そこら辺の指示を出したのも目の前の宰相の息子だったりもします。

 役者が揃ったようなので紹介をするのであれば、姫は言わずなが、その取り巻きの従者その1は現副騎士団長の妾の子。妾は有名な踊り子だそうで顔達は深い彫りのイケメン。
 名はシーシャ。家名は名乗らせて貰えないがその腕は間違いない。

もう一人の従者その2は平民と言われていたが本当は元大臣の子。母共々すこしだけ暴力的な男から逃げ出した。しかし、魔力測定の場で大臣の一族が持つ特殊な魔法を持つことが分かってしまったため、自分だけ大臣のところに戻り、その後、騎士団に入隊した。
 名はタナ。

最後の宰相の息子は名をユダという。
 頭も良く、短期間だけ騎士団にも入り剣を振るっていたこともある。
 母親は幼い頃に亡くなり、すぐに継母が出来たが折り合いが悪かったために、宿舎のある騎士団に逃げ出したらしい。しかし、一年も経たずにその頭の良さゆえ裁判の長が引き抜いて徹底的にしごいていたと聞いていた。


 私はシーシャとタナには直接暴力的なことをされたが、ユダだけはあった事どころか姿を見たことはなかった。
 今回、テンペスト国に帰ることとなって、もしかしたらクェイル王女に城に入るための手助けをする人物がいるのではないかと、話しに出たのだ。
 
 おそらく、ボロボロの姿で来るだろう三人をあのパーティー会場まで通さないといけない。

 その様な事を出来るのは結構な大物かなと話していたのだけど、たしかに裁判の部署にいるなら警備の内容も聞きやすい。何かの参考にするといえば快く話して貰えただろう。
 ただ、その印象が後々に残っていないのが不思議ではある。
 


「姫様、さっさと文句を言って、退散しましょう。」
「そうね。が無くなるのは残念だけどね。まさか、貴女が生きて帰るとは思わなかったわ。でも、今後その獣臭い国で過ごすなんてざまぁみろだわ。」


  ふふんと上から目線で言えて満足したのか、視線でユダに合図を出す。ユダは心得たとばかりに手をこちらに差し出す。
 突然、魔力の膨らみを感じた。魔法を使う気の様だ。


「『凍える記憶記憶よ封じよ』」
「『解体全てを見る』」


 ユダと私の相反する魔法が辺りを包んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

気がついたら自分は悪役令嬢だったのにヒロインざまぁしちゃいました

みゅー
恋愛
『転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈ります』のスピンオフです。 前世から好きだった乙女ゲームに転生したガーネットは、最推しの脇役キャラに猛アタックしていた。が、実はその最推しが隠しキャラだとヒロインから言われ、しかも自分が最推しに嫌われていて、いつの間にか悪役令嬢の立場にあることに気づく……そんなお話です。 同シリーズで『悪役令嬢はざまぁされるその役を放棄したい』もあります。

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

【完結】悪役令嬢は何故か婚約破棄されない

miniko
恋愛
平凡な女子高生が乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった。 断罪されて平民に落ちても困らない様に、しっかり手に職つけたり、自立の準備を進める。 家族の為を思うと、出来れば円満に婚約解消をしたいと考え、王子に度々提案するが、王子の反応は思っていたのと違って・・・。 いつの間にやら、王子と悪役令嬢の仲は深まっているみたい。 「僕の心は君だけの物だ」 あれ? どうしてこうなった!? ※物語が本格的に動き出すのは、乙女ゲーム開始後です。 ※ご都合主義の展開があるかもです。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしておりません。本編未読の方はご注意下さい。

【短編】男爵令嬢のマネをして「で〜んかっ♡」と侯爵令嬢が婚約者の王子に呼びかけた結果

あまぞらりゅう
恋愛
「で〜んかっ♡」 シャルロッテ侯爵令嬢は婚約者であるエドゥアルト王子をローゼ男爵令嬢に奪われてしまった。 下位貴族に無様に敗北した惨めな彼女が起死回生を賭けて起こした行動は……? ★他サイト様にも投稿しています! ★2022.8.9小説家になろう様にて日間総合1位を頂きました! ありがとうございます!!

好きになったあなたは誰? 25通と25分から始まる恋

たたら
恋愛
大失恋の傷を癒したのは、見知らぬ相手からのメッセージでした……。 主人公の美咲(25歳)は明るく、元気な女性だったが、高校生の頃から付き合っていた恋人・大輔に「おまえはただの金づるだった」と大学の卒業前に手ひどくフラれてしまう。 大輔に大失恋をした日の深夜、0時25分に美咲を励ます1通のメールが届いた。 誰から届いたのかもわからない。 間違いメールかもしれない。 でも美咲はそのメールに励まされ、カフェをオープンするという夢を叶えた。 そんな美咲のカフェには毎朝8時35分〜9時ちょうどの25分間だけ現れる謎の男性客がいた。 美咲は彼を心の中で「25分の君」と呼び、興味を持つようになる。 夢に向かって頑張る美咲の背中を押してくれるメッセージは誰が送ってくれたのか。 「25分の君」は誰なのか。 ようやく前を向き、新しい恋に目を向き始めた時、高校の同窓会が開かれた。 乱暴に復縁を迫る大輔。 そこに、美咲を見守っていた彼が助けに来る。 この話は恋に臆病になった美咲が、愛する人と出会い、幸せになる物語です。 *** 25周年カップを意識して書いた恋愛小説です。 プロローグ+33話 毎日17時に、1話づつ投稿します。 完結済です。 ** 異世界が絡まず、BLでもない小説は、アルファポリスでは初投稿! 初めての現代恋愛小説ですが、内容はすべてフィクションです。 「こんな恋愛をしてみたい」という乙女の夢が詰まってます^^;

【本編完結】真実の愛を見つけた? では、婚約を破棄させていただきます

ハリネズミ
恋愛
「王妃は国の母です。私情に流されず、民を導かねばなりません」 「決して感情を表に出してはいけません。常に冷静で、威厳を保つのです」  シャーロット公爵家の令嬢カトリーヌは、 王太子アイクの婚約者として、幼少期から厳しい王妃教育を受けてきた。 全ては幸せな未来と、民の為―――そう自分に言い聞かせて、縛られた生活にも耐えてきた。  しかし、ある夜、アイクの突然の要求で全てが崩壊する。彼は、平民出身のメイドマーサであるを正妃にしたいと言い放った。王太子の身勝手な要求にカトリーヌは絶句する。  アイクも、マーサも、カトリーヌですらまだ知らない。この婚約の破談が、後に国を揺るがすことも、王太子がこれからどんな悲惨な運命なを辿るのかも―――

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

処理中です...