今も昔も

美夢

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第一話 思わぬ出会い

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「今日からこの病院で研修医として働くことになりました。
    大塩愛結美です。よろしくお願いします。」

私は深く頭を下げた。

「よろしくねー。 
    愛結美ちゃん。」

「よろしくー!」

「これまた、可愛い子が来たねー。」

などの声がする。

愛結美はこれからどんな事をするのかわくわくしていた。
自己紹介が終わり今度は、誰が医師としての仕事を教えるかを研修医のみんなに伝えていた。

「これから、愛結美ちゃんに医師の仕事を教えるのは、中野慎吾くんだ。」

その、名前が呼ばれた時少しドキッとした。
(まさか、慎吾さんじゃないよね。
  同姓同名なだけ)

自分にそう思い知らせた。

「えー。ずりーぞ、慎吾ー!
    こんな可愛い子教えるなんて。」

「はぁ!これは、くじで決まったんだしょうがないだろ!
   しかも、お前嫌がってたじゃねーか。」

「ギクッ!そんな事いったようななかったような…。
    あはは…。」

「ったくお前は~!
    こほんっ。改めまして中野慎吾です。
    これからよろしくお願いします。」

愛結美はこの顔を見て驚いて泣きそうになった。 

慎吾さんだ。ずっとずっと、好きだった。

中学校卒業してから会えなかったのに。

「慎吾…さ…ん。」

「…え!もしかして愛結美?!」

「はいっ!お久しぶりです!」

「どうしたの2人とも~!
    知り合いか?」

「あぁ。中学の時の部活の後輩。」

「お前何部?」

「ブラスバンド部だ。愛結美とはチューバで同じだったし、家も近かったから。」

「へー。そうなんだ!」

「さて、自己紹介も終わったところだし、歓迎会とでもいくかー!」

~居酒屋 ~

「それでは、愛結美ちゃんが来たことを祝ってー!
    かんぱーい!!!」

「『【 かんぱーい!!!】』」

「でも、ビックリしました。
    まさか、慎吾さんがいるなんて!」

「あぁ。俺もびっくりした。
    将来医師になりたいって言ってたのを覚えているが、
    まさか一緒になるとは思いもしなかった。」

「ですよねー!」

「…それと、親父さんどうなった。
    大丈夫だったか。」

「お父さんは女と蒸発して逃げました。
     家はお父さんがめちゃくちゃにして蒸発したので大変でした。
     お母さんはあちこちに打撲のあとがありましたし…。
     今は回復して元気です。」

「愛結美は?」

「はい!私も大丈夫です!
    殴られた後は全部消えましたし。」

家が近いからと言ってこんな仲が良くなるはずはない。

私達が、これ程仲がいいのは私の父親のことがあったからだ。
私の父は私の物心ついた時にはギャンブルに酒、女、暴力。

家ではお酒を飲むか寝るしかなくて、
毎日朝から晩まで、パチンコ店に行って、お母さんが一生懸命はたらいたお金を全部使っていった。
私が小学校3年生の頃から家に帰るとお母さんが暴力を振るわれていたのを思い出す。

父が悪いのに、母はずっと泣いて謝っていた。
それでも、母は私の為に働いてくれて、辛いのに私の前で泣くことは1度もなかった。
中学生になってからは私にまで暴力を振るってきた。
お母さんをかばおうとすれば何度も何度も殴られ身体中にあざが出来ていた。

そして、ある日の夜、父は最低な行為をしてきた。 

「友達と遊んできなさい。」

そう言ってお母さんは新しい服とお小遣いをくれた。

お母さんが頑張って働いて買ってくれたと思うとぼろぼろ涙が出た。

「ありがとう…
    あり…がとう。お…か…あさん」

「いいのよ。気にしないで。」

そう言ってくれたあの日を私は忘れはしなかった。

友達と7時くらいに別れて帰ってきたとき、家は暗かった。

それもそのはず、お母さんは看護師なので夜勤だった。

父はまた、パチンコ店に行ってるんだろう。

ため息をついてから、だれもいない家に

「ただいまー。」

といって家に入った。

するとその時誰かに後ろから襲われた。

「んんーヴウー。」

誰かと思えば父だった。

「はなして!!お父さん!!」

「こんな立派な体に成長しやがって!
    俺が中の具合を確かめてやろう。」

そう言って私の胸やあそこを触ってきた。

「やめて!!お父さん!!」

涙を流しながら訴えた。

自分の力精一杯使ったが大人の体はびくともしない。

さっきまで快晴だったのに今は大雨で雷もなっている。
まるで、自分自身の涙のように。

抵抗していたがどうにも出来なくて、ついにわたしのなかにあれを入れられた。

「痛いっ!!!!!痛いよー!!!」

初めてだったのが父と言う事が嫌で嫌でしようがなかった。

父が体を離した瞬間私は思いっきり父のお腹を蹴って家を裸足ででていった。

(なんで!なんでこんなことになったんだろう!)

大雨の中裸足で無我夢中で走った。

すると、誰かにぶつかった。

顔を見てみると慎吾さんだった。

「どうした、愛結美!
    裸足で!」

慎吾さんの顔、声を聞いた瞬間、私は安心して思いっきり泣いた。

「ううー…。慎吾さん。しんごさぁぁぁん。うわぁぁぁぁん。」

「どうした!とりあえず俺ん家に来い」

そう言われて慎吾さんの家に入り誰にも話したことのなかった家族のことを話した。

ということがあったのだ。




「そうか。それは良かった。」

といって、頭を撫でてくれた。


「あの時みたいに相談しろよ。」

「はい!」

~完~


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