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信じて
2.
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夜になり、やっとヒカルが帰宅した。
ヒカルは広いリビングのソファーに座っていた弦と一真に目もくれずに階段を上がっていってしまった。どうやらそのまま自室に向かったようだ。
弦はヒカルを追いかける。そしてヒカルの部屋のドアをノックした。
——反応はない。
「ヒカル。開けてっ」
弦はもう一度ドアを叩く。
「ヒカルっ。俺と話をしようっ。俺ヒカルに言わなくちゃいけないことがあるのを思い出したんだ。だから、聞いて……」
今さらかもしれない。さよならしたくせにと思われてるかもしれない。ヒカルは月並みな愛の言葉なんて言われすぎて聞き飽きてるかもしれないけれど。
「ヒカル。ありがとう。俺、きっとヒカルにたくさん助けられた」
ドアの向こう側で、ヒカルは聞いてくれているのだろうか。弦の声は届いていないかもしれない。
「ヒカル。好きだよ。それだけ言いたくて……どうせヒカルなら毎日のように誰かに言われてるんだろうけどさ……」
弦がヒカルに好意を寄せても、つまらないヒカル親衛隊がまたひとり増えただけにすぎない。
ヒカルならわざわざ弦を選ばなくてもいくらでもいい人と付き合える。
でも弦も想いを口にしてみて、ヒカルを避けていたけど、ヒカルに出会えてよかったと思えるようになった。……まぁ、目の前の相手はヒカルの部屋のドアだけど。
「聞いてくれてありがとう。ヒカル」
~の部屋のドア。と心の中で情けない言葉が続く。
みんながどうして玉砕必至でヒカルに告白するのかがわかった。膨れ上がった想いを吐き出さないと、心がいっぱいになってしまい、他に何も手につかなくなるからだろう。そして吐き出してみて、胸のモヤモヤが晴れたみたいでとてもスッキリした。
最後にヒカルの部屋のドアに寄りかかってみる。ヒカル本人は尊すぎるから、もはやドアでいい。
ドアの温もりを堪能しようとしていたら、急にドアが内側に開いた。その勢いで、弦はヒカルの部屋にドッと倒れ込む。
「何してんだよ、さっきから」
ヒカルの声だ。弦は急いで体勢を整え、ヒカルを見上げた。
「あんな大事なこと、俺を見て言ってくれよ……」
ヒカルは弦に手を差し伸べてきた。ヒカルの手を頼って弦は立ち上がる。
ヒカルは部屋のドアを閉め、弦に向き直る。
「弦。俺のこと『好き』なの? 今でも……?」
ヒカルの目は潤んでないか……?
嘘だろ。いつもの冷徹なツラはどこにいったんだよ。
「俺。お前にひどいことしたんだぜ? なのになんで『ありがとう』なんだよ……」
よかった。ドア越しの弦の言葉はヒカルに届いていたみたいだ。
「いいんだよ、ありがとうで。ヒカルはいつも俺を守ってくれたから。ヒカルにからかわれたんだって知ったときはショックだったけど、他の人たちはヒカルにからかっても貰えないんだからな。俺、最初からヒカルに本気で好きになってもらえるなんて思ってなかったんだ。それでもいいや、嘘でもいいやって思ってヒカルと一緒にいたんだから。でもさ、俺、ちょっとだけわからないんだ……」
まさかとは思ってる。
そんな奇跡、ありえないと思ってはいるのだが、ヒカルに訊きたい。
「ヒカル」
ヒカルの本当を見抜きたくて、ヒカルの目をじっと見て訊ねる。
「お前が俺にしたこと、全部俺をからかってたとは思えない。どれが本当で、どれが嘘だったの……?」
弦の問いに、ヒカルは一瞬戸惑っているようにもみえた。だが、ヒカルはすぐに何か心に決めたように弦に微笑みかけてきた。図書室で弦に笑顔を見せてくれていたときのように。
「全部だよ。お前にしたこと全部本当。最初からお前をからかってなんかいない。からかってるって奏多に言ったのが、俺がついた嘘」
ヒカルの目は涙をたたえながらも優しい。今のヒカルの言うことは多分、本当だ。
ヒカルが弦にしたこと全部本当だとしたら。
ヒカルの弦に対する優しさと愛情は本物で、まさかヒカルは——。
ヒカルは広いリビングのソファーに座っていた弦と一真に目もくれずに階段を上がっていってしまった。どうやらそのまま自室に向かったようだ。
弦はヒカルを追いかける。そしてヒカルの部屋のドアをノックした。
——反応はない。
「ヒカル。開けてっ」
弦はもう一度ドアを叩く。
「ヒカルっ。俺と話をしようっ。俺ヒカルに言わなくちゃいけないことがあるのを思い出したんだ。だから、聞いて……」
今さらかもしれない。さよならしたくせにと思われてるかもしれない。ヒカルは月並みな愛の言葉なんて言われすぎて聞き飽きてるかもしれないけれど。
「ヒカル。ありがとう。俺、きっとヒカルにたくさん助けられた」
ドアの向こう側で、ヒカルは聞いてくれているのだろうか。弦の声は届いていないかもしれない。
「ヒカル。好きだよ。それだけ言いたくて……どうせヒカルなら毎日のように誰かに言われてるんだろうけどさ……」
弦がヒカルに好意を寄せても、つまらないヒカル親衛隊がまたひとり増えただけにすぎない。
ヒカルならわざわざ弦を選ばなくてもいくらでもいい人と付き合える。
でも弦も想いを口にしてみて、ヒカルを避けていたけど、ヒカルに出会えてよかったと思えるようになった。……まぁ、目の前の相手はヒカルの部屋のドアだけど。
「聞いてくれてありがとう。ヒカル」
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最後にヒカルの部屋のドアに寄りかかってみる。ヒカル本人は尊すぎるから、もはやドアでいい。
ドアの温もりを堪能しようとしていたら、急にドアが内側に開いた。その勢いで、弦はヒカルの部屋にドッと倒れ込む。
「何してんだよ、さっきから」
ヒカルの声だ。弦は急いで体勢を整え、ヒカルを見上げた。
「あんな大事なこと、俺を見て言ってくれよ……」
ヒカルは弦に手を差し伸べてきた。ヒカルの手を頼って弦は立ち上がる。
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よかった。ドア越しの弦の言葉はヒカルに届いていたみたいだ。
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まさかとは思ってる。
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ヒカルの目は涙をたたえながらも優しい。今のヒカルの言うことは多分、本当だ。
ヒカルが弦にしたこと全部本当だとしたら。
ヒカルの弦に対する優しさと愛情は本物で、まさかヒカルは——。
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