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進めない
4.
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ヒカルは怒っている。
なんであれだけのことで怒るのだろうと思うが、弦の腕を掴んでずんずんと歩くヒカルに声をかけることすらままならない。
ヒカルの部屋に入るなり、ヒカルは乱暴にドアを閉めた。
そして振り返りざまに、弦にキツイ視線を向けてきた。
「な、なに?! どうしたんだよヒカル……」
「弦は今後一切、一真と話すなっ」
「はぁ?! なんだよそれ」
「一真はダメだ。許さない」
「ヒカルっ、そんなの無理だ! 一真はヒカルの兄貴だろ? これからだって何度も顔を合わせることになるのに……」
話をするくらい、なんでもないことだ。それすらダメだなんておかしくないか?!
「わかった。もういい。弦の好きにしたらいい」
ヒカルは完全に拗ねて、弦に背を向け部屋の奥に行ってしまった。
ヒカルの部屋はとても広い。20~30畳くらいあって、デスクや本棚のある場所と、ウォークインクローゼット、ベッドのある寝室とそれぞれエリア分けされている。
だから奥に行かれてしまうとヒカルの姿が見えなくなる。
もう十八歳なのだから子供みたいな態度を取るなよと思うし、一真と話さないなんてやっぱり無理、それは受け入れられないと思う。
「待てよヒカルっ」
それでもヒカルをひとりぼっちにはできない。弦はヒカルを追いかける。
「ヒカル。そんなことで怒るなよ、な? 機嫌直せって」
弦が話しかけてもヒカルは振り返らない。
「ほら、そうだ、何? 俺に見せたいものって。教えてよ」
なんとか明るい声を出してヒカルをなだめようとする。ヒカルの顔を見て話をしたいと弦はヒカルの前にまわり込み、ヒカルを見上げた。
「——見せたいものなんてない」
ヒカルの重苦しい声。
「えっ?」
「弦は簡単に騙されるんだな」
急にヒカルに肩を掴まれ、身体をぐいぐい押されて後退させられる。
なんだなんだと思っているうちに、ベッドまで追いやられ、ドンッとベッドに突き飛ばされる。そのあとすぐヒカルが全身で覆い被さってきた。
「ヒ、ヒカル……?」
ヒカルの目を見ただけでドキッとした。ヒカルの様子がいつもと全然違う。弦を押さえつける力は強くて身動きできないし、ヒカルは獰猛な目で弦を見下ろしている。
「見せたいものなんてない。外じゃ弦に手を出せないから、理由つけて弦をここに呼びたかっただけ。俺は弦と恋人らしいことがしたい」
「こっ……」
恋人らしいこと……?!
「……ちょ、待って、ヒカ……っ!」
「俺はやっぱり一真みたいにはなれない。愛想笑いもできないし、弦を大切にしたいと思ってるのに、今は弦が困らせたくてしょうがない。弦を苛めて、この愛しい顔が快楽で歪むのを見てみたくてたまらないんだよ」
ヒカルは下半身を弦の下半身に擦りつけてきた。衣服の上からでもそこが反応を示していることがわかり、弦はビクッと身体を震わせる。
「いい人ぶろうとしても、俺にはできない。本来の俺は自分本位でわがままなんだ。弦が他の奴と話してるだけでイライラするし、いつも弦に拒絶されるたびに苦しくなる。なのに大人ぶって、余裕ぶって……でももう限界だっ」
「待って、ああっ……! ヒカル…っ…んっ…!」
強引に唇を奪われ、塞がれる。いつもの優しいキスじゃない。乱暴に求められて息が苦しくなって半開きになった唇をこじ開け、ヒカルは口内まで熱い舌で犯していく。
ヒカルの手で服を乱され、触れられる。
なんでこんな急にと思うが、抗えない。ヒカルに求められてキスをされて、何も考えられない。ヒカルのせいで頭の中がぐちゃぐちゃになったみたいだ。
「んっ……んぅ…っ…」
どうすればいい……? このままヒカルに流されたら、この身体はどうされるんだろう……。
「ごめん……」
突然ヒカルがパッと弦から身体を離した。
「ごめん、弦、俺どうかしてた……」
ヒカルは弦のすぐ横、ベッドに座りうなだれている。
ヒカルは少しだけ冷静になったのかもしれない。
弦は身体を起こして、隣で落ち込んでいるヒカルの肩に頭をのせて寄りかかる。
「ヒカル。いいよ」
弦の声にヒカルがぴく、と身体を震わせた。
「俺、嫌じゃないよ。だってヒカルのこと好きだから」
弦はヒカルの身体にそっと腕を回す。
ヒカルとは恋人同士なのだから、いつかは身体の関係になるのかな、なんて漠然とは思っている。
自分には何の知識もないからつい尻込みしてしまうけど、ヒカルがそれを望むなら受け入れたい。
「みんなヒカルのこと誤解してるよな。だからヒカルまで『自分は冷たい奴』って思い込んでる。でもヒカル、言ってたじゃん。俺と一緒にいるとき気持ちが楽になるって。俺といるときのヒカルが本当のヒカルなんじゃないの? だとしたらヒカルはすごく優しいよ」
ヒカルは何も言葉を返してこなかった。その代わりに弦を抱き締めてきた。
抱き合ったままの二人——。
しばらくしてヒカルが口を開いた。
「……弦にキスしたい。キスだけ。それ以上はしないから」
さっきキス以上だって「いい」って言ったのに、と弦は思うが、こういうものはお互いの気持ちが大切だ。
「ん……」
弦が目を瞑り、ヒカルのキスを待ちわびるとすぐにヒカルの唇が落ちてきた。
「あっ……ふ…ぁ…」
ヒカルとのキスはいつも気持ちいい。
どうしてだろう。やっぱりヒカルはなんでもできるから、キスも上手なのかな。
「弦、可愛い。もっとその顔見せて……」
ヒカルの手で両頬を挟まれ、またキスをされる。
濃厚なキスだけど、ヒカルの優しさも感じる。
やっぱりヒカルが好きだ。
ヒカルは冷たくみえるけど実は優しくて、落ち着いてみえるけど内心は業火のような強い感情を持ち合わせている。
気がついたらヒカルに惹かれていて、こうして付き合うことになって、ヒカルの内面を知るたびにその気持ちは強くなっていく。
ヒカルは弦のことを知りたいと言っていたが、弦も同じくらいヒカルのことを理解したいと願っていた。
なんであれだけのことで怒るのだろうと思うが、弦の腕を掴んでずんずんと歩くヒカルに声をかけることすらままならない。
ヒカルの部屋に入るなり、ヒカルは乱暴にドアを閉めた。
そして振り返りざまに、弦にキツイ視線を向けてきた。
「な、なに?! どうしたんだよヒカル……」
「弦は今後一切、一真と話すなっ」
「はぁ?! なんだよそれ」
「一真はダメだ。許さない」
「ヒカルっ、そんなの無理だ! 一真はヒカルの兄貴だろ? これからだって何度も顔を合わせることになるのに……」
話をするくらい、なんでもないことだ。それすらダメだなんておかしくないか?!
「わかった。もういい。弦の好きにしたらいい」
ヒカルは完全に拗ねて、弦に背を向け部屋の奥に行ってしまった。
ヒカルの部屋はとても広い。20~30畳くらいあって、デスクや本棚のある場所と、ウォークインクローゼット、ベッドのある寝室とそれぞれエリア分けされている。
だから奥に行かれてしまうとヒカルの姿が見えなくなる。
もう十八歳なのだから子供みたいな態度を取るなよと思うし、一真と話さないなんてやっぱり無理、それは受け入れられないと思う。
「待てよヒカルっ」
それでもヒカルをひとりぼっちにはできない。弦はヒカルを追いかける。
「ヒカル。そんなことで怒るなよ、な? 機嫌直せって」
弦が話しかけてもヒカルは振り返らない。
「ほら、そうだ、何? 俺に見せたいものって。教えてよ」
なんとか明るい声を出してヒカルをなだめようとする。ヒカルの顔を見て話をしたいと弦はヒカルの前にまわり込み、ヒカルを見上げた。
「——見せたいものなんてない」
ヒカルの重苦しい声。
「えっ?」
「弦は簡単に騙されるんだな」
急にヒカルに肩を掴まれ、身体をぐいぐい押されて後退させられる。
なんだなんだと思っているうちに、ベッドまで追いやられ、ドンッとベッドに突き飛ばされる。そのあとすぐヒカルが全身で覆い被さってきた。
「ヒ、ヒカル……?」
ヒカルの目を見ただけでドキッとした。ヒカルの様子がいつもと全然違う。弦を押さえつける力は強くて身動きできないし、ヒカルは獰猛な目で弦を見下ろしている。
「見せたいものなんてない。外じゃ弦に手を出せないから、理由つけて弦をここに呼びたかっただけ。俺は弦と恋人らしいことがしたい」
「こっ……」
恋人らしいこと……?!
「……ちょ、待って、ヒカ……っ!」
「俺はやっぱり一真みたいにはなれない。愛想笑いもできないし、弦を大切にしたいと思ってるのに、今は弦が困らせたくてしょうがない。弦を苛めて、この愛しい顔が快楽で歪むのを見てみたくてたまらないんだよ」
ヒカルは下半身を弦の下半身に擦りつけてきた。衣服の上からでもそこが反応を示していることがわかり、弦はビクッと身体を震わせる。
「いい人ぶろうとしても、俺にはできない。本来の俺は自分本位でわがままなんだ。弦が他の奴と話してるだけでイライラするし、いつも弦に拒絶されるたびに苦しくなる。なのに大人ぶって、余裕ぶって……でももう限界だっ」
「待って、ああっ……! ヒカル…っ…んっ…!」
強引に唇を奪われ、塞がれる。いつもの優しいキスじゃない。乱暴に求められて息が苦しくなって半開きになった唇をこじ開け、ヒカルは口内まで熱い舌で犯していく。
ヒカルの手で服を乱され、触れられる。
なんでこんな急にと思うが、抗えない。ヒカルに求められてキスをされて、何も考えられない。ヒカルのせいで頭の中がぐちゃぐちゃになったみたいだ。
「んっ……んぅ…っ…」
どうすればいい……? このままヒカルに流されたら、この身体はどうされるんだろう……。
「ごめん……」
突然ヒカルがパッと弦から身体を離した。
「ごめん、弦、俺どうかしてた……」
ヒカルは弦のすぐ横、ベッドに座りうなだれている。
ヒカルは少しだけ冷静になったのかもしれない。
弦は身体を起こして、隣で落ち込んでいるヒカルの肩に頭をのせて寄りかかる。
「ヒカル。いいよ」
弦の声にヒカルがぴく、と身体を震わせた。
「俺、嫌じゃないよ。だってヒカルのこと好きだから」
弦はヒカルの身体にそっと腕を回す。
ヒカルとは恋人同士なのだから、いつかは身体の関係になるのかな、なんて漠然とは思っている。
自分には何の知識もないからつい尻込みしてしまうけど、ヒカルがそれを望むなら受け入れたい。
「みんなヒカルのこと誤解してるよな。だからヒカルまで『自分は冷たい奴』って思い込んでる。でもヒカル、言ってたじゃん。俺と一緒にいるとき気持ちが楽になるって。俺といるときのヒカルが本当のヒカルなんじゃないの? だとしたらヒカルはすごく優しいよ」
ヒカルは何も言葉を返してこなかった。その代わりに弦を抱き締めてきた。
抱き合ったままの二人——。
しばらくしてヒカルが口を開いた。
「……弦にキスしたい。キスだけ。それ以上はしないから」
さっきキス以上だって「いい」って言ったのに、と弦は思うが、こういうものはお互いの気持ちが大切だ。
「ん……」
弦が目を瞑り、ヒカルのキスを待ちわびるとすぐにヒカルの唇が落ちてきた。
「あっ……ふ…ぁ…」
ヒカルとのキスはいつも気持ちいい。
どうしてだろう。やっぱりヒカルはなんでもできるから、キスも上手なのかな。
「弦、可愛い。もっとその顔見せて……」
ヒカルの手で両頬を挟まれ、またキスをされる。
濃厚なキスだけど、ヒカルの優しさも感じる。
やっぱりヒカルが好きだ。
ヒカルは冷たくみえるけど実は優しくて、落ち着いてみえるけど内心は業火のような強い感情を持ち合わせている。
気がついたらヒカルに惹かれていて、こうして付き合うことになって、ヒカルの内面を知るたびにその気持ちは強くなっていく。
ヒカルは弦のことを知りたいと言っていたが、弦も同じくらいヒカルのことを理解したいと願っていた。
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