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5.放課後デート
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放課後、いつものとおりに早坂とふたりで下校していたときだった。
「あ、あの乃木。ちょっとだけ遠回りしていかない?」
せっかく駅まで着いたのに、早坂はあとひと駅だけ歩こうと提案してきた。
俺の通う高校の最寄りの駅は、地上にあった駅を地下に移動する、という再開発が進んでいるところだ。
電車が地下に潜ったぶん、空き地になった元線路があった場所は、隣の駅まで緑道が作られて、いくつかの新しいオシャレな店がオープンしている。
「頼む。少しだけ」
早坂とひと駅だけのデートをする……。それって、すごく楽しそうだ。
違う違う! 楽しんでどうする?!
早坂が嫌がることをしなくっちゃ。
「いいよ。ただし条件がある」
「出た。乃木はいつも条件をつけてくるんだな」
「手を繋いでよ」
どうだ、早坂! 男と公衆の面前で手を繋ぐなんて恥ずかしくて絶対に嫌だろ!
早坂は予想どおり、驚き困惑している。
いくら早坂とはいえ、これはさすがに無理だろう。
困れ困れっ!
これで告白ゲームを諦めろ!
早坂は何も言わず、俺に少し身体を寄せてきた。
早坂の左手が、俺の右手に触れる。
早坂の指は俺の反応を試すように彷徨っていたが、俺が逃げないとわかってそっと手を握ってきた。
早坂の温かい手から、優しさが伝わってくる。俺を怖がらせないように、愛おしそうに早坂の指が乃木の手の甲を這う。
「おいっ、早坂っ、冗談だって、離せよっ……!」
どうしよう、早く離してもらわないと、危険だ。
すごくドキドキする! このままじゃ早坂のことを好きになる……!
「離さない」
「はぁっ?!」
早坂は手を繋いだまま歩き出した。このシチュは絶対にダメだ。早坂は目立つから、周囲から見られて変な誤解を受ける。こんな地味な奴とイケメンが恋人同士なのかって思われる!
「早坂」
「少しだけ。隣の駅まで」
なんて奴だ。たかがゲームで勝つためだけに、男と手を繋いで街を歩くだなんて。
注目を浴びて、かなり恥ずかしいはずだ。同じ学校の奴が見ていたら、男好きとかブサイク好きとか変な噂を立てられるかもしれないのに。
「乃木の手は小さいんだな」
早坂はそう言って俺の手を確かめるように撫でた。
「可愛い」
「~~~~ッ!!」
なんてことを言うんだ!
これはきっと早坂に口説かれている。告白ゲームのために上辺だけの言葉を吐いて、俺をその気にさせようとしてるんだろ!
「乃木、もしかして照れてる?」
「照れてないっ!」
「照れてるその顔も可愛い」
あぁ! もうイケメンはそういうこと言うなって……。
「ごめん、あと少しだけ。乃木は俺のものだってみんなに見せつけたい気分なんだよ」
早坂は完全に落としにきたんだな! 告白ゲームを始めて五日経ってるし、そろそろエンジンかけてゲームを攻略しようと必死なのだろう。
あれ?
緑道沿いのカフェのテラス席に、俺と同じ制服の男女がふたりで仲睦まじそうに話している。
男のほうは波田野だ。女の子は学校一可愛いと噂の羽並吐愛だ。
波田野は俺と早坂を見つけて、なぜかこっちに向かって走ってきた。
こんなところを誰にも見られたくなかったのに! と俺が早坂の手を振り解こうとしているのに、早坂は反対に握りしめる手に力を込めてきた。
「早坂っ! お前、奥手そうに見えて結構やるな」
「波田野もな」
お互い牽制し合っている。もしかしたら、波田野の攻略対象は羽並なのかもしれない。
波田野は「秒で口説けそうな女にする」と言っていたくせに、学校一攻略が難しそうな羽並を狙っているのか。
でも波田野は、放課後に攻略対象とふたりきりでカフェに行くくらいまでは進展したようだ。
「早坂、手ェ繋いでる割には今にも逃げられそうじゃん。乃木、嫌がってるぞ」
波田野に早坂と繋いだ手を見られて、居た堪れない気持ちになる。
五日でここまで早坂に許すなんてちょろい攻略対象だと思われただろうか。
「そんなことない。無理矢理じゃない。乃木から俺を誘ってきたんだから」
それは違う!
まさかゲームのためだけにこんな恥ずかしいことはしないだろうと思って嫌がらせをしただけなのに。
でもこれでわかった。
さっき手を離してくれなかったのは、早坂が波田野にマウント取りたかったからなんだ……。
「乃木から?! ヤッベェ、俺も負けてらんねぇな。じゃ! せっかく仲良くなったのに、長時間放置したら嫌われちゃうからまたな!」
波田野はサッと踵を返し、再び羽並のところへ戻っていった。
波田野と話をして、早坂はショックを受けたようだ。明らかにテンションが下がっている。自分の方が負けているとでも思ったのだろうか。
「乃木が嫌がってるなんて気づけなくてごめん。乃木から誘ってきたからつい調子に乗った。俺と手を繋ぐのが嫌なら逃げていいよ」
波田野にアピールできたから、もう手を離してもいいって思ったのか……?
でも「逃げていい」という割には、早坂は固く固く俺の手を繋いでいる。
早坂は、何を考えているんだろう……。
「あ、あの乃木。ちょっとだけ遠回りしていかない?」
せっかく駅まで着いたのに、早坂はあとひと駅だけ歩こうと提案してきた。
俺の通う高校の最寄りの駅は、地上にあった駅を地下に移動する、という再開発が進んでいるところだ。
電車が地下に潜ったぶん、空き地になった元線路があった場所は、隣の駅まで緑道が作られて、いくつかの新しいオシャレな店がオープンしている。
「頼む。少しだけ」
早坂とひと駅だけのデートをする……。それって、すごく楽しそうだ。
違う違う! 楽しんでどうする?!
早坂が嫌がることをしなくっちゃ。
「いいよ。ただし条件がある」
「出た。乃木はいつも条件をつけてくるんだな」
「手を繋いでよ」
どうだ、早坂! 男と公衆の面前で手を繋ぐなんて恥ずかしくて絶対に嫌だろ!
早坂は予想どおり、驚き困惑している。
いくら早坂とはいえ、これはさすがに無理だろう。
困れ困れっ!
これで告白ゲームを諦めろ!
早坂は何も言わず、俺に少し身体を寄せてきた。
早坂の左手が、俺の右手に触れる。
早坂の指は俺の反応を試すように彷徨っていたが、俺が逃げないとわかってそっと手を握ってきた。
早坂の温かい手から、優しさが伝わってくる。俺を怖がらせないように、愛おしそうに早坂の指が乃木の手の甲を這う。
「おいっ、早坂っ、冗談だって、離せよっ……!」
どうしよう、早く離してもらわないと、危険だ。
すごくドキドキする! このままじゃ早坂のことを好きになる……!
「離さない」
「はぁっ?!」
早坂は手を繋いだまま歩き出した。このシチュは絶対にダメだ。早坂は目立つから、周囲から見られて変な誤解を受ける。こんな地味な奴とイケメンが恋人同士なのかって思われる!
「早坂」
「少しだけ。隣の駅まで」
なんて奴だ。たかがゲームで勝つためだけに、男と手を繋いで街を歩くだなんて。
注目を浴びて、かなり恥ずかしいはずだ。同じ学校の奴が見ていたら、男好きとかブサイク好きとか変な噂を立てられるかもしれないのに。
「乃木の手は小さいんだな」
早坂はそう言って俺の手を確かめるように撫でた。
「可愛い」
「~~~~ッ!!」
なんてことを言うんだ!
これはきっと早坂に口説かれている。告白ゲームのために上辺だけの言葉を吐いて、俺をその気にさせようとしてるんだろ!
「乃木、もしかして照れてる?」
「照れてないっ!」
「照れてるその顔も可愛い」
あぁ! もうイケメンはそういうこと言うなって……。
「ごめん、あと少しだけ。乃木は俺のものだってみんなに見せつけたい気分なんだよ」
早坂は完全に落としにきたんだな! 告白ゲームを始めて五日経ってるし、そろそろエンジンかけてゲームを攻略しようと必死なのだろう。
あれ?
緑道沿いのカフェのテラス席に、俺と同じ制服の男女がふたりで仲睦まじそうに話している。
男のほうは波田野だ。女の子は学校一可愛いと噂の羽並吐愛だ。
波田野は俺と早坂を見つけて、なぜかこっちに向かって走ってきた。
こんなところを誰にも見られたくなかったのに! と俺が早坂の手を振り解こうとしているのに、早坂は反対に握りしめる手に力を込めてきた。
「早坂っ! お前、奥手そうに見えて結構やるな」
「波田野もな」
お互い牽制し合っている。もしかしたら、波田野の攻略対象は羽並なのかもしれない。
波田野は「秒で口説けそうな女にする」と言っていたくせに、学校一攻略が難しそうな羽並を狙っているのか。
でも波田野は、放課後に攻略対象とふたりきりでカフェに行くくらいまでは進展したようだ。
「早坂、手ェ繋いでる割には今にも逃げられそうじゃん。乃木、嫌がってるぞ」
波田野に早坂と繋いだ手を見られて、居た堪れない気持ちになる。
五日でここまで早坂に許すなんてちょろい攻略対象だと思われただろうか。
「そんなことない。無理矢理じゃない。乃木から俺を誘ってきたんだから」
それは違う!
まさかゲームのためだけにこんな恥ずかしいことはしないだろうと思って嫌がらせをしただけなのに。
でもこれでわかった。
さっき手を離してくれなかったのは、早坂が波田野にマウント取りたかったからなんだ……。
「乃木から?! ヤッベェ、俺も負けてらんねぇな。じゃ! せっかく仲良くなったのに、長時間放置したら嫌われちゃうからまたな!」
波田野はサッと踵を返し、再び羽並のところへ戻っていった。
波田野と話をして、早坂はショックを受けたようだ。明らかにテンションが下がっている。自分の方が負けているとでも思ったのだろうか。
「乃木が嫌がってるなんて気づけなくてごめん。乃木から誘ってきたからつい調子に乗った。俺と手を繋ぐのが嫌なら逃げていいよ」
波田野にアピールできたから、もう手を離してもいいって思ったのか……?
でも「逃げていい」という割には、早坂は固く固く俺の手を繋いでいる。
早坂は、何を考えているんだろう……。
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