告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖

文字の大きさ
5 / 10

5.放課後デート

 放課後、いつものとおりに早坂とふたりで下校していたときだった。

「あ、あの乃木。ちょっとだけ遠回りしていかない?」

 せっかく駅まで着いたのに、早坂はあとひと駅だけ歩こうと提案してきた。

 俺の通う高校の最寄りの駅は、地上にあった駅を地下に移動する、という再開発が進んでいるところだ。
 電車が地下に潜ったぶん、空き地になった元線路があった場所は、隣の駅まで緑道が作られて、いくつかの新しいオシャレな店がオープンしている。

「頼む。少しだけ」

 早坂とひと駅だけのデートをする……。それって、すごく楽しそうだ。

 違う違う! 楽しんでどうする?!
 早坂が嫌がることをしなくっちゃ。

「いいよ。ただし条件がある」
「出た。乃木はいつも条件をつけてくるんだな」
「手を繋いでよ」

 どうだ、早坂! 男と公衆の面前で手を繋ぐなんて恥ずかしくて絶対に嫌だろ!

 早坂は予想どおり、驚き困惑している。
 いくら早坂とはいえ、これはさすがに無理だろう。
 困れ困れっ!
 これで告白ゲームを諦めろ! 

 早坂は何も言わず、俺に少し身体を寄せてきた。
 早坂の左手が、俺の右手に触れる。
 早坂の指は俺の反応を試すように彷徨っていたが、俺が逃げないとわかってそっと手を握ってきた。
 早坂の温かい手から、優しさが伝わってくる。俺を怖がらせないように、愛おしそうに早坂の指が乃木の手の甲を這う。

「おいっ、早坂っ、冗談だって、離せよっ……!」

 どうしよう、早く離してもらわないと、危険だ。
 すごくドキドキする! このままじゃ早坂のことを好きになる……!

「離さない」
「はぁっ?!」

 早坂は手を繋いだまま歩き出した。このシチュは絶対にダメだ。早坂は目立つから、周囲から見られて変な誤解を受ける。こんな地味な奴とイケメンが恋人同士なのかって思われる!

「早坂」
「少しだけ。隣の駅まで」

 なんて奴だ。たかがゲームで勝つためだけに、男と手を繋いで街を歩くだなんて。
 注目を浴びて、かなり恥ずかしいはずだ。同じ学校の奴が見ていたら、男好きとかブサイク好きとか変な噂を立てられるかもしれないのに。

「乃木の手は小さいんだな」

 早坂はそう言って俺の手を確かめるように撫でた。

「可愛い」
「~~~~ッ!!」

 なんてことを言うんだ!
 これはきっと早坂に口説かれている。告白ゲームのために上辺だけの言葉を吐いて、俺をその気にさせようとしてるんだろ!

「乃木、もしかして照れてる?」
「照れてないっ!」
「照れてるその顔も可愛い」

 あぁ! もうイケメンはそういうこと言うなって……。

「ごめん、あと少しだけ。乃木は俺のものだってみんなに見せつけたい気分なんだよ」

 早坂は完全に落としにきたんだな! 告白ゲームを始めて五日経ってるし、そろそろエンジンかけてゲームを攻略しようと必死なのだろう。

 あれ?

 緑道沿いのカフェのテラス席に、俺と同じ制服の男女がふたりで仲睦まじそうに話している。
 男のほうは波田野だ。女の子は学校一可愛いと噂の羽並吐愛はなみとあだ。

 波田野は俺と早坂を見つけて、なぜかこっちに向かって走ってきた。
 こんなところを誰にも見られたくなかったのに! と俺が早坂の手を振り解こうとしているのに、早坂は反対に握りしめる手に力を込めてきた。

「早坂っ! お前、奥手そうに見えて結構やるな」
「波田野もな」

 お互い牽制し合っている。もしかしたら、波田野の攻略対象は羽並なのかもしれない。
 波田野は「秒で口説けそうな女にする」と言っていたくせに、学校一攻略が難しそうな羽並を狙っているのか。
 でも波田野は、放課後に攻略対象とふたりきりでカフェに行くくらいまでは進展したようだ。

「早坂、手ェ繋いでる割には今にも逃げられそうじゃん。乃木、嫌がってるぞ」

 波田野に早坂と繋いだ手を見られて、居た堪れない気持ちになる。
 五日でここまで早坂に許すなんてちょろい攻略対象だと思われただろうか。

「そんなことない。無理矢理じゃない。乃木から俺を誘ってきたんだから」
 
 それは違う!
 まさかゲームのためだけにこんな恥ずかしいことはしないだろうと思って嫌がらせをしただけなのに。

 でもこれでわかった。
 さっき手を離してくれなかったのは、早坂が波田野にマウント取りたかったからなんだ……。

「乃木から?! ヤッベェ、俺も負けてらんねぇな。じゃ! せっかく仲良くなったのに、長時間放置したら嫌われちゃうからまたな!」

 波田野はサッと踵を返し、再び羽並のところへ戻っていった。




 波田野と話をして、早坂はショックを受けたようだ。明らかにテンションが下がっている。自分の方が負けているとでも思ったのだろうか。

「乃木が嫌がってるなんて気づけなくてごめん。乃木から誘ってきたからつい調子に乗った。俺と手を繋ぐのが嫌なら逃げていいよ」

 波田野にアピールできたから、もう手を離してもいいって思ったのか……?
 でも「逃げていい」という割には、早坂は固く固く俺の手を繋いでいる。

 早坂は、何を考えているんだろう……。
感想 11

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

俺に告白すると本命と結ばれる伝説がある。

はかまる
BL
恋愛成就率100%のプロの当て馬主人公が拗らせストーカーに好かれていたけど気づけない話

片思いの練習台にされていると思っていたら、自分が本命でした

みゅー
BL
オニキスは幼馴染みに思いを寄せていたが、相手には好きな人がいると知り、更に告白の練習台をお願いされ……と言うお話。 今後ハリーsideを書く予定 気がついたら自分は悪役令嬢だったのにヒロインざまぁしちゃいましたのスピンオフです。 サイデュームの宝石シリーズ番外編なので、今後そのキャラクターが少し関与してきます。 ハリーsideの最後の賭けの部分が変だったので少し改稿しました。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

悪役を幸せにしたいのになんか上手くいかないオタクのはなし

はかまる
BL
転生してみたものの気がつけば好きな小説のモブになっていてしかもストーリーのド終盤。 今まさに悪役が追放されそうになっているところを阻止したくなっちゃったオタクの話。 悪役が幸せに学園を卒業できるよう見守るはずがなんだか――――なんだか悪役の様子がおかしくなっちゃったオタクの話。 ヤンデレ(メンヘラ)×推しが幸せになってほしいオタク

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。 ※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中