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二月・三月 親衛隊は承認していれば『推し』に選ばれたとき通知がくるルール
エンディング⑦ 2.
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「これ以上騒いだら、今度はそのうるさい口を塞いでやる」
「はぁっ……?」
どうしたんだ安居院は!
いきなり額にキスされたと思ったら、今度は口を塞ぐって、それってどういう意味だ……?
「迷うなんて俺らしくなかったんだ。吉良を見つけただけでこんなにときめくのに」
安居院の発言に、ときめくなんて少女マンガの主人公かよと吉良はドン引きだ。
「どうしちゃったんだよ安居院っ。説明してくれって。俺これからどーなんの?」
「安心しろ、吉良。何があっても俺が全身全霊でお前を守る」
「説明になってない……」
「吉良が覚悟を決めてくれたのなら、俺も覚悟を決める」
そういうことを聞きたいんじゃない。安居院の覚悟の強さはわかったから、まずはこの状況説明から是非ともお願いしたい。
「あー! 可愛い! 吉良が俺の腕の中にいる!」
ダメだ。安居院には、会話が通じていないみたいだ。
まいった。本当にまいった。
抱っこされて、安居院をこんなに間近で感じてドキドキする。さっき口づけされた額にまだ安居院の唇の感触が残っている。
人に見られてめちゃくちゃ恥ずかしい。でも安居院に強引に連れ去られて嬉しいと思ってしまっている自分もいる。
——なんかわかんないけど、相手が安居院ならいっか。
安居院なら悪いことなんてしない。信頼に値する奴だ。
理由はわからないし、どこに連れて行かれているのかもわからない。でもこのまま安居院にこの身を委ねてしまってもいいか、なんて思った。
「安居院。わかった。俺をお前の好きにしてくれ」
吉良が安居院に身体を委ねると、安居院がよりいっそう抱き締めてきた。いくら安居院の体格が良くても吉良は男だ。しっかり抱き締めないとそれなりに重いのだろう。
やがてどこかの部屋に連れて行かれて、そこでやっと下ろされた。
ここは会場の隣の控え室みたいな場所のようだ。そして部屋の奥には渋いオジサンと、美人な女性が立っている。ふたりとももちろん正装だ。
「え……誰……?」
「俺の両親」
「安居院の父ちゃんと母ちゃんっ?」
それは経済界の重鎮クラスのやばい人だ。安居院家は両親共々経営者、莫大な収益を上げていると高校で噂話として聞いたことがある。
「吉良。俺、一年のころから親衛隊に入ってて」
「なんで今その話っ?」
安居院の思考がまったくわからない。安居院はいったい何を考えているのだろう。
「本当に毎日待ってた。今日こそ両想いになった通知が来ないかなって。ずっと、ずっと待ってて高校三年の秋になって、これはまったく相手にされてないんだって気がついて、俺は親衛隊サイトを脱退した」
「えっ? あれって脱退できんの?」
「普通はできない。でも隠岐に頼んで脱退したんだ」
「隠岐、すげぇな……」
隠岐はプログラミングやハッキングに長けている。隠岐の手にかかれば親衛隊サイトを脱退することも簡単なことなのだろう。
「毎日通知を待ち続けることにも疲れたし、それがいくら待っても来ないんだって気がついたとき、親衛隊サイトを見るのも嫌になった」
「そっか……」
その気持ちはわかる。安居院は二年半も毎日サイトを眺めては、ため息をついていたのかもしれない。果てのない期間、待ち続けて待ち疲れてしまったのだろう。
でも、でも、安居院はいったい誰を待っていたのだろう。
その相手がすごく気になる。
「吉良」
「へっ?」
安居院からの熱い視線を感じる。しかも安居院の手が、密かに吉良の腰を抱いている。
「俺を『選んで』くれたんだろ?」
「は……」
なぜそのことを安居院が知っている? 安居院は親衛隊サイトを脱退したとさっき本人が言っていたのに。
でも、少し考えてみる。吉良が安居院の親衛隊だと承認しても両想いの通知は来なかった。それは安居院が親衛隊サイトを脱退していたからなのだろう。
今の安居院は、親衛隊のルールに縛られない、無双キャラなのではないか。
「今日という日が俺の最後の賭けだった。俺からのメールを受け取ってくれたんだろ? それで、それを読んで今日、吉良はここに来てくれた。それが吉良が俺を『選んで』くれたっていうなによりの証拠だ」
「ちょ……! 何言って……!」
安居院からのメールなんて知らない。受け取った覚えもないし、それになんて書いてあったのかも知らない。
今日、ここに吉良を呼んだのは隠岐だ。隠岐がまた何か仕掛けてきたに違いない!
「俺を『選んで』くれるなら、3月10日11時に、このホテルのチャペルまで来てくれってメールした。吉良はチャペルにはいなかったけど、ホテルの廊下まで来てくれたってことは、覚悟を決めて俺に会いに来てくれたってことだよな?」
安居院は愛おしそうに真剣な眼差しを向けてくるから、これは何かの間違いだととっても言い出しにくい。でも、ちょっとだけこっちの言い分も聞いてほしい。
「あの、俺、メールなんてもらってないから!」
「えっ? じゃあ、吉良は俺の親衛隊じゃないってことかっ!?」
「いや、し、親衛隊なんだけど……」
安居院の親衛隊ということは間違いではない。でも、なんか嫌な予感がする。思っていたよりも話がデカくなりそうな……。
「なんだ。びっくりさせるなよ。吉良が俺の気持ちを何も知らないで、俺の婚約発表会に来たのかと思った」
「えっ? これ、隠岐の卒業パーティーだろっ?」
「何言ってんだ? こんなに安居院家ゆかりの人間ばっかり集まってるのに?」
そんな当然みたいな言い方されても、吉良にはどの人が安居院家につながりがあってどの人が隠岐家の人なのかまったくわからない。
「はぁっ……?」
どうしたんだ安居院は!
いきなり額にキスされたと思ったら、今度は口を塞ぐって、それってどういう意味だ……?
「迷うなんて俺らしくなかったんだ。吉良を見つけただけでこんなにときめくのに」
安居院の発言に、ときめくなんて少女マンガの主人公かよと吉良はドン引きだ。
「どうしちゃったんだよ安居院っ。説明してくれって。俺これからどーなんの?」
「安心しろ、吉良。何があっても俺が全身全霊でお前を守る」
「説明になってない……」
「吉良が覚悟を決めてくれたのなら、俺も覚悟を決める」
そういうことを聞きたいんじゃない。安居院の覚悟の強さはわかったから、まずはこの状況説明から是非ともお願いしたい。
「あー! 可愛い! 吉良が俺の腕の中にいる!」
ダメだ。安居院には、会話が通じていないみたいだ。
まいった。本当にまいった。
抱っこされて、安居院をこんなに間近で感じてドキドキする。さっき口づけされた額にまだ安居院の唇の感触が残っている。
人に見られてめちゃくちゃ恥ずかしい。でも安居院に強引に連れ去られて嬉しいと思ってしまっている自分もいる。
——なんかわかんないけど、相手が安居院ならいっか。
安居院なら悪いことなんてしない。信頼に値する奴だ。
理由はわからないし、どこに連れて行かれているのかもわからない。でもこのまま安居院にこの身を委ねてしまってもいいか、なんて思った。
「安居院。わかった。俺をお前の好きにしてくれ」
吉良が安居院に身体を委ねると、安居院がよりいっそう抱き締めてきた。いくら安居院の体格が良くても吉良は男だ。しっかり抱き締めないとそれなりに重いのだろう。
やがてどこかの部屋に連れて行かれて、そこでやっと下ろされた。
ここは会場の隣の控え室みたいな場所のようだ。そして部屋の奥には渋いオジサンと、美人な女性が立っている。ふたりとももちろん正装だ。
「え……誰……?」
「俺の両親」
「安居院の父ちゃんと母ちゃんっ?」
それは経済界の重鎮クラスのやばい人だ。安居院家は両親共々経営者、莫大な収益を上げていると高校で噂話として聞いたことがある。
「吉良。俺、一年のころから親衛隊に入ってて」
「なんで今その話っ?」
安居院の思考がまったくわからない。安居院はいったい何を考えているのだろう。
「本当に毎日待ってた。今日こそ両想いになった通知が来ないかなって。ずっと、ずっと待ってて高校三年の秋になって、これはまったく相手にされてないんだって気がついて、俺は親衛隊サイトを脱退した」
「えっ? あれって脱退できんの?」
「普通はできない。でも隠岐に頼んで脱退したんだ」
「隠岐、すげぇな……」
隠岐はプログラミングやハッキングに長けている。隠岐の手にかかれば親衛隊サイトを脱退することも簡単なことなのだろう。
「毎日通知を待ち続けることにも疲れたし、それがいくら待っても来ないんだって気がついたとき、親衛隊サイトを見るのも嫌になった」
「そっか……」
その気持ちはわかる。安居院は二年半も毎日サイトを眺めては、ため息をついていたのかもしれない。果てのない期間、待ち続けて待ち疲れてしまったのだろう。
でも、でも、安居院はいったい誰を待っていたのだろう。
その相手がすごく気になる。
「吉良」
「へっ?」
安居院からの熱い視線を感じる。しかも安居院の手が、密かに吉良の腰を抱いている。
「俺を『選んで』くれたんだろ?」
「は……」
なぜそのことを安居院が知っている? 安居院は親衛隊サイトを脱退したとさっき本人が言っていたのに。
でも、少し考えてみる。吉良が安居院の親衛隊だと承認しても両想いの通知は来なかった。それは安居院が親衛隊サイトを脱退していたからなのだろう。
今の安居院は、親衛隊のルールに縛られない、無双キャラなのではないか。
「今日という日が俺の最後の賭けだった。俺からのメールを受け取ってくれたんだろ? それで、それを読んで今日、吉良はここに来てくれた。それが吉良が俺を『選んで』くれたっていうなによりの証拠だ」
「ちょ……! 何言って……!」
安居院からのメールなんて知らない。受け取った覚えもないし、それになんて書いてあったのかも知らない。
今日、ここに吉良を呼んだのは隠岐だ。隠岐がまた何か仕掛けてきたに違いない!
「俺を『選んで』くれるなら、3月10日11時に、このホテルのチャペルまで来てくれってメールした。吉良はチャペルにはいなかったけど、ホテルの廊下まで来てくれたってことは、覚悟を決めて俺に会いに来てくれたってことだよな?」
安居院は愛おしそうに真剣な眼差しを向けてくるから、これは何かの間違いだととっても言い出しにくい。でも、ちょっとだけこっちの言い分も聞いてほしい。
「あの、俺、メールなんてもらってないから!」
「えっ? じゃあ、吉良は俺の親衛隊じゃないってことかっ!?」
「いや、し、親衛隊なんだけど……」
安居院の親衛隊ということは間違いではない。でも、なんか嫌な予感がする。思っていたよりも話がデカくなりそうな……。
「なんだ。びっくりさせるなよ。吉良が俺の気持ちを何も知らないで、俺の婚約発表会に来たのかと思った」
「えっ? これ、隠岐の卒業パーティーだろっ?」
「何言ってんだ? こんなに安居院家ゆかりの人間ばっかり集まってるのに?」
そんな当然みたいな言い方されても、吉良にはどの人が安居院家につながりがあってどの人が隠岐家の人なのかまったくわからない。
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