暗殺するため敵国に来たが愚王というのは嘘で溺愛され妃に迎え入れられました

雨宮里玖

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願い

1.

 その日は朝からユリスの体調が思わしくなかった。立ちくらみがして、階段を踏み外しそうになるし、身体が熱かった。

 それでも毎日やっている掃除と庭の手入れの仕事をしていたが、やっぱりクラクラしてきて建物の影に座り込んで少し休憩することにした。
 目を開けて、立ちあがろうと思っているのに目の前が暗くなり、それができない。



「はぁ……はぁ……」

 壁に寄りかかり、目眩がおさまるのを待っていたのに酷くなるばかり。
 ついに地面に倒れそうになったとき、誰かの手で身体を支えられた。

「大丈夫ですか?!」

 ローランの声だった。だが目眩がひどくて目を開けて姿を見ることはできない。

「部屋で休んでください!」

 ユリスを労わるローランの声がして、そのあとふわっと身体を持ち上げられた。

 すまない、ローラン……。
 そう言葉を発したいのにそれもできない。
 なんて情けない。自分で歩くことすらできないなんて。

 こんなふうに身体を横抱きにされるのは久しぶりだ。すごく懐かしく感じる。以前はよくカイルに抱かれてベッドに連れ込まれたから。

 なぜかわからないが、こうされていると身体が楽になった。久しぶりの人の温もりに、ほのかにふわっと香るアルファのフェロモン。
 やっぱり自分はオメガだ。誰のフェロモンでもアルファなら心地よく感じてしまうらしい。



 やがて自室のベッドに下ろされ、そっと身体に布団をかけられた。アルファと身体を離したことが嫌だと思った。もっとアルファが欲しいと思った。

「行かないで……」

 立ち去ろうとする気配がしたから暗闇の中、手を伸ばしてアルファを探し求める。

「妃陛下。まさか……!」

 ローランの声を聞いて、ユリスもまさかの可能性に気がついた。身体が熱くなり、アルファが欲しくなる。このオメガの症状はきっと——。

 ああ。これは城にいる間、ずっと待ち望んでいたものだ。

 今すぐカイルに会いたい。
 カイルと交わりたい。そうすることができたらカイルの子を孕めるのに。
 今すぐこの身体を城まで運んでもらえないだろうか。

 ヒートを起こしたと知れば、愛想を尽かしたカイルも気が変わってユリスを抱いてくれるかもしれない。
 



「さっきから妃陛下のオメガのフェロモンがいつもより強くて私も苦しくて……。妃陛下も真っ赤な顔をされてますよ? もしかして身体も熱くなってらっしゃるのでは……?」

 宙を彷徨っていたユリスの手が握られる。アルファに触れられただけで心臓がドキドキと高鳴った。

「もっと……」

 手を握るくらいじゃ足らない。ユリスの下半身が熱くなり、直接触れてもないのに頭をもたげてくる。

「お願い、触って……」

 朦朧とする意識の中、本能が目の前のアルファを求めていく。

「妃陛下……」

 握り合った手に、ぎゅっと力を込められる。その強さがこれからアルファとオメガの間に何が行われるかの覚悟みたいに感じた。
 
 今さらだ。カイルのもとを去ったのは他でもないユリスだ。
 カイルはユリスの態度に憤慨していたとローランは言っていた。
 ユリスを病死ということにして廃王妃にし、次の王妃を迎える準備をしているようだし、もう戻る場所はない。

 なによりこの身体は限界だ。


「抱いて欲しい……いっぱいして……オメガのあそこをぐちゃぐちゃにして欲しい……」

 もう駄目だ。アルファを目の前にしてヒート中のオメガが本能に逆らえるわけがない。


「早く……っ」

 ユリスが訴えると、「失礼しますっ!」とローランの声が聞こえて布団の中に大きな身体が潜り込んできた。
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