85 / 91
願い
1.
その日は朝からユリスの体調が思わしくなかった。立ちくらみがして、階段を踏み外しそうになるし、身体が熱かった。
それでも毎日やっている掃除と庭の手入れの仕事をしていたが、やっぱりクラクラしてきて建物の影に座り込んで少し休憩することにした。
目を開けて、立ちあがろうと思っているのに目の前が暗くなり、それができない。
「はぁ……はぁ……」
壁に寄りかかり、目眩がおさまるのを待っていたのに酷くなるばかり。
ついに地面に倒れそうになったとき、誰かの手で身体を支えられた。
「大丈夫ですか?!」
ローランの声だった。だが目眩がひどくて目を開けて姿を見ることはできない。
「部屋で休んでください!」
ユリスを労わるローランの声がして、そのあとふわっと身体を持ち上げられた。
すまない、ローラン……。
そう言葉を発したいのにそれもできない。
なんて情けない。自分で歩くことすらできないなんて。
こんなふうに身体を横抱きにされるのは久しぶりだ。すごく懐かしく感じる。以前はよくカイルに抱かれてベッドに連れ込まれたから。
なぜかわからないが、こうされていると身体が楽になった。久しぶりの人の温もりに、ほのかにふわっと香るアルファのフェロモン。
やっぱり自分はオメガだ。誰のフェロモンでもアルファなら心地よく感じてしまうらしい。
やがて自室のベッドに下ろされ、そっと身体に布団をかけられた。アルファと身体を離したことが嫌だと思った。もっとアルファが欲しいと思った。
「行かないで……」
立ち去ろうとする気配がしたから暗闇の中、手を伸ばしてアルファを探し求める。
「妃陛下。まさか……!」
ローランの声を聞いて、ユリスもまさかの可能性に気がついた。身体が熱くなり、アルファが欲しくなる。このオメガの症状はきっと——。
ああ。これは城にいる間、ずっと待ち望んでいたものだ。
今すぐカイルに会いたい。
カイルと交わりたい。そうすることができたらカイルの子を孕めるのに。
今すぐこの身体を城まで運んでもらえないだろうか。
ヒートを起こしたと知れば、愛想を尽かしたカイルも気が変わってユリスを抱いてくれるかもしれない。
「さっきから妃陛下のオメガのフェロモンがいつもより強くて私も苦しくて……。妃陛下も真っ赤な顔をされてますよ? もしかして身体も熱くなってらっしゃるのでは……?」
宙を彷徨っていたユリスの手が握られる。アルファに触れられただけで心臓がドキドキと高鳴った。
「もっと……」
手を握るくらいじゃ足らない。ユリスの下半身が熱くなり、直接触れてもないのに頭をもたげてくる。
「お願い、触って……」
朦朧とする意識の中、本能が目の前のアルファを求めていく。
「妃陛下……」
握り合った手に、ぎゅっと力を込められる。その強さがこれからアルファとオメガの間に何が行われるかの覚悟みたいに感じた。
今さらだ。カイルのもとを去ったのは他でもないユリスだ。
カイルはユリスの態度に憤慨していたとローランは言っていた。
ユリスを病死ということにして廃王妃にし、次の王妃を迎える準備をしているようだし、もう戻る場所はない。
なによりこの身体は限界だ。
「抱いて欲しい……いっぱいして……オメガのあそこをぐちゃぐちゃにして欲しい……」
もう駄目だ。アルファを目の前にしてヒート中のオメガが本能に逆らえるわけがない。
「早く……っ」
ユリスが訴えると、「失礼しますっ!」とローランの声が聞こえて布団の中に大きな身体が潜り込んできた。
それでも毎日やっている掃除と庭の手入れの仕事をしていたが、やっぱりクラクラしてきて建物の影に座り込んで少し休憩することにした。
目を開けて、立ちあがろうと思っているのに目の前が暗くなり、それができない。
「はぁ……はぁ……」
壁に寄りかかり、目眩がおさまるのを待っていたのに酷くなるばかり。
ついに地面に倒れそうになったとき、誰かの手で身体を支えられた。
「大丈夫ですか?!」
ローランの声だった。だが目眩がひどくて目を開けて姿を見ることはできない。
「部屋で休んでください!」
ユリスを労わるローランの声がして、そのあとふわっと身体を持ち上げられた。
すまない、ローラン……。
そう言葉を発したいのにそれもできない。
なんて情けない。自分で歩くことすらできないなんて。
こんなふうに身体を横抱きにされるのは久しぶりだ。すごく懐かしく感じる。以前はよくカイルに抱かれてベッドに連れ込まれたから。
なぜかわからないが、こうされていると身体が楽になった。久しぶりの人の温もりに、ほのかにふわっと香るアルファのフェロモン。
やっぱり自分はオメガだ。誰のフェロモンでもアルファなら心地よく感じてしまうらしい。
やがて自室のベッドに下ろされ、そっと身体に布団をかけられた。アルファと身体を離したことが嫌だと思った。もっとアルファが欲しいと思った。
「行かないで……」
立ち去ろうとする気配がしたから暗闇の中、手を伸ばしてアルファを探し求める。
「妃陛下。まさか……!」
ローランの声を聞いて、ユリスもまさかの可能性に気がついた。身体が熱くなり、アルファが欲しくなる。このオメガの症状はきっと——。
ああ。これは城にいる間、ずっと待ち望んでいたものだ。
今すぐカイルに会いたい。
カイルと交わりたい。そうすることができたらカイルの子を孕めるのに。
今すぐこの身体を城まで運んでもらえないだろうか。
ヒートを起こしたと知れば、愛想を尽かしたカイルも気が変わってユリスを抱いてくれるかもしれない。
「さっきから妃陛下のオメガのフェロモンがいつもより強くて私も苦しくて……。妃陛下も真っ赤な顔をされてますよ? もしかして身体も熱くなってらっしゃるのでは……?」
宙を彷徨っていたユリスの手が握られる。アルファに触れられただけで心臓がドキドキと高鳴った。
「もっと……」
手を握るくらいじゃ足らない。ユリスの下半身が熱くなり、直接触れてもないのに頭をもたげてくる。
「お願い、触って……」
朦朧とする意識の中、本能が目の前のアルファを求めていく。
「妃陛下……」
握り合った手に、ぎゅっと力を込められる。その強さがこれからアルファとオメガの間に何が行われるかの覚悟みたいに感じた。
今さらだ。カイルのもとを去ったのは他でもないユリスだ。
カイルはユリスの態度に憤慨していたとローランは言っていた。
ユリスを病死ということにして廃王妃にし、次の王妃を迎える準備をしているようだし、もう戻る場所はない。
なによりこの身体は限界だ。
「抱いて欲しい……いっぱいして……オメガのあそこをぐちゃぐちゃにして欲しい……」
もう駄目だ。アルファを目の前にしてヒート中のオメガが本能に逆らえるわけがない。
「早く……っ」
ユリスが訴えると、「失礼しますっ!」とローランの声が聞こえて布団の中に大きな身体が潜り込んできた。
あなたにおすすめの小説
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
様々な形での応援ありがとうございます!
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
溺愛アルファの完璧なる巣作り
夕凪
BL
【本編完結済】(番外編SSを追加中です)
ユリウスはその日、騎士団の任務のために赴いた異国の山中で、死にかけの子どもを拾った。
抱き上げて、すぐに気づいた。
これは僕のオメガだ、と。
ユリウスはその子どもを大事に大事に世話した。
やがてようやく死の淵から脱した子どもは、ユリウスの下で成長していくが、その子にはある特殊な事情があって……。
こんなに愛してるのにすれ違うことなんてある?というほどに溺愛するアルファと、愛されていることに気づかない薄幸オメガのお話。(になる予定)
※この作品は完全なるフィクションです。登場する人物名や国名、団体名、宗教等はすべて架空のものであり、実在のものと一切の関係はありません。
話の内容上、宗教的な描写も登場するかと思いますが、繰り返しますがフィクションです。特定の宗教に対して批判や肯定をしているわけではありません。
クラウス×エミールのスピンオフあります。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/504363362/542779091
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。