その告白は勘違いです

雨宮里玖

文字の大きさ
55 / 76
6 手紙

6-9

しおりを挟む
「七沢は俺の恋人で、俺は七沢の恋人ね」
「そ、そうだよね……なんか、落ち着かないな」
「それって最高」

 有馬は幸せそうに笑う。
 なんだよ、有馬は恥ずかしくないのかな。俺はさっきから顔が熱くて仕方がないよ。

「付き合うってなんだろう。はっきり言って、俺、そういうのよくわからなくて……ただ、有馬のことは好き。すごく、特別に思ってる」

 これから俺たちはどうなっていくのかな。
 付き合うって、恋人ってなんだろう。そうなると、俺と有馬の関係はどう変わっていくのかな。

「どんなものか、確かめる方法がある」

 柔らかな有馬の手が、俺の後頭部に触れた。

「知りたい?」
「うん。知りたい」

 俺は頷く。
 有馬は博識だな。そんなすげぇ方法知ってんだ。

「キスするといいんだって。キスするとわかるらしい。友達と恋人の違い」
「え? あっ……」

 動揺する俺の唇に、有馬が唇を近づけてくる。
 俺と有馬の唇が重なる。
 柔らかい唇が触れる。有馬は俺に優しいキスをした。

 やばい。
 俺、有馬とキスしてる。

 不思議な感覚だった。
 特別な関係ですって見せつけられた感じ。呼吸が止まり、頭がふわふわしてきて、なんて言うんだろう。印をつけられたっていうか、俺の中の何かが共有されて、有馬のものになった気持ち。

 脳が気持ちいいって伝えてきて、力が抜けて腰が砕けそうになる。
 心拍数が上がってきて、胸がやたらとうるさい。
 好きな人とキスすると、身体中が反応して、こんなに幸せな気持ちになるものなんだ。

「どう? 嫌じゃない?」

 俺は顔も熱いし心臓バクバクなのに、俺にキスをした張本人は涼しい顔をしている。俺の反応を静かに見守っている感じ。

「や、じゃない……ただ……」
「ただ? どうしたの?」
「心臓やばい。顔熱いし、助けて」

 俺が有馬に泣き言を言うと、有馬は「可愛すぎるだろ」と俺を抱きしめてきた。

「有馬はっ? 有馬は、どんな気持ちになった……?」

 俺は気になって仕方がない。有馬は俺とのキス、どう思ったんだろう。
 俺と視線が合うと、有馬は頬を緩ませる。

「やっぱ七沢のこと好きって思った」
「ほんとっ?」
「うん」

 有馬が頷くと、俺を見つめている有馬の瞳に光が射した。その一瞬の輝きをすごく綺麗だと思った。

 俺、有馬と付き合うことになるんだ。
 有馬とデートしたり、ふたりきりで過ごしたり、そんなことを想像しただけで、にやけてしまいそうになる。


「好きだよ、七沢」

 俺の耳元で呟かれた、吐息めいた言葉。
 そう囁かれた瞬間、俺の心がトクン、と跳ねた。
 こんなに幸せって感じたこと、初めてかもしれない。

 その日、一日中、俺の頭から有馬の声が離れなかった。
しおりを挟む
感想 185

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

俺の彼氏は真面目だから

西を向いたらね
BL
受けが攻めと恋人同士だと思って「俺の彼氏は真面目だからなぁ」って言ったら、攻めの様子が急におかしくなった話。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

彼氏の優先順位[本編完結]

セイ
BL
一目惚れした彼に告白されて晴れて恋人になったというのに彼と彼の幼馴染との距離が気になりすぎる!恋人の僕より一緒にいるんじゃない?は…!!もしかして恋人になったのは夢だった?と悩みまくる受けのお話。 メインの青衣×青空の話、幼馴染の茜の話、友人倉橋の数話ずつの短編構成です。それぞれの恋愛をお楽しみください。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

美澄の顔には抗えない。

米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け 高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。 ※なろう、カクヨムでも掲載中です。

付き合って一年マンネリ化してたから振られたと思っていたがどうやら違うようなので猛烈に引き止めた話

雨宮里玖
BL
恋人の神尾が突然連絡を経って二週間。神尾のことが諦められない樋口は神尾との思い出のカフェに行く。そこで神尾と一緒にいた山本から「神尾はお前と別れたって言ってたぞ」と言われ——。 樋口(27)サラリーマン。 神尾裕二(27)サラリーマン。 佐上果穂(26)社長令嬢。会社幹部。 山本(27)樋口と神尾の大学時代の同級生。

処理中です...