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亮平
亮平 -02
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アリス、と名乗った女は、俺がその話にのる、という返答をした後、こう言った。「私がお前のマネージメントをしてやる」と
そのうえで、必要な時には直接対面しよう、とも。
マネージメントというか、育成という方がいいやり取りが開始された。
メッセージを介して、どういう手続きが必要か、どういう知識や技術の習得が必要か、ということをレクチャーされていく。まだ実際に会っていないときに、半信半疑で指定されたFAVのガレージに行ったとき、すでに担当は状況を把握していて、俺にシミュレーターを操作するように指示されたあたりで、あの女の本気度をようやく理解した。
シミュレーションの内容は歩行、ジャンプなどの基本動作がメインだったが、講義で聞いていた通りにはなかなか動かせなかった。一通りの移動操作ができるようになったところで、回避行動のシミュレーションに移る。
相手の射線からいかに早く離脱するか、関節部などの重要なところにいかにダメージをもらわないようにするかなどを訓練するわけだが。
「スコアは控えめに言って、まあ最悪だな」
胃の中を空っぽにするまで吐き倒したあと、ややはっきりしない意識を抱えながら、マネージャーの評価を受ける。言い返そうにも、言葉を出せなかった。これまで全く体験したこともないような縦横無尽に襲い来る加速、減速時のGで、内臓と意識がシェイクされ、前後不覚になるレベルだったのだ。
「ただ、初めていろいろ操作をした割には、こちらの指示を理解して動かそうとしているところは見て取れた。あとは、FAVの四肢が自分の手足並みに動かせるように今後の訓練だな。」
そうなるまでは依頼を受けない、とまで言いそうな雰囲気だったが、あの傭兵にとどめを刺すまでになるには必要なことだと、付け加えられた。そういわれて、いよいよ自分は地獄へ一歩踏み出そうとしているんだと実感した。
今思い返せば、その予感は確かに的中はしていた。しかし、それは自分が思っていた以上に、昏く、深い闇の底だった。一条の光さえも差し込むことのない、怨嗟に塗れた魂の闇だった。
「さて、いよいよL A Sの登録オーディションだが、聞いておきたいことはあるか?」
最低点を刻み付けた初回のシミュレーター訓練から3か月。
いよいよ実機での戦闘機動の訓練を開始したあたりで、アリスは俺に尋ねてきた。
「聞いておくも何も、俺はアリスの指図通りしか今は動けない。
オーディションとは実戦形式なのか?くらいしか聞くことがないな。」
いつものように、そう答えつつ、初めて対面した時のことを思い出していた。
シミュレーターで基礎動作の確認と、初回の回避機動のテスト後、日を空けてアリスと対面することになった。何度か音声でやり取りをしたことはあったり、自己紹介時にも申告があったので女性、ということはわかっていたが、それ以上に経歴や、生い立ちは知らない。それらのことは大したことじゃない、と深追いする意識を割り振らなかった、というのが大いにあるが、名前と、彼女の今の立場を理解できればそれでいいと思っていたのだ。
だから、実際に会う、なんて話を持ち掛けられたときは正直面倒くさいと思った。テキストや音声通話だけで成り立つと思い込んでいたからだ。だが、彼女はそうしなかった。直接対面しようと言い出して、一方的に日程を言い渡された。まったくこちらの都合を無視された形だ。待ち合わせは、最初にFAVのシミュレーター訓練を受けたその場所で落ち合うことになった。
そうして実際に待ち合わせた際に目にしたのは相当に整った、ブランド服の広告モデルでもやっていけそうなくらいの女性が立っていた。プラチナブロンドをアップにして、かっちりとしたグレーのパンツスーツ。そのスーツを纏ったスレンダーな肢体は、いつかみた凛とした白百合のような出で立ちで、なんというか、これまでの会話の内容からすると、随分と想像から離れていた。
「……なんだ?呆けた顔を晒して。これから確実に人を一人殺そうという人間が、たかが女の一人や二人みて呆けるな。」
やや殺気が籠っている目線で射竦められる。実際、剣呑とした感じのまなざしで俺を睨んでいたように思う。
「初めまして、だな。私はアリス。アリス=R=ルミナリスだ。」
右手を差し出しながら、彼女は名乗る。
「……杉屋亮平だ。」
ファーストコンタクトで威圧されたと感じたため、やや憮然とした表情と声で彼女の右手を取り、握手する。
「ふーむ」
握手を切ったと思いきや、いきなりアリスは俺の体に視線を巡らせ、さらには背後に回ったりと、身体検査をしてきた。
「何か面白いものでもあるのか?俺に?」
「いや、特別ない。今のところは、だが」
どこか引っかかる物言いをしながら、俺と目線が合うようにまた正面に立ち、こう言った。
「さて、ビジネスをしよう。お前には足りていないものが大量にあるが、一先ずこれからどういう動きをするか。どういう訓練をして、何者である必要があるのか。これをまず固める必要がある。」
そのうえで、必要な時には直接対面しよう、とも。
マネージメントというか、育成という方がいいやり取りが開始された。
メッセージを介して、どういう手続きが必要か、どういう知識や技術の習得が必要か、ということをレクチャーされていく。まだ実際に会っていないときに、半信半疑で指定されたFAVのガレージに行ったとき、すでに担当は状況を把握していて、俺にシミュレーターを操作するように指示されたあたりで、あの女の本気度をようやく理解した。
シミュレーションの内容は歩行、ジャンプなどの基本動作がメインだったが、講義で聞いていた通りにはなかなか動かせなかった。一通りの移動操作ができるようになったところで、回避行動のシミュレーションに移る。
相手の射線からいかに早く離脱するか、関節部などの重要なところにいかにダメージをもらわないようにするかなどを訓練するわけだが。
「スコアは控えめに言って、まあ最悪だな」
胃の中を空っぽにするまで吐き倒したあと、ややはっきりしない意識を抱えながら、マネージャーの評価を受ける。言い返そうにも、言葉を出せなかった。これまで全く体験したこともないような縦横無尽に襲い来る加速、減速時のGで、内臓と意識がシェイクされ、前後不覚になるレベルだったのだ。
「ただ、初めていろいろ操作をした割には、こちらの指示を理解して動かそうとしているところは見て取れた。あとは、FAVの四肢が自分の手足並みに動かせるように今後の訓練だな。」
そうなるまでは依頼を受けない、とまで言いそうな雰囲気だったが、あの傭兵にとどめを刺すまでになるには必要なことだと、付け加えられた。そういわれて、いよいよ自分は地獄へ一歩踏み出そうとしているんだと実感した。
今思い返せば、その予感は確かに的中はしていた。しかし、それは自分が思っていた以上に、昏く、深い闇の底だった。一条の光さえも差し込むことのない、怨嗟に塗れた魂の闇だった。
「さて、いよいよL A Sの登録オーディションだが、聞いておきたいことはあるか?」
最低点を刻み付けた初回のシミュレーター訓練から3か月。
いよいよ実機での戦闘機動の訓練を開始したあたりで、アリスは俺に尋ねてきた。
「聞いておくも何も、俺はアリスの指図通りしか今は動けない。
オーディションとは実戦形式なのか?くらいしか聞くことがないな。」
いつものように、そう答えつつ、初めて対面した時のことを思い出していた。
シミュレーターで基礎動作の確認と、初回の回避機動のテスト後、日を空けてアリスと対面することになった。何度か音声でやり取りをしたことはあったり、自己紹介時にも申告があったので女性、ということはわかっていたが、それ以上に経歴や、生い立ちは知らない。それらのことは大したことじゃない、と深追いする意識を割り振らなかった、というのが大いにあるが、名前と、彼女の今の立場を理解できればそれでいいと思っていたのだ。
だから、実際に会う、なんて話を持ち掛けられたときは正直面倒くさいと思った。テキストや音声通話だけで成り立つと思い込んでいたからだ。だが、彼女はそうしなかった。直接対面しようと言い出して、一方的に日程を言い渡された。まったくこちらの都合を無視された形だ。待ち合わせは、最初にFAVのシミュレーター訓練を受けたその場所で落ち合うことになった。
そうして実際に待ち合わせた際に目にしたのは相当に整った、ブランド服の広告モデルでもやっていけそうなくらいの女性が立っていた。プラチナブロンドをアップにして、かっちりとしたグレーのパンツスーツ。そのスーツを纏ったスレンダーな肢体は、いつかみた凛とした白百合のような出で立ちで、なんというか、これまでの会話の内容からすると、随分と想像から離れていた。
「……なんだ?呆けた顔を晒して。これから確実に人を一人殺そうという人間が、たかが女の一人や二人みて呆けるな。」
やや殺気が籠っている目線で射竦められる。実際、剣呑とした感じのまなざしで俺を睨んでいたように思う。
「初めまして、だな。私はアリス。アリス=R=ルミナリスだ。」
右手を差し出しながら、彼女は名乗る。
「……杉屋亮平だ。」
ファーストコンタクトで威圧されたと感じたため、やや憮然とした表情と声で彼女の右手を取り、握手する。
「ふーむ」
握手を切ったと思いきや、いきなりアリスは俺の体に視線を巡らせ、さらには背後に回ったりと、身体検査をしてきた。
「何か面白いものでもあるのか?俺に?」
「いや、特別ない。今のところは、だが」
どこか引っかかる物言いをしながら、俺と目線が合うようにまた正面に立ち、こう言った。
「さて、ビジネスをしよう。お前には足りていないものが大量にあるが、一先ずこれからどういう動きをするか。どういう訓練をして、何者である必要があるのか。これをまず固める必要がある。」
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