愛を注いで

木陰みもり

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1、一目惚れと恋の味

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カウンターのみの小さな喫茶店で、彼と俺の2人だけのこの状況で、微妙な気まずさを打ち消す何かはなく、俺はアイスコーヒーを一気に飲み干し気持ちを落ち着けた。
「コーヒー美味しかったよ!会社と顧客の行き帰りの道に、こんないい喫茶店ができたなんてラッキーだったよ。ごちそうさま。代金はここでいい?」
サッと立ち上がり、何事もなかったように代金をカウンターの上に置く。
「はい、喜んでいただけて何よりです。ぜひまた……来てください。」
ぎこちなく笑いながら、代金を手に取る。きっと彼も、俺はもう来ないと思っているだろう。
『もちろんまた来るよ』と彼を励ます言葉を掛けようと思ったが、気落ち姿を見て、俺は不意に中学生の頃好きだった人のことを思い出した。いたずら好きのくせにそのせいで他人が傷付くと自分も傷付く奴だった。

そうか、俺は彼に恋をしてしてしまったのか――

先ほどまでの感情に名前が付いたら、心にストンと落ちた。『こんな気持ち、男に向けられたら嫌だろう』気付いてしまった気持ちと『もちろんまた来るよ』の言葉をそっとしまい込んで、俺はドアノブに手をかけ、重たく感じる扉をグッと思いっきり押した。瞬間、彼が俺の手をギュッと握ってきた。
「待ってください!」
「ど、どうした?」
「待ってください!また、また絶対来てください。」
「もちろんまた来るよ。」

嘘だ――

「嘘……そんなの……さっきはごめんなさい、キ……変なことしちゃって何も言えなくてなっちゃって……その……」
彼は瞳を潤ませながら、きゅっと唇を結んだ。
「そんな焦んなって。」
そう言いながら彼の頭をポンポンと軽く叩いた。
慌てて俺を引き止めてくれたことが嬉しくて、ついつい口元が緩む。ダメだ、しまい込んだ想いが溢れ出しそうだ。
また来てもいいだろうかと欲が出る。
「コーヒーもうまいし、お前は弟みたいに可愛いし。さっきの頬に触ってきたのだっていたずらだろ?だからそんな顔するなよ。」
『また来るよ』そんな不確定な言葉を使わないように気を付けながら彼に声を掛ける。
途端に握られた手をさらに強い力でギュッと握られる。
「また来るって、言ってくれないなら……」
「えっ?」
くぐもった声で彼は何か言っていたが全く聞こえなく、聞き返す。するとキッと力強い顔をして、思いもよらない言葉をつつづった。
「また来るって言ってくれないなら、もう会うことがないなら、僕のこの気持ちを言ってもいいですよね?あの!僕ずっとあなたのこと知ってました。ずっとずっと想ってました。好きです。」
「えっ……今……」
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