愛を注いで

木陰みもり

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2、一途な恋心

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「はぁ……お前に傘をさしてくれた人に会いたいんだ僕……」
「にゃぁ~」
「猫に話しても分からないよね。誰かに固執するなんてもうやめたのにな……」
しとしとと降り続く雨を見ながら、ジメジメした梅雨の空気と自分の心を重ねてはため息を吐く日々を送っていた。

「優男さん」と出会って2週間、まだ梅雨は続いている。日に日に気温は上昇し、湿気も増え、ジメジメに拍車がかかる。
「あっつい!クーラーの工事まで荷物運ぶのやめておけばよかったかな。」
段ボールをドサっと置き、Tシャツをパタパタとうちわのように動かし顔に風を送る。
今日は祖父が残してくれたビルの1階で喫茶店を始めるための準備に来た。ビルと言っても3階以上は居住として貸し出しているもので、祖父が生きていた時から住んでいる人たちが継続して住んでいるので、それをそのまま僕は引き継いだだけだ。
梅雨が始まる少し前に、1階を喫茶店へと改装を始め、ようやく荷物を運べるようになっていた。今は祖父の遺品整理と1階の改装のため、2階の祖父の部屋に寝泊まりしているが、開店に必要な荷物も、少しずつ祖父の部屋にでも運んでおけばよかったと後悔した。まさか、ギリギリに焦って色々と運び込む羽目になるとは思いもよらなかった。
「昔から計画性はなかったけど、最近は拍車をかけてポンコツだな、僕。はぁ……」
深いため息を吐き、窓の外を見る。今日は世間一般的には休日だ。ちゃんとした会社なら「優男さん」はいるはずもないのに、無意識に窓の外を見る。いるわけないのに、何をやっているのだろうと思いながも、探すことをやめられない。

ぼーっと外を眺めていると、見覚えのあるオレンジブラウンの髪にシャープな顎にやや離れた切れ長の目が印象的な「優男さん」の姿が視界の端から端へ通り過ぎる。ハッとして僕は思いっきり扉を開け、「優男さん」を追いかけていた。「優男さん」は僕もよく行く、喫茶店から出て左に2つ信号を渡ったところにあるコーヒー豆専門店に入っていった。その姿を見て僕も思わず店に入ってしまった。
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