愛を注いで

木陰みもり

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2、一途な恋心

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「いらっしゃい、尊。今日何か注文してたものあったっけ?」
「あっ、いや特にないんですけど、なんとなく、こ、コーヒー豆の匂い、が嗅ぎたくなって!」
「なんだそれ、まぁいいや、ゆっくりしてけよ。」
「ありがとう…」
馴染みの店員と会話をしながら「優男さん」を横目で見る。「優男さん」は、コーヒー豆を真剣に選んでいる。コーヒー好きなのかな?じゃないと豆から買いに来ないよな。家で自分で豆を挽いて入れてるのかな?喫茶店始めたら来てくれるから?すごく聞きたい、聞きたいことで頭が一杯になっていた。次の瞬間、自分でも思いもよらない行動をとっていた。
「コーヒーお好きなんですか?先ほどから真剣に豆を選ばれてますが。」
「えっ、本当ですか?お願いします。」
驚いたように振り返った「優男さん」とバチっと目が合った。
「えっ?」
思わず自分の行動に驚いてしまい、そっぽを向きながら色々よく分からないことを口走る。
「あの、えっと、コーヒー豆を真剣に選んでらしたので!コーヒー豆をお探しなのかと。僕、コーヒーには詳しいので相談に乗りますよ?それにここの店員ですし!」
「お前ここの店員じゃ…むんぐっ!?」
「わーお気になさらず、お願い今だけここの店員にして、あとこのメガネ貸して!」
僕の嘘に突っ込んでこようとした、本物の店員の彼の口を押さえ、こそこそと変装にメガネを奪い取る。
「はぁ、貸しな…」
「ありがとう」
この一連の不可解な行動を怪しまずに、純粋な目でこちらを見ている。
「店員さん同士仲良いんですね。最近豆から挽いてコーヒー飲むのにハマってて、でもどれがいいか正直分からなくて困ってたんですよ。よろしくお願いします!」
「優男さん」は、にこっと笑って頭を下げた。
不覚にもとてもキュンときてしまった。ふわふわとした気持ちで僕は舞い上がり、赤く染まりそうな顔を、髪の毛を前にボサボサと下ろし隠した。
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