愛を注いで

木陰みもり

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12、お誘いに勇気は必要ですか?〜side 拓真〜

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「拓真さん、早くしないとご飯食べられなくなります」
「じゃあ食べなくてもいいんじゃない?というか意外ともう夕方だな」
「ダメです。これは今食べてほしいです」
やけにお菓子を勧めてくるな。そんなに美味しいものなのか。俺も実は気になっていたからあまり強くは言えない。
「今はどれ食べるんだ?」
結局決めきれなかったのか、お菓子が全部机の上に並んでいる。飴から焼き菓子系まで軽いものから重たいものまで全部揃っていた。
「今はご飯前だから、あっ、目を閉じて待っていてください」
「またかよ…はい、これでいいか?」
「口開けてください」
目を閉じた時、尊くんの雰囲気が一瞬で変わったように感じた。だけど俺は言われるがまま口を開けた。尊くんの痺れるような雰囲気に俺は呑まれていた。
 お菓子の包装を開ける音が妙にゆっくりと聞こえて、その音がより一層俺の鼓動を早めた。
「今から口に入れますけど、驚かないでくださいね」
俺はコクコクと頷いた。なんだろうかこの高揚感は。
 尊くんの手が俺の頬にそっと触れてきた。何も見えないからか、触れられたところに意識が集中してしまって、自分の意識とは関係なく身体が反応する。そのまま尊くんの親指が俺の唇に触れ、ゆっくりと撫でられた。思わず俺はゴクリと喉を鳴らした。
 ただお菓子を食べるだけなのに、雰囲気が甘くて身体中が痺れてくる。なんでもいいから早く口の中に入れてくれ。さっきから頬と唇を撫でたまま、何も口に入れてくる気配はない。
 俺は我慢できなくなり、目を開けようとした。しかしすぐに「まだ我慢の時間ですよ」と目を塞がれてしまった。一体何を考えているのか全くわからない。
 俺はもう我慢の限界だった。懇願するように、俺の頬を撫でる手に自分の手を重ねた。それを合図に尊くんが俺の口を優しく塞いだ。同時に下が上顎を舐め上げ、丸いビー玉くらいの何かが口の中に入ってきた。その物体がパチパチと俺の口の中で暴れるのと入れ替わりに、尊くんの唇が離れていき、さらに口は手で覆われた。
 舐められた上顎に弱い刺激が当たって、口の中にしゅわしゅわと甘い感覚が広がる。
「美味しいですか?」と耳元で囁かれただけで身体は想像以上に跳ねた。それを面白がった尊くんはさらに耳元で囁いた。
「その飴、しゅわしゅわしてるでしょ?しゅわだまっていう商品なんですけど、似たような商品よりしゅわしゅわ感が強くて、しかも刺激が細かいんですよ。拓真さんも気に入ってくれて嬉しいです」
気に入るとか気に入らないそれ以前に、気持ち良すぎて俺は味どころではなかった。手を離された目をうっすら開けると、獲物を狙うような目でこちらを見る尊くんの姿があった。俺はその姿に思わず思い切り目を開けてしまった。
「あ、舐め終わるまで閉じてて欲しかったのに…まぁいっか」
「んぐっ…」
尊くんの舌が、俺の口から飴を回収していく。口の中には甘ったるいリンゴの味と、しゅわしゅわの余韻で充満していた。
「この飴は何味でした?」
「リンゴ…」
「正解です。美味しかったでしょ」
美味しかったと言われれば、違う意味で美味しかった。口の中がこんなに気持ちいいなんて初めて知った。この飴だって、普通に食べていればどうってことなかったかもしれないが、視界を奪われ、感覚が鋭利になった中の刺激はそれだけで脚に力が入らなくなるんじゃないかってくらいの体験だった。できれば普通に味わいたかった。
「舐めてる間、味なんて感じる暇なかったよ…」
「でも気持ち良かった、ですよね」
「それは…まぁ…」
俺は何に返事をしているのだろうか。我に返ると顔を覆いたくなるほどに恥ずかしくなった。それと同時に俺の下半身はとても元気いっぱいになったようだ。お願いだから鎮まってくれ俺のオレ。
 こんなの絶対尊くんにも気付かれた。だって尊くんの目線はずっと下を向いているんだ。これってこのまま誘っても許されるよな…
「尊くん…」
俺は触って欲しくて、名前を呼びながら彼の手を取った。
 だが彼は俺の手を振り払い、何も見ていなかったかのように立ち上がった。「そろそろ支度しないとですね」と俺の方なんて見ないで、そう言い放った。今までにない冷たい態度に「急にどうしてそっけない態度を取るんだ」そう言いたくても、胸がズキズキして言葉が出てこなかった。
 俺も急いで立ち上がり「そうだね」と一言だけ声を振り絞って返した。思い返せば、俺ばっかりシてもらっていたんだ。なのに尊くんにはシたことがない。そりゃ毎回頼っちゃ悪いよな。
 暗い気持ちを押し込め、俺は「上手いカレー作ってやるから期待しとけよ!」と気丈に振る舞った。
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