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14、お酒は飲んでも飲まれるな
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ようやく定時。今日はいつもより立ちっぱなしで仕事をしていたせいか、もう脹脛がパンパンだ。大きく伸びをし、荷物を取りにデスクに戻ると、すでに四乃が待っていた。
「四乃早いな、今準備するから少し待っててくれ」
「気にしないでください。俺ロビーで待ってますね」
「悪いな、すぐ行くから」
元気よく手を振って走る四乃は日中の真剣な雰囲気を感じさせない、いつもの子犬のような四乃だった。その落差に俺は少し困惑していた。
「まぁ、今から聞いてみるか」
「四乃と飲みに行くの?」
「うわぁっ!?」
カバンに荷物を入れていると、気配なく佐藤が背後に立っていた。
「ビックリしたな、佐藤か」
「急いでるところ悪いけど、忠告だけしにきたの」
「え、もしかして俺やってない仕事あった?」
「そうじゃなくて、今から四乃と飲みに行くんでしょ」
「そ、そうだけど」
「じゃあ気を付けて。あの子すごいザルだった。私も飲める方だと思ってたけど、別格だわ。飲んだ日の最後の方記憶なくて、どうやって家に帰ったのかわからないのよね。そして余計なこと喋ってないか不安」
「そ、そんなにすごいのか…」
「えぇ、すごかったわ。そして乗せ上手なの。だから本当に気を付けてね」
「忠告ありがとう、気をつけるわ。じゃあお疲れ」
佐藤が真剣に言うなんて、よっぽどすごいんだろうな。俺は佐藤よりも酒弱いし、なるべく飲まないように気を付けないとな。
もし動けなくなったら、尊くんまた泊まらせてくれたりしないかな。なんて流石に烏滸がましいか。
そう思いながらも俺は一応尊くんに連絡した。メールだけじゃわからないけど「待っています」という言葉に、何もなくても帰りたくなった。今朝も顔を見たのに、昨日1日一緒にいたせいかもう会いたいだなんて、恋ってすごいんだなと思いながら、ロビーに向かった。
「二階堂さん、何か嬉しいことでもありました?」
「いや、何でもない」
「そうですか?じゃあ行きましょう。この前佐藤さんと行ったお店なんですけど、すごく美味しかったので二階堂さんとも行きたかったんです」
「それは楽しみだな」
うっかりニヤけた顔のまま四乃のところまできてしまった。流石に相談事のある四乃の前でこれは失礼すぎる。まずは四乃の悩みを聞いてやらないとな。と思っていたが、四乃も何だかニヤけていた。
道中、四乃は悩み事なんてなさそうに楽しそうに話していた。これは普通に飲みにきたかっただけなのか、それとも空元気というやつなのか、判断が難しい。
「ここです!個室の雰囲気が隠れ家みたいでいいんですよ」
通された個室は、豆電球だけのほのかな光が照らす、趣のある部屋だった。小さなちゃぶ台と2枚の座布団、男2人がギリギリ座れるくらい狭く、出口は割としっかり閉まる空間だ。扉を閉めると外の音は一切聞こえなくなった。秘密基地のようで心がくすぐられるが、本当に佐藤とここに来たのか?流石に男女2人で、しかも先輩後輩でこの部屋はなかなか選ばないチョイスだった。
「確かにすごい個室だな。秘密基地感が、すごくいい」
「そうですよね、聞かれたくない話とかにちょうどいいと思うんです」
そう呟く四乃からは先ほどまでの笑顔が消えていて、悩み事の深刻さを感じた。
しかしこういう場合どうやって切り出せばいいのか、俺は分からなかった。考えた末、俺が導き出した答えは1つ、とりあえず飲ませて言いやすい雰囲気を作ろうという何とも浅いものだった。
「とりあえず飲もう。この前飲んだ時に良かったものとかあるのか?」
「そうですね、これとこれは美味しかったです。和食系なので日本酒がオススメです」
「じゃあ、日本酒とつまみを何点か四乃が食いたいもの頼んでいいぞ」
「それじゃあ…」
四乃は日本酒と相性の良さそうな惣菜をいくつか頼み、食べ合わせについても教えてくれた。四乃は酒好きで、酒に合うおつまみをよく作るようになったことで、より美味しい組み合わせを発見していったそうだ。話し方も勧め方も上手で、流石のプレゼン力だった。
「四乃早いな、今準備するから少し待っててくれ」
「気にしないでください。俺ロビーで待ってますね」
「悪いな、すぐ行くから」
元気よく手を振って走る四乃は日中の真剣な雰囲気を感じさせない、いつもの子犬のような四乃だった。その落差に俺は少し困惑していた。
「まぁ、今から聞いてみるか」
「四乃と飲みに行くの?」
「うわぁっ!?」
カバンに荷物を入れていると、気配なく佐藤が背後に立っていた。
「ビックリしたな、佐藤か」
「急いでるところ悪いけど、忠告だけしにきたの」
「え、もしかして俺やってない仕事あった?」
「そうじゃなくて、今から四乃と飲みに行くんでしょ」
「そ、そうだけど」
「じゃあ気を付けて。あの子すごいザルだった。私も飲める方だと思ってたけど、別格だわ。飲んだ日の最後の方記憶なくて、どうやって家に帰ったのかわからないのよね。そして余計なこと喋ってないか不安」
「そ、そんなにすごいのか…」
「えぇ、すごかったわ。そして乗せ上手なの。だから本当に気を付けてね」
「忠告ありがとう、気をつけるわ。じゃあお疲れ」
佐藤が真剣に言うなんて、よっぽどすごいんだろうな。俺は佐藤よりも酒弱いし、なるべく飲まないように気を付けないとな。
もし動けなくなったら、尊くんまた泊まらせてくれたりしないかな。なんて流石に烏滸がましいか。
そう思いながらも俺は一応尊くんに連絡した。メールだけじゃわからないけど「待っています」という言葉に、何もなくても帰りたくなった。今朝も顔を見たのに、昨日1日一緒にいたせいかもう会いたいだなんて、恋ってすごいんだなと思いながら、ロビーに向かった。
「二階堂さん、何か嬉しいことでもありました?」
「いや、何でもない」
「そうですか?じゃあ行きましょう。この前佐藤さんと行ったお店なんですけど、すごく美味しかったので二階堂さんとも行きたかったんです」
「それは楽しみだな」
うっかりニヤけた顔のまま四乃のところまできてしまった。流石に相談事のある四乃の前でこれは失礼すぎる。まずは四乃の悩みを聞いてやらないとな。と思っていたが、四乃も何だかニヤけていた。
道中、四乃は悩み事なんてなさそうに楽しそうに話していた。これは普通に飲みにきたかっただけなのか、それとも空元気というやつなのか、判断が難しい。
「ここです!個室の雰囲気が隠れ家みたいでいいんですよ」
通された個室は、豆電球だけのほのかな光が照らす、趣のある部屋だった。小さなちゃぶ台と2枚の座布団、男2人がギリギリ座れるくらい狭く、出口は割としっかり閉まる空間だ。扉を閉めると外の音は一切聞こえなくなった。秘密基地のようで心がくすぐられるが、本当に佐藤とここに来たのか?流石に男女2人で、しかも先輩後輩でこの部屋はなかなか選ばないチョイスだった。
「確かにすごい個室だな。秘密基地感が、すごくいい」
「そうですよね、聞かれたくない話とかにちょうどいいと思うんです」
そう呟く四乃からは先ほどまでの笑顔が消えていて、悩み事の深刻さを感じた。
しかしこういう場合どうやって切り出せばいいのか、俺は分からなかった。考えた末、俺が導き出した答えは1つ、とりあえず飲ませて言いやすい雰囲気を作ろうという何とも浅いものだった。
「とりあえず飲もう。この前飲んだ時に良かったものとかあるのか?」
「そうですね、これとこれは美味しかったです。和食系なので日本酒がオススメです」
「じゃあ、日本酒とつまみを何点か四乃が食いたいもの頼んでいいぞ」
「それじゃあ…」
四乃は日本酒と相性の良さそうな惣菜をいくつか頼み、食べ合わせについても教えてくれた。四乃は酒好きで、酒に合うおつまみをよく作るようになったことで、より美味しい組み合わせを発見していったそうだ。話し方も勧め方も上手で、流石のプレゼン力だった。
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