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悶え苦しむ…遥
しおりを挟む俺が密かに亜耶から、これから遣りたいことや行きたい場所を聞き出していると、ジャケットに入れていた携帯が震えだした。
ジャケットから携帯を取り出して、画面を見れば" 湯川透" と表示されている。
あぁ、そう言えば。
と思い出し。
「亜耶。悪いが、電話に出てもいいか?」
亜耶に訪ねるとコクりとゆっくりと頷く。
俺はその了承を得ると電話に出る。
「透どうした?」
画面通知のままの相手だと思い、声を出せば。
『あっ、はる兄? 亜耶ちゃん何処の病院なの?』
と久し振りに聞く真由の声に驚く。
今日、学校あったよなぁ。もう、透と合流したのか。
「そう言えば、伝えてなかったな。病院は、藤原総合病院。ただ、今は面会謝絶になってるから、病院についたら連絡してくれ。迎えに行くから。」
そう口にしたら、怪訝そうな顔をして此方を見てくる。
『うん、分かった。たぶん三十分後位には着くと思うけど、一度連絡入れるね。それから、亜耶ちゃんって、今だにプティングが好物だったりする?』
真由の言葉に俺は自宅の冷蔵庫の中を思い出し。
「あぁ、好きだな。」
そう答えると。
『ん、分かった。じゃあまた後でね。』
真由はその一言を残し、通話を切った。
俺は、切られた電話をまじまじ見ながら、
怒涛の質問に答え終わると切られるって……。
まぁ、真由がそれだけ心配してるってことだろう。
目線を上げると、亜耶が怪訝な顔をして此方を見てくる。
目が合うと、何か言いたそうな顔をしていた。
まぁ、面会謝絶に付いてだろうが……。
「亜耶の入院している理由が、事故案件だから、許可があるものしか入れないんだよ。だから、身内の俺が向かえに行かないと真由とは会えないよ。」
それだけの理由じゃないけどな。
それで納得するわけ無いだろうけど、それでも無理にでも納得して貰わないとな。
亜耶の顔が如何にも納得いかないって顔だが、仕方ないじゃないか犯人が来るかもと思えばこその対応だし。
不機嫌のまま。
「真由ちゃんが来るの?」
と聞いてきたから。
「あぁ。今の連絡、真由からだった。亜耶の大好物を持って来るって。」
真由に言われたまま伝えれば、忽ち嬉しそうな笑みを浮かべる。
「よかったな」
俺は、亜耶の頭をポンポンと叩く。
「亜耶は、何時も通りで居てくれればいいんだからな。」
口に出して伝えると、ポカンとした表情になる。
そんな顔も可愛いな。
何て思いながら。
「口を開けたまま固まるなよ。」
ってクスクス笑えば、顔を真っ赤にして口をパクパクさせる亜耶。
そうやって、何気ない仕草で俺を癒してくれる亜耶が好きなんだ(本人無自覚だろうけど)。
「……ありがとう。」
亜耶が呟く言葉を聞き。
「何?」
聞こえなかったように聞き返すと。
「ううん、何でもない。遥さんが居てくれてよかった。」
顔を俯かせ、俺の袖をチョンと摘まみながら、此方を伺うような目で見てくる亜耶。
あ~あ。
もう、何でこんなに可愛いんでしょうね、うちの奥さまは……。
俺、理性をすっ飛ばして、悶えていいか。
って、ダメだ。
亜耶の見てる前では流石に無理だ。
あー、もう、どうてくれるんだよ。
ほんと、誰かどうにかしてくれ~。
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