偽りの姿(仮)

麻沙綺

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16話 心配…冬哉side

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  俺は授業が終わると直ぐに教室を出た。


  あいつ、また無理してる。
  俺が、ずっと気にしてる女の子。
  夢中であいつを探す。

  すると、目の前をあいつが歩いていた。

「幸矢!!」
  俺は、つい大声で彼女を呼び止めた。
  幸矢は、振り返り驚いた顔をする。
  俺は、幸矢の傍に行くと。
「何? 兄さん」
  笑顔で俺に答える。
  手首、痛い筈なのに我慢しやがって。
  そんな彼女を見てられなくて。
「お前。さっきの授業で手首やっただろ?」
  って問い質す。
  すると彼女の顔色が変わった。
 
  何でわかったのだろう?

  って顔を俺に見せる。
  誰にも気付かれないように隠すのが上手い彼女だ、俺以外のやつが気づくはずもない。
「もしかして見てた?」
  幸矢が、軽く俺を睨んでくる。
「ああ、偶然な。ほら保健室に行くぞ。」
  俺は、彼女の有無もとらず肩を押して保健室に向かった。



  保健室には誰も居なく、俺は使いなれたものを次々と出す。
「ほら、手を出せ」
  彼女は、渋々ながら痛めた方の手を出す。
「女の癖に無理しやがって……。こんな細い腕してるのに誰にも気付かれないんだな。」
  華奢な手首。
  俺が少し力を加えたら折れるんじゃないかと思うほどだ。
「わかるわけないじゃん。長袖だし……。」
  って、苦笑して答える幸矢。
「足じゃなくてよかったよ。」
  足だったら、絶対あいつが肩を貸してる。そして、気付くだろう。幸矢が、女の子だって……。
  俺は、彼女の手首に湿布を張り包帯を巻いた。
「幸矢。学校に居る間だけでも、女として過ごすことできないのか?」
  俺は、彼女の身が心配でそう口にした。
「このままだと、俺の気が休まらない……。」
  これも本当の事だ。
  彼女に何かあったらと思うとゆっくりとしてられないのだ。
  だが、彼女から返ってきた言葉は。
「そうしたいんだけど、この学校に従兄弟が通ってるらしいんだ。だから、下手に動くわけにはいかないんだ。」
  って、顔を曇らせて言う。
「そうなのか?」
  俺は確認するがごとくに聞き返すと幸矢は、小さく頷いた。
  厄介な……。
「父のお姉さんの子がこの学校の二年生に居る。顔も見てるから、今下手に動くのは得策ではないんだよ。」
  二年生?
「おばさんは、その事知ってるのか?」
  俺の言葉に幸矢は首を横に振る。
「そっか……。それじゃあ、俺はどうしたらいいんだ?」
  どう、幸矢を守れば良いんだ。

  元々は、女の子として入学する筈だった幸矢。だが、履き慣れないスカートが嫌で男子の制服で現れた。それが、従兄弟も同じ学校で向こうは幸矢を男だと思ってる。ってことは、女子で過ごすには、難しいってことだろうな。

「兄さん?」

  幸矢に呼ばれて、我に返り俺は彼女を引っ張り自分の腕に閉じ込めた。
  そして。
「幸矢……。」
  彼女の名前を呼んで可愛らしい唇に口付けた。
  彼女は、拒むことなく受け入れてくれてる。だが。
「幸矢。キスする時ぐらい目を閉じろよな。」
  彼女は、目を見開いたまま受け止めていた。
  何か、考えてる風にも思えた。

「幸矢…。俺は……。」

  ガラリ。
  
  突然扉が開く音。
  間が悪いな。
  何て思いながら、焦ってしまう。
  
  俺は、慌てて幸矢を離した。
「あら、冬哉君じゃない。どうしたの?」
  先生の言葉で、俺は我に返った。

  俺、今何をした?

  イヤ、何を言おうとしたんだ。

「あっ、すみません。先生が居なかったので、勝手に使わせてもらってます。」
  俺は、事後報告を彼女に言う。
「良いのよ。怪我したの綾小路くんだったの。」
  俺の影で隠れてた幸矢を見て驚いたように言う。
  幸矢の事、見えてなかったのか。
  何故か、ホッとした自分が居る。
「冬哉君。また、宜しくね。」
  先生が、意味深な言葉で言う。

  まぁ、この宜しくは、保険委員の話だろう(一様委員長だしな)。
「あっ、はい。もちろんです。」
  俺は、普通に受け答えた。
「では、僕はこれで。」
  幸矢が突然立ち上がり、保健室を出て行く。
「ちょ、っと、待て幸矢」
  俺は、慌てて声をかけるが、振り返ることなく出て行く。

「冬哉君。保健室利用の用紙の記入宜しく。」
  先生はニコニコしながら俺に用紙を差し出す。
  俺は、それを受け取り用紙に記入して、先生に返すと保健室を出た。












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