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15話 口付け
しおりを挟むハァー。
何やってるんだか……。
制服に着替え、教室に戻る途中で。
「幸矢!」
って、大きな声が響く。
振り返ると冬哉兄さんが血相を変えて走って来る。
廊下は、走っちゃダメなんだけど……。
心で呟きながら。
「何? 兄さん」
私は、そんな兄さんに笑顔を向ける。
「お前。さっきの授業で手首やっただろう?」
って、心配そうに聞いてくる。
何で、知ってるんだろう?
誰も気付かなかったのに……。
「もしかして、見てた?」
私の言葉に。
「ああ。偶然な。ほら、保健室に行くぞ。」
罰の悪そうな顔を一瞬したかと思うと、私の背中を押した。
保健室に着き、中に入ると先生の姿は無かった。
兄さんは馴れた風に備え付けられてる棚から湿布と包帯を取り出す。
勝手に使っていいもんなの?
そう思い、首を傾げてると。
「ほら、そこに座れ。」
顎で、傍に在った椅子を指す。
言われるまま座ると。
「捻った方の手、出せ。」
ぶっきらぼうに言う兄さん。
私は、痛めた方の手を出す。
「女の癖に無理しやがって……。こんな細い腕してるのに、誰にも気付かれないんだな。」
悪態を告げながら心配げな顔で、私を見る。
「わかるわけ無いよ。長袖だし……。」
ポツリと呟く。
夏だけど華奢な腕を隠すために長袖の体育着を着ている。
「足じゃなくてよかったよ」
?
えっ……。
どういう意味だろう?
兄さんが、黙々と手当てし出す。
この沈黙、なんか怖いけど……。
「幸矢。学校に居る間だけでも女として過ごすこと出来ないのか?」
真顔で兄さんが聞いてきた。
エッ……。
それって……。
「このままだと俺の気が休まらないだろうが……。」
って、苦悶する兄さん。
なーんだ。
へっ、あれ、何で、ガッカリしてるんだ?
私。
「そうしたいんだけど、この学校、従兄が通ってるらしいんだ。だから、下手に動くわけにいかないんだ。」
直ぐに難癖を付けてくる従兄。
「そうなのか?」
兄さんの言葉に小さく頷いた。
私も、入ってから気付いたんだ。
「父のお姉さんの子がこの学校の二年生に居る。顔も見てるから、今下手に動くのは、得策では無いんだよ。」
家で顔を会わせる度に虐めてきた従兄。
何時、私の寮の部屋にやって来るか、気が気じゃない。
「おばさんは、その事知ってるのか?」
その言葉に私は、首を横に振る。
「そっか……。それじゃあ、俺はどうしたらいいんだ?」
と苦言を呈する冬哉兄さん。
どう言う事だろう?
冬哉兄さんは、何に悩んでいるんだろう?
手当ては、終わってるのに手は放してもらえない。
「兄さん?」
不審に思って私が、声を掛けるといきなり腕を引かれて、兄さんの腕の中にスッポリとおさまった。
エッ……。
何?
何が……。
「幸矢……。」
って、言ったかと思ったら柔らかな物が、唇に押し当てられた。
何が起こったの?
私は、どうしたら良いのか判らずにいた。
この口付けは、どう言う意味があるんだろう?
昨日、祥としたのとは違う。
何かが、違うんだ。
一体、何だろう?
「幸矢。キスする時ぐらい、目を閉じろよな」
冬哉兄さんの少し掠れた声が、囁くように聞こえる。
「幸矢……。俺は……。」
って、兄さんが言い掛けたと時だった。
ガラッ……。
保健室の入り口が開いた。
「あら、冬哉君。どうしたの?」
養護教諭の先生が冬哉兄さんを見て、そう言う。
冬哉君?
普通、先生って名字呼びだと思うんだけど……。
なのに親しげな呼び方だよね。
「あ、すみません。先生が居なかったので、勝手に使わせてもらってます。」
先生に向かって生真面目に答える。
「良いのよ。って、怪我したの綾小路くんだったの?」
私が怪我したらダメなの?
意外そうな先生の声で、不振にに思えてしまうのは、何でだろう?
「冬哉君。また、よろしくね。」
先生が、意味深の言葉を述べる。
「あっ、はい。もちろんです。」
兄さんもニッコリと笑顔で答えてるし……。
何なんだ?
この微妙な空気は?
私は、お邪魔みたいだな?
この場所に居ない方が……。
そう思ったら。
「では、オレはこれで。」
そう告げて、保健室を出た。
「ちょ、待て、幸矢!」
私の背後で、冬哉兄さんの声が響いた。
※明けましておめでとうございます。
読んで頂き有り難うございます。更新ゆっくりですが、最後までお付き合いしていただけると嬉しいです。
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