偽りの姿(仮)

麻沙綺

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34話 見つけた…成瀬side

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  俺は、幸矢ヤツを連れて駅前のカフェに連れて行くことにした。

  店に入ろうとした時。
「ごめん、成瀬君。電話してきてもいいかな?」
  後ろに居たヤツが、そう声をかけてきた。
「えっ、ああ、いいよ。」
  俺は、そう答えて店の中に入って行く。

  以外と空いていて、窓側の奥が空いていたので、俺はそこに腰を下ろした。


「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
  店員が聞いてきたから。
「連れが来てから一緒に注文します」
  そう伝えれば、お冷やを置いていった。
  本の数分して、ヤツがドアベルをならして中に入って来る。
  直ぐに俺に気付き、こちらに向かって来て、向かいの席に腰を下ろした。


  しかし、こいつ、本当は女だったんだな。
  女子の制服、似合ってるじゃん。

  何て思ってたら。
「待たせてごめんね。」
  と、何時も聞いていた声と違う声(少し高めの)で、言うから戸惑うが。
「否、構わないよ。」
  俺は、冷静に返した。

「…で、何で、此処に居るんだ? そもそも、あの日以来、人が変わったようになってるんだ?」
  俺は、疑問に思ってることを矢継ぎ早に言えば。
「その前に注文しちゃわない?」
  彼女(?)がそう言い出した。
  彼女の視線をたどれば、店員が此方をジッと睨んでいた。
  その視線に驚きつつ。
「あぁ、そうだな。」
  そう返して俺は、店員を呼び出し。
「俺、アイスコーヒー。」
「私は、アイスミルクティー。」
  各々注文した。

  って言うか、こいつが "私" って言ってるのって、なんだか新鮮だ。
  店員が繰り返し注文を聞いて立ち去ると。
「…で、どういう事か、説明して。」
  俺は、間髪をいれずそう聞き出した。
「あの日、水恐怖症って言ったのは、嘘。私は男じゃないから……。水泳の時だけ私は、図書室で自習してたの。これは、学園長の許可もあるから…。その時に冬哉兄さんに告白されて、でも、男のままでは応えようがないし、ましてや、成瀬君の事も宙に浮かせたままなのに……。これでいいのかって、悩んだんだ。」
  幸矢は、俯きながら、あの日の事を話してくれる。
  だが、気になるのが。
「その前に確認させてくれるか? お前は、女なんだよな。」
  そう、今目の前に居る幸矢が偽りない姿なのかと。
「女だよ。戸籍上は男になってるけど、生まれた時から女だよ。」
  感情の無い声で、彼女は告げた。
「それで納得した。高津先輩がお前の事を凄く気にかけていた理由が。」
  あの人が心配してたのは、こいつが女だと知ってたからなんだな。
「話、戻しても?」
  彼女が、促してくる。
「あ、うん。」
  俺が頷いたときに注文していた品物が届いて、それを一口啜った。彼女も同じように啜る。
「その日の内にお爺様とお父様に相談しに家に戻ったら、私にそっくりな男の子が家に居てね。その翌日から、その子が私の代わりに学校に行くようになった。それと同時に私の居場所が無くなった。彼が、私の名前を語る以上、同じ名前ではいられないしね。……で、私の心も壊れかけた。」
「壊れかけたって……。」
  彼女の目は虚ろっていて、今にも壊れるんじゃないかって、思わされる。
  そんな彼女を俺は守りたい。
  そう思った。
「うん。自分が自分でなくなるって言うのかな。綾小路幸矢は、一人しか要らない。だったら、私は、誰なんだろう?自分の存在価値がなくなったんだって思っちゃたらね。心がね死にかけてた。」
  彼女が、似せ笑いを浮かべて言う。
  それを見ていられなくて。
「無理して笑うな。お前の存在価値は、俺が示してやるよ。どれだけ、俺がお前を欲しているかでな。」
  俺は、彼女を失いたくなくてそう言葉にした。
「えっ……。」
  彼女は、小さく驚いた声をあげる。
「俺、あの日以来、お前に近付かなくなってたよ。高津先輩も一度だけ来て、直ぐにわかったみたいだ。それ以降クラスに来ることもなくなった。」
  俺は、彼女が来なくなってからの事を話した。
「しかし、こうして会えて、よかった。俺、告白したままもう会うことが出来ないんじゃないかって、思ってたから…」
  ポツリと口から本音が漏れた。
「ごめんね。心配かけたよね。今はこっちで穏やかに過ごせてるから、安心して。」
  彼女が、フワリを笑顔を見せる。
  その顔に安堵しながら。
「幸矢。その喋り方が、本来の喋り方なのか?」
  そう聞いていた。
「そうだよ。家に居る時は、常に自分の事を殺してきたから。 "女は捨てろ" って散々言われ続けてきたから、本来の喋り方が出きる相手が冬哉兄さんだけだったんだ。それ以外の所で喋れば、何処かでお弟子さんに見られてるかわからないから、出来なかった。ってのが事実かな。」
  寂しそうに言う彼女。
  家の事情にがんじがらめにされて、身動きとれなかったんだな。
「お前、何時、気を抜くんだよ? そんなんじゃ、息が詰まるだろ?」
「そうだね。幼少の時からこんな事してたからさ、慣れちゃってたんだね。何処で、誰が見てるかわからない分、感覚が鋭くなっていくんだから、武道にはもってこいだったかな」
  何故か、遠い目をして冷めざめとした声で彼女が言う。
  そんな彼女に。
「な、幸矢。俺のものになら無いか?」
  って、言ってしまった。
  俺自信も驚いたが、彼女はもっと驚いた顔をして俺を凝視してくる。
  俺は、焦りから。
「幸矢。お前は、柔道と剣道、どちらが得意なんだ?」
  そんな事を口にしてた。
「どっちもいけるよ。ただ、大会とかに出るのは勘弁して欲しいかな。直ぐにばれて、連れ戻されるだけじゃすまないと思うから。」
  彼女は、不思議な顔をしながらそう答えた。
「それは、そうかもしれないが……。大会に出るんじゃなくて、家の道場で教えることって出きるか?」
  少しだけ興味を持ってくれたみたいで、さらに言葉を告げた。
「家も、幸矢の所と同じでさ。道場をやってるわけ。で、師範が足りなくて、夏休みの間だけでも良いから、見てくれないか?」
  俺の言葉の追撃に。
「ゴメン。母と約束してるんだ。こっちに居る間は、武道の事を忘れるって。」
  申し訳なさそうな顔をして、謝ってくる。
「そっか。それじゃあ、無理だな。だけど、お前はこのまま逃げ隠れしたままでいいのか?」
  俺は、幸矢に改めて聞いた。
「う~ん、どうだろうね。母も病弱だし、かといって簡単に戻れるとは、思えないし……。表舞台に立っても、直ぐにばれちゃうだろうし…」
  彼女の返答に。
「だったら、オレの婚約者として、いればいい。」
  そう俺は、答えていた。
  だって、こいつの居場所が、何処にもないと感じさせられたから。
  目の前に居るにもかかわらずだ。
「何せ、俺は未だにお前の事が好きなんだ。幸矢が、俺の前から突然居なくなって、焦った。でも、今、こうして出会えたんだ、これも運命だと思う。だから……。」
  もう一度告白してるみたいで、恥ずかしいが言うしかないと思ったんだ。だが。
「成瀬君の気持ちはありがたいけど、私は、それを受ける資格を持ち合わせていません。今の私は、庶民であり、ただの小娘です。あなたのような名家の人と婚姻を結ぶなんて、とんでもありません。」
  丁寧に断ってきた。
  資格って……。
  そんなの必要ないと思うが……。
  ここで、挫けるわけにいかない。
「幸矢。返事は急がないよ。これ、俺の携帯番号。何時でも電話してくれればいいから」
  俺は、メモを幸矢の前に置く。
「じゃあ。」
  そう言って、伝票を手にして、席を立った。


  本当に、何時でもいいんだ。
  何かあったら、俺を頼って欲しい。
  そう思って、渡したのに……。






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