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45話 病室内…成瀬side
しおりを挟む彼女の病室は、個室だった。
彼女はベッドに横たわって、点滴を受けていた。
彼女の顔色は、最後に会った時よりも白く、頬も何処と無しか痩けているように感じる。
一体、彼女の身に何があったというのだ?
俺が疑問に思っていれば。
「幸矢……。やっぱり、無理をしたのね……。」
と何とも言えない声音が聞こえてきた。
どういうことだ?
その時。
コンコンコン。
ドアをノックされた。
思考が一瞬で飛んだ。
「はい。」
母親が返事を返し、ドアが開いた。
中に入って来たのは、白衣を着た男性だった。
「幸矢さんの担当医東雲です。幸矢さん、相当無理されたようで、熱中症と栄養不足ですね。点滴でその分を補っています。目が覚めたら胃が驚かないようにお粥をお出ししますね。」
淡々と説明する担当医師に。
「はい。有り難うございます。」
母親が頭を下げる。
「お大事に。」
医師はそれだけ言って、部屋を出ようとし俺を一瞥してから、出て行った。
否、何の挑発だ?
疑問に思いながらも、先程の言葉に違和感を覚える。
熱中症は、塩分や水分を補給を怠っていたのだろうと推測できるが、栄養不足って……。
飯、食って無かったのか?
家に戻ってから、今までずっと、か?
そんなのあり得ないだろう?
「やはり、無理してたのね。」
さっきも言っていたが、無理とは?
「祥くん。心配させちゃってごめんなさいね。」
申し訳なさそうに言う母親に。
「どう言う事ですか?」
聞くのは不味いかと思ったが。
「祥くんには、伝えておいた方が良いわね。」
と自己完結したかと思えば、ゆっくりと話し出した。
連れ戻された日に祖父と喧嘩して、反省室なる部屋に入れられ、その間一切の飲食禁止。幸矢は、今日救急搬送されるまで、その部屋で過ごしていたとの事だ。しかも、直射日光を諸に受ける場所だと言う。
何やってるんだ?
喧嘩なら、さっさと謝れば良いことだろうが。
こんなになるまですることなのか?
「祥くんには、解らないかもしれないわね。幸矢が、何で抵抗しているかなんて……。それでも、この子は抗いたかったのよ。自分の存在意義を示したかっただけなのよ。」
って、複雑な顔をして言う母親。
「あれだけ心配してくれたのに、ただの喧嘩で……。」
本当に……。
だけど、幸矢にとっては、大切な事だったんだろうとは思う。
学校に居た時の、何処と無く寂しそうな笑顔は、この事だったのかと思うと胸が痛む。
まぁ、何にせよ暫くの入院で済むのなら、良かったのかもしれない。
夏休み中だし、な。
「まぁ、幸いにも今は夏休みですし、こいつの傍に居れますがね。」
こいつから離れたら、また何処かに言ってしまいそうで、不安になる。
「祥くん、もしかして……。」
嬉しそうに言う母親は、確信を持ってるようで。
「ええ。俺は幸矢さんに惚れてますよ。」
って、何宣言してるんだ俺。
顔、熱い。
俺は、母親から視線を逸らし手で顔を仰ぐ。
「フフフ……。そうなのね。家の事がなければ、諸手を上げて喜べたのに……」
と小声だが聞こえてきた。
「俺は、その事も承知の上ですよ。」
そう言葉にすれば、驚かれた。
「この子が話したの?」
「えぇ。幸矢さんの口から直接聞いてます。」
「そっか……。この事は、一切の他言無用でお願い致すます。」
真顔で言われたが、元から言うつもりはない(言ったら、敵が増えるのが目に見えてるからな)。
「もちろんです。」
俺は頷いた。
「幸矢は、祥くんに出会って変わろうとしてるのね。」
ポツリと聞こえてきた言葉に俺は嬉しくなった。
俺が、幸矢を変えれることに。
不安もある。本当に変えることが出きるのかと……。
それに冬哉の存在。
あの人は、幸矢が唯一自分を偽らずに居られる人だ。
俺は、あの人に勝てるのだろうか……。
「幸矢が起きた時、祥くんの顔を見て驚く顔が見たいわ。」
揶揄するように言う母親に。
「揶揄しないで下さい。」
俺は、母親から視線外す。
「少し席筈けど、幸矢の事お願いできるかしら。」
母親はそう言って、ドアに足を向ける。
「はい。目が覚めたら、ナースコールで良いですよね。」
確認すれば。
「うん。お願いね。」
と返ってきた。
母親が出て行くと、俺はベッド傍にある椅子に座った。
俺、お前に振り回されてるな。
惚れた弱みかもしれないが、それでも俺はお前が気になるんだ。
幸矢、早く元気になれ。
そして、あの笑顔を俺に見せてくれ。
俺は、そう祈るしかなかった。
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