ハイスペックな彼が地味子の私を構ってきます

麻沙綺

文字の大きさ
30 / 56

30

しおりを挟む


 熱中し過ぎて、気付けば十九時前。
 窓の外に視線を向ければ、真っ暗闇で雨が降り出していた。
 当然だが、教室には自分以外誰一人残って居ない。

 あ~ぁ、やちゃった。
 しかも、雨まで降ってるし……。
 置き傘してたと思ったんだけど、教室内に設置されている傘立てには、一本も残ってない。この雨で、持っていかれたんだろう。

 ハァ~。
 落ち込んでても仕方ないか。
 帰ろ。

 書き終えた用紙をファイルに仕舞い込み、筆記用具と一緒に鞄に居れる。
 窓の施錠を確認して鍵を手に後ろの出入り口の鍵を閉める(後ろは、室内からじゃないと鍵が出来ない)。自分の席に置いていた鞄を手にして前の出入り口に移動し、電気のスイッチを切り戸を閉めて鍵を掛ける。再度後ろの戸に行き鍵が掛かってるのを確認してから、職員室に鍵を返しに向かった。


 下駄箱でスリッパから下靴に履き替える。
 数歩移動して、空を見上げれば、シトシトと降り続く雨。
 止みそうもない。
 明日は土曜日だし、濡れても乾かす時間はたっぷりある。
 そう決意をして一歩踏み出そうとした。

「珠稀、ちょっと待って!」
 背後から聞きなれてきた声がかかり、振り返ると彼が焦った顔をしていた。
「な、何で居るの?」
 驚いて、そう口に出ていた。
「何でって、俺も部活が終わったところだ。偶々、珠稀がまだ残ってるのを靴箱を見て知ったから、待ってたんだよ。一緒に帰ろうと思って。」
 照れ臭そうに話す彼。
「だけど、珠稀全然俺に気付いてないし、雨の中傘を挿さずに出ようとするから、慌てて止めたんだよ。」
 あっ、雨の中どうやって帰ろうかって、考えてたから周りが見えてなかった。
「駅までだけど、一緒に行こう。俺、傘持ってるし…な。」
 手にしていた傘を私に見せつけるように言う。
「いいの?」
「良いよ。一緒に入るのが嫌なら、この傘を貸すから、珠稀が挿して帰ってくれても良いよ。」
 彼は持ち手を私に差し出すように向けてきた。
「そんなの、悪いよ。だったら、一緒に入ってくれますか?」
 彼の傘なのに、そう訪ねていた。
「喜んで入れさせて頂きます。」
 って、勢い良く言うから、思わず吹き出しちゃった。
 彼も私につられてか、笑みを溢す。
 その破顔は、ヤバイですって……。
 私の心臓、ドクドクと激しく波打ってる。
 私を殺す気ですか?

 彼が、傘を挿すと。
「珠稀、入って。」
 彼の言葉に促されるように横に並んだのだが。
「それじゃあ、濡れるだろ。」
 そう言うと、私の肩を抱き寄せる。
 その手の温もりが、服越しからも感じられて、ドキドキが加速する。
「ほら、行こう。」
 彼の言葉に頷き足を動かす。

 駅までの本の僅かな時間。
 彼は、私を楽しまそうと色々な話をしてくれた。
 彼の気遣いと優しさを間近で感じて、また心惹かれているのが解る。

 この気持ちを打ち明けたい!

 何て思いつつも、まだ勇気が持てない自分がもどかしかった。











しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

処理中です...