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7章 本音と暴露
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『お兄ぃ』と、たかのっぽくんの事をそう呼ぶ美少女の登場。
予想外の事態に、放心状態になる大人3人組。だが、そんな情けない大人達とは反対に、たかのっぽくんの行動は素早かった。
「すいませんっ、これについてはまた今度で……っ」
そう俺達に向かって頭を下げると、瞬時に少女の方へ駆け寄り、その腕を取った。そうしてそのまま逃げるように、俺達の前から去って行った。
「ちょっとお兄ぃっ、乱暴っ! 腕痛いんですけどっ」と、少女が文句を言う声が遠くから聞こえる。ついで「うっさい、お前、今は黙ってろっ」と、いつもの丁寧さからは考えられないたかのっぽくんの声も聞こえてくる。
しかしそれ以上の会話は、夜の暗闇に2人の姿が溶け消えてしまうのと一緒に、聞こえなくなったのだった。
ぽかんと、たかのっぽくんとその妹? らしき少女が去っていった方を見つめながら、俺達3人はしばらくその場に立ち尽くし続けた。
あまりにも出来事が急展開すぎて、誰もがその事情をきちんと把握しきれなかったのである。
「……お兄ぃ、だってね」
ふいに、拓弥がそう口を開いた。ぼんやりとした声音だった。
「おう……」と優作もあっけに取られた声で頷き返す。俺もこくりと無言で頷き返す。
「たかのっぽくん……、妹、いたんだね」
「だな……」
「……俺、たかのっぽくんって、一人っ子か弟ポジの子だと思ってた」
ぽつりと思った事をそのまま俺がこぼせば、「「わかる」」と2人が揃って頷き返してきた。
(イケメンの妹は、やっぱりイケてる美少女なんだな……)
さすが、ドイツ人でスウェーデン人で日本人のクォーター家系は違うぜ。
外国人って、なんで住む国が違うだけのはずなのに、あんなに整った顔立ちしてるように見えるんだろうな。本当に同じ地球に住む同じ生物なのかと、たまに疑ってかかりたくなるものがある。
(って、いや、今気にしなくちゃいけないのはそこじゃないだろっ)
いや、たかのっぽくんに美人の妹がいたのは、すっごい気になる点だし、なんならたかのっぽくん、妹にはあぁいう乱暴な口調で話すんだなとか、そんな事も思ったりするけど、今、1番気にすべきところはそこじゃない。
(あの子、たかのっぽくんに対して、『やっと見つけた』って言ってたよね)
やっと見つけたって事は、たかのっぽくん、家族に探されるような立場だったって事? それって一体どういう事なんだろう。
『俺、実は――』そう意を決したように口を開いた、たかのっぽくんの姿が頭の中を横切る。
あの時、はたしてたかのっぽくんは、何を言おうとしていたのか。
その答えは、当然ながらまったくもって想像がつかない。
「……帰るか」
優作が言った。「そう、だね」と拓弥が頷く。
俺も「うん」と頷き返す。そうして駅の方へ向かって、3人でトボトボと歩き始める。
先刻のような微妙な空気はもう、俺達の間にはなかった。
その代わりに、なんだか途方もない混乱と疲労だけが、俺達の間に広がっていたのだった。
******
結局、その日俺が家に着いたのは、日を越えるか否かの頃だった。
風呂に入る気力もわかず、そのまま敷きっぱなしの布団の上へバタンキュー。あ~、明日が休みでよかった、と考えながら、俺の意識は疲労と眠りの向こうへと吹っ飛んでいった。
翌日、目が覚めたのは昼頃の事だった。
とりあえず予定らしい予定もないので、作詞の勉強をしながら過ごした。伝えたいテーマだとか、印象強く残る歌詞の特徴とか、なんかそういう知識を頭に詰め込みつつ、ほぼほぼ完成に近づいてきた楽曲のメロディーを思い出して、歌詞の制作に取り掛かってみる。
が、納得いくものはできず、俺の綺麗とも汚いともいえない文字が書かれたゴミだけが増えていく始末だった。
土日を挟んでも、たかのっぽくんからの連絡はなかった。そのせいか、いつもは楽曲作りで盛んに盛り上がっているはずのグループチャットもとても静かで、通知のつの字も来ない2日間となった。
(なんか、バンドを組む前に戻ったみたいだ)
全く震える気配のないスマホを見ながら考える。時折震えても、大半は会員登録してる通販サイトからの広告メールとか、そういうどうでもいいものばかりが表示される。求めている連絡は一切こない。
(俺達、このまま終わっちゃうのかな)
また、あの時みたいに終わってしまうのだろうか。結局、本気でバンドをやっているわけじゃない俺達にじゃ、バンドをやる資格はなかったという事なのか。
バンドで食っていきたいわけじゃない。でもバンドがやりたい。
ただ純粋に、バンドが、音楽がしたい。
それじゃあ、ダメなんだろうか。バンドをしたい気持ちは嘘じゃないのに。そこは確かに、本当の筈なのに。
くしゃりと、俺の手の中でまだゴミが生まれた。
そうしてなんの進展もないまま土日は終わり、月曜日。
10月、第1月曜日――、新たな月と1週間がやってきた。
予想外の事態に、放心状態になる大人3人組。だが、そんな情けない大人達とは反対に、たかのっぽくんの行動は素早かった。
「すいませんっ、これについてはまた今度で……っ」
そう俺達に向かって頭を下げると、瞬時に少女の方へ駆け寄り、その腕を取った。そうしてそのまま逃げるように、俺達の前から去って行った。
「ちょっとお兄ぃっ、乱暴っ! 腕痛いんですけどっ」と、少女が文句を言う声が遠くから聞こえる。ついで「うっさい、お前、今は黙ってろっ」と、いつもの丁寧さからは考えられないたかのっぽくんの声も聞こえてくる。
しかしそれ以上の会話は、夜の暗闇に2人の姿が溶け消えてしまうのと一緒に、聞こえなくなったのだった。
ぽかんと、たかのっぽくんとその妹? らしき少女が去っていった方を見つめながら、俺達3人はしばらくその場に立ち尽くし続けた。
あまりにも出来事が急展開すぎて、誰もがその事情をきちんと把握しきれなかったのである。
「……お兄ぃ、だってね」
ふいに、拓弥がそう口を開いた。ぼんやりとした声音だった。
「おう……」と優作もあっけに取られた声で頷き返す。俺もこくりと無言で頷き返す。
「たかのっぽくん……、妹、いたんだね」
「だな……」
「……俺、たかのっぽくんって、一人っ子か弟ポジの子だと思ってた」
ぽつりと思った事をそのまま俺がこぼせば、「「わかる」」と2人が揃って頷き返してきた。
(イケメンの妹は、やっぱりイケてる美少女なんだな……)
さすが、ドイツ人でスウェーデン人で日本人のクォーター家系は違うぜ。
外国人って、なんで住む国が違うだけのはずなのに、あんなに整った顔立ちしてるように見えるんだろうな。本当に同じ地球に住む同じ生物なのかと、たまに疑ってかかりたくなるものがある。
(って、いや、今気にしなくちゃいけないのはそこじゃないだろっ)
いや、たかのっぽくんに美人の妹がいたのは、すっごい気になる点だし、なんならたかのっぽくん、妹にはあぁいう乱暴な口調で話すんだなとか、そんな事も思ったりするけど、今、1番気にすべきところはそこじゃない。
(あの子、たかのっぽくんに対して、『やっと見つけた』って言ってたよね)
やっと見つけたって事は、たかのっぽくん、家族に探されるような立場だったって事? それって一体どういう事なんだろう。
『俺、実は――』そう意を決したように口を開いた、たかのっぽくんの姿が頭の中を横切る。
あの時、はたしてたかのっぽくんは、何を言おうとしていたのか。
その答えは、当然ながらまったくもって想像がつかない。
「……帰るか」
優作が言った。「そう、だね」と拓弥が頷く。
俺も「うん」と頷き返す。そうして駅の方へ向かって、3人でトボトボと歩き始める。
先刻のような微妙な空気はもう、俺達の間にはなかった。
その代わりに、なんだか途方もない混乱と疲労だけが、俺達の間に広がっていたのだった。
******
結局、その日俺が家に着いたのは、日を越えるか否かの頃だった。
風呂に入る気力もわかず、そのまま敷きっぱなしの布団の上へバタンキュー。あ~、明日が休みでよかった、と考えながら、俺の意識は疲労と眠りの向こうへと吹っ飛んでいった。
翌日、目が覚めたのは昼頃の事だった。
とりあえず予定らしい予定もないので、作詞の勉強をしながら過ごした。伝えたいテーマだとか、印象強く残る歌詞の特徴とか、なんかそういう知識を頭に詰め込みつつ、ほぼほぼ完成に近づいてきた楽曲のメロディーを思い出して、歌詞の制作に取り掛かってみる。
が、納得いくものはできず、俺の綺麗とも汚いともいえない文字が書かれたゴミだけが増えていく始末だった。
土日を挟んでも、たかのっぽくんからの連絡はなかった。そのせいか、いつもは楽曲作りで盛んに盛り上がっているはずのグループチャットもとても静かで、通知のつの字も来ない2日間となった。
(なんか、バンドを組む前に戻ったみたいだ)
全く震える気配のないスマホを見ながら考える。時折震えても、大半は会員登録してる通販サイトからの広告メールとか、そういうどうでもいいものばかりが表示される。求めている連絡は一切こない。
(俺達、このまま終わっちゃうのかな)
また、あの時みたいに終わってしまうのだろうか。結局、本気でバンドをやっているわけじゃない俺達にじゃ、バンドをやる資格はなかったという事なのか。
バンドで食っていきたいわけじゃない。でもバンドがやりたい。
ただ純粋に、バンドが、音楽がしたい。
それじゃあ、ダメなんだろうか。バンドをしたい気持ちは嘘じゃないのに。そこは確かに、本当の筈なのに。
くしゃりと、俺の手の中でまだゴミが生まれた。
そうしてなんの進展もないまま土日は終わり、月曜日。
10月、第1月曜日――、新たな月と1週間がやってきた。
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