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7章 本音と暴露
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ガリガリと、乱暴に頭を掻く優作。そんな優作に、いつもの苦笑を顔に浮かべながら「今言わないで、いつ言うのよー」と拓弥が返す。たかのっぽくんが、不安そうに2人のやり取りに目を向ける。
「……たぶんおれ、いろいろ焦ってたんだと思う。郁也くんにいろいろ言われてってのもないわけじゃないけど、でもこのままじゃ、いつまでたってもダメな自分のままだって思っちゃって、それであんな風に言っちゃんだと思う。半分、八つ当たりみたいなもんだったよ」
「だからごめんね、優くん」と拓弥が優作の方へ顔を向けた。申し訳なさそうな笑みを浮かべる拓弥に、「ぐっ」と優作が言葉を詰まらせた。
そうして、その視線をさまよわせた後、たっぷり間をあけて「…………俺も悪かったな」と口にした。
「うわっ、優作が謝った」
思わぬ展開を前に、思わず素の驚きが俺の口から飛び出した。
瞬間、「あ⁉」と、優作がギュンッ! と勢いよく俺の方を振り返ってくる。
「透、てめぇ、そりゃどういう意味だっ」
「いやだって、拓弥は謝れる人間って感じするけど、優作は見るからに謝れないゴリラって感じじゃんっ。俺、絶対優作だけは何があっても謝らないと思ってた!」
「ほーう……。お前が俺に対してどう思っているのか、よーくわかったぜ?」
「そんなに俺の腕力の餌食になりてぇって言うんなら、させてやろうじゃねぇか」と優作がボキボキと手を鳴らし始める。
あ、待って、やめて。20代男性の本気の腕力はいかん。特にお前みたいな図体厳つめマッチョな奴の腕力は、絶対にいかん。
「わーっ、ごめんってばーっ」と慌てて立ち上がる。すると、「逃げんなごらっ」と優作も立ち上がる。狭い上に楽器もあるスタジオ内で、俺の逃げられる場所など存在するはずもなく、すぐさま優作に首根っこを捕らえられてしまう。
たかのっぽくんが慌てたように俺と優作を見回す。止めようとしてか、その手があげられるが、どう止めればいいのかわからないようで、オロオロと宙をさまよっている。
そんな俺達の光景を眺めながら、「ちょっと暴れないでよー」と拓弥が苦笑した。
びっくりするぐらいに、いつも通りの光景。それまでのギスギスした空気なんて、まるでなかったかのように戻ってきた光景に、内心でちょっとばかり驚く。
でも同時に、顔が緩んでいくのがわかる。優作の無駄に筋力のある腕に首を軽く締め付けられながら、「ギブギブッ」とケラケラと笑ってしまう。言いながら、ぽかぽかとしたものが自分の胸の中で満ちていくのを感じる。
「……俺、このメンバーでバンドしていきたいな」
ぽつりと、ふいに、そんな言葉が俺の口からこぼれ落ちた。
ぴたりと、優作が驚いたように俺の首をしめつけるのをやめた。拓弥とたかのっぽくんも、俺の言葉にびっくりした表情をその顔に浮かべる。
「バンド。これから先、どういう形になってもさ、俺、このメンバーでバンドしたい」
ライブに出ようが出まいが、CDを作ろうが作るまいが。
下手だと言われようが、こんなのバンドじゃないって言われようが。
でも多分、俺達にとっては今あるこの光景が、俺達のバンドの姿で。
今見えているこれが、きっと、俺達なりの形なのかもしれない。
拓弥が俺の後ろにいる優作の方へ目を向けた。優作も多分拓弥の方を見返している。
と次の瞬間、「ったりめーだっ」と優作が再び腕に力を込め始めた。
「なぁに、勝手にバンド解散するみてぇな体で言ってんだよっ、てめぇはっ。誰がバンドやめるつったよっ、勝手にいろいろ突っ走ったような事言ってんじゃねぇ、ぞっ!」
「うぐぇっ! ちょっ、マ、タンマタンマッ、優作、マジでタンマッ! 苦しいっ!」
いや、それ、お前が言いますっ⁉ なんかあったら解散するって、最初に言ったのお前じゃん! と内心で大声をあげながら優作の腕を叩く。
拓弥が「決めつけ具合で言ったら優くんもどっこいどっこいだと思うけどなー」と笑う。「なんだっ、もう一回喧嘩すっか⁉」と優作が俺の首をしめつけたまま、拓弥の方へ怒鳴り返す。「じょーだん。あんなの一度で充分」と拓弥が苦笑した。
そんな大人達のドッタンバッタンとうるさいやり取りを、たかのっぽくんがやはりオロオロと見守る。でもなんとなく少しだけ、ホッとしたように、口元が緩やかな弧を描いている。
少しずつだけど、きっと彼もこの空気に慣れてきているのだろう。
最初に出会った頃の、緊張ばかりだったたかのっぽくんの姿とは異なる表情に、彼もまた確かに、このバンドの事を思っている面があるのだとわかり、俺の顔にもまた笑みが浮かぶ。
(とりあえず、一件落着ってやつだな)
あとは、このインドアゴリラの腕の中からどうやって逃げ出すかが問題だ――、そう考え出した時だった。
「あ。忘れてた。俺、優作に相談したい事があるんだった」
「あ? 俺に相談したい事だ?」
優作が驚いたように、腕に力を込めるのをやめた。
お、ラッキー、逃亡チャンス。「そうそう」と頷き返しながら、俺は優作の腕から抜け出した。
拓弥とたかのっぽくんも、興味をそそられたように俺の方を見てくる。
そんなバンド仲間達の視線を受けながら、「実は――」と、俺は『相談したい事』を彼らに向かって話し始めたのだった。
「……たぶんおれ、いろいろ焦ってたんだと思う。郁也くんにいろいろ言われてってのもないわけじゃないけど、でもこのままじゃ、いつまでたってもダメな自分のままだって思っちゃって、それであんな風に言っちゃんだと思う。半分、八つ当たりみたいなもんだったよ」
「だからごめんね、優くん」と拓弥が優作の方へ顔を向けた。申し訳なさそうな笑みを浮かべる拓弥に、「ぐっ」と優作が言葉を詰まらせた。
そうして、その視線をさまよわせた後、たっぷり間をあけて「…………俺も悪かったな」と口にした。
「うわっ、優作が謝った」
思わぬ展開を前に、思わず素の驚きが俺の口から飛び出した。
瞬間、「あ⁉」と、優作がギュンッ! と勢いよく俺の方を振り返ってくる。
「透、てめぇ、そりゃどういう意味だっ」
「いやだって、拓弥は謝れる人間って感じするけど、優作は見るからに謝れないゴリラって感じじゃんっ。俺、絶対優作だけは何があっても謝らないと思ってた!」
「ほーう……。お前が俺に対してどう思っているのか、よーくわかったぜ?」
「そんなに俺の腕力の餌食になりてぇって言うんなら、させてやろうじゃねぇか」と優作がボキボキと手を鳴らし始める。
あ、待って、やめて。20代男性の本気の腕力はいかん。特にお前みたいな図体厳つめマッチョな奴の腕力は、絶対にいかん。
「わーっ、ごめんってばーっ」と慌てて立ち上がる。すると、「逃げんなごらっ」と優作も立ち上がる。狭い上に楽器もあるスタジオ内で、俺の逃げられる場所など存在するはずもなく、すぐさま優作に首根っこを捕らえられてしまう。
たかのっぽくんが慌てたように俺と優作を見回す。止めようとしてか、その手があげられるが、どう止めればいいのかわからないようで、オロオロと宙をさまよっている。
そんな俺達の光景を眺めながら、「ちょっと暴れないでよー」と拓弥が苦笑した。
びっくりするぐらいに、いつも通りの光景。それまでのギスギスした空気なんて、まるでなかったかのように戻ってきた光景に、内心でちょっとばかり驚く。
でも同時に、顔が緩んでいくのがわかる。優作の無駄に筋力のある腕に首を軽く締め付けられながら、「ギブギブッ」とケラケラと笑ってしまう。言いながら、ぽかぽかとしたものが自分の胸の中で満ちていくのを感じる。
「……俺、このメンバーでバンドしていきたいな」
ぽつりと、ふいに、そんな言葉が俺の口からこぼれ落ちた。
ぴたりと、優作が驚いたように俺の首をしめつけるのをやめた。拓弥とたかのっぽくんも、俺の言葉にびっくりした表情をその顔に浮かべる。
「バンド。これから先、どういう形になってもさ、俺、このメンバーでバンドしたい」
ライブに出ようが出まいが、CDを作ろうが作るまいが。
下手だと言われようが、こんなのバンドじゃないって言われようが。
でも多分、俺達にとっては今あるこの光景が、俺達のバンドの姿で。
今見えているこれが、きっと、俺達なりの形なのかもしれない。
拓弥が俺の後ろにいる優作の方へ目を向けた。優作も多分拓弥の方を見返している。
と次の瞬間、「ったりめーだっ」と優作が再び腕に力を込め始めた。
「なぁに、勝手にバンド解散するみてぇな体で言ってんだよっ、てめぇはっ。誰がバンドやめるつったよっ、勝手にいろいろ突っ走ったような事言ってんじゃねぇ、ぞっ!」
「うぐぇっ! ちょっ、マ、タンマタンマッ、優作、マジでタンマッ! 苦しいっ!」
いや、それ、お前が言いますっ⁉ なんかあったら解散するって、最初に言ったのお前じゃん! と内心で大声をあげながら優作の腕を叩く。
拓弥が「決めつけ具合で言ったら優くんもどっこいどっこいだと思うけどなー」と笑う。「なんだっ、もう一回喧嘩すっか⁉」と優作が俺の首をしめつけたまま、拓弥の方へ怒鳴り返す。「じょーだん。あんなの一度で充分」と拓弥が苦笑した。
そんな大人達のドッタンバッタンとうるさいやり取りを、たかのっぽくんがやはりオロオロと見守る。でもなんとなく少しだけ、ホッとしたように、口元が緩やかな弧を描いている。
少しずつだけど、きっと彼もこの空気に慣れてきているのだろう。
最初に出会った頃の、緊張ばかりだったたかのっぽくんの姿とは異なる表情に、彼もまた確かに、このバンドの事を思っている面があるのだとわかり、俺の顔にもまた笑みが浮かぶ。
(とりあえず、一件落着ってやつだな)
あとは、このインドアゴリラの腕の中からどうやって逃げ出すかが問題だ――、そう考え出した時だった。
「あ。忘れてた。俺、優作に相談したい事があるんだった」
「あ? 俺に相談したい事だ?」
優作が驚いたように、腕に力を込めるのをやめた。
お、ラッキー、逃亡チャンス。「そうそう」と頷き返しながら、俺は優作の腕から抜け出した。
拓弥とたかのっぽくんも、興味をそそられたように俺の方を見てくる。
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