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1章 妹と兄と自主制作
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「先もお話したように、今回、皆さんには私の自主制作にご協力をしていただきたいと考えています。就職活動に使うポートフォリオに載せる用の作品を制作したいんです」
一息ついた後に、改めてそう話始めたシオリちゃんいわく。大学で映像に関する勉強をしている彼女は、将来的にはアニメーション作家と呼ばれる職に就きたいと考えているのだという。
今回のポートフォリオ制作は、この夢を叶えるために就職を希望している企業に提出するものらしい。
ふむ。これは確かに、優作が言っていたポートフォリオの使い方に近いな。
俺が知るポートフォリオとは、本当に全然違うわ。
「最終的にはフリーになりたいんですが、その前に社会経験は積んでおきたいので、一度企業に就職したいんです」
「はい、質問。アニメーション作家って、アニメーターになりたいって事で合ってますか」
えいや、と手を挙げて、シオリちゃんに疑問を投げつけてみる。
俺の問いに、「いいえ、違います」とシオリちゃんが首を横に振った。
「アニメーション作家は、文字通り『アニメの作家』の事です」
「『アニメの作家』?」
「……簡単にいえば、一からアニメの内容を考え、企画し、制作をする人達の事ですよ。対してアニメーターは、アニメの作画を担当する人達を指します。一から作品を作るのではなく、すでにアニメとして動き出してる作品の作画を行うんです。
要するに、絵だけを担当するか、企画考案も含む絵以外の部分もあわせて担当するかの違いですよ」
そんな事も知らないのかと言いたげな、軽蔑にも似た眼差しがシオリちゃんから向けられ、思わず、ひぇっと内心で声をあげながら身を縮こませる。
す、すみません。そっちの界隈にはあんまり強くないもので……。
幼い頃ならいざ知らず。アニメの事なんて、世間と子ども達の間で流行ってる作品ぐらいしかわからないよぉ。でも、そんな言い訳、この場で言ったらさらに空気が悪くなる事は見えているので、お口チャックである。
「とはいえまぁ、私の場合は、世間がいうアニメというよりは、CMやPVのような短めの動画制作をメインとしたアニメーション作家になりたいんですけどね」
情けなく身を縮める事しかできない大人を見てどう思ったのか、シオリちゃんが、ふぅ、と小さく息を吐き出しながら説明を続けた。
「なので就職先も、アニメ会社というよりは、PV制作やCM制作をメインとした映像制作会社関連に就きたいと考えておりまして。今回、皆さんにMVの制作を持ちかけたのは、そうした経緯があったからなんです」
なるほど。
つまり簡単に言い直すと、最終的に自分のなりたいものに近い、もしくは関連性のある実績を作りたい、という事で俺達にお声がかかったわけか。
言われてみれば確かに、どんな音楽のMVにだって、それを制作しているスタッフさん達がいるんだよな。ともなれば、そうした映像を作る事を専門とした職や会社があって、それに就きたいと思う人達が居てもなんら可笑しくはない話だ。
(アニメーション作家かぁ。そういうのがあるんだなぁ)
大人になっても知らない事はまだまだ多いぜ。世の中って広い。
拓弥と優作もシオリちゃんの話に納得したらしく、合点したというように頷いている。
(でも、それならやっぱり、もっとちゃんとしたバンドに頼むべきなんじゃないか? この前の優作じゃないが、そういう理由でうちに頼むのって、何か違くね?)
実績らしい実績を作りたいなら――……、先日の優作の言葉が思い出される。
本当にその道で食べていこうと考えているなら、俺達のようなメジャーでデビューする気もない奴らのMVを作ったところで、説得力に欠ける気がする。
どうせ作るなら、もっと向上心があってやる気が溢れていて、すでにそれなりにバンドとしての活動実績を持つ人達と組んだ方が、『実績らしい実績』とやらになるはずだ。
(そう、たとえば――)
音楽を一度やめた俺達とは違い、1人になっても音楽を続けているような奴とか――、俺の頭の中に、今ここには居ないもう1人の幼馴染の姿が思い浮かんだ。
しかし、そんな俺の思考にシオリちゃんが気づくはずもなく。
「というわけで、」となんでもないように話は続けられていく。
「顔合わせも済みましたし、もし皆さんのお時間が大丈夫なら、さっそくではありますが、このまま今後のお話に移らせてもらってもよいでしょうか。実際に制作に入る前に、いくつかお話を聞かせていただきたい事がありまして」
説明はここまでだ、というようにシオリちゃんが話の方向を切り替える。
と、同時に再び鋭い眼光が、まっすぐ俺達大人3人に向けられた。
(うっ、だからなんでこの子、こんなに俺達の事嫌ってるんだよ)
完全になんらかの恨みがある相手に向ける目だよ、これ。俺達が一体何したっていうんだーっ!
一息ついた後に、改めてそう話始めたシオリちゃんいわく。大学で映像に関する勉強をしている彼女は、将来的にはアニメーション作家と呼ばれる職に就きたいと考えているのだという。
今回のポートフォリオ制作は、この夢を叶えるために就職を希望している企業に提出するものらしい。
ふむ。これは確かに、優作が言っていたポートフォリオの使い方に近いな。
俺が知るポートフォリオとは、本当に全然違うわ。
「最終的にはフリーになりたいんですが、その前に社会経験は積んでおきたいので、一度企業に就職したいんです」
「はい、質問。アニメーション作家って、アニメーターになりたいって事で合ってますか」
えいや、と手を挙げて、シオリちゃんに疑問を投げつけてみる。
俺の問いに、「いいえ、違います」とシオリちゃんが首を横に振った。
「アニメーション作家は、文字通り『アニメの作家』の事です」
「『アニメの作家』?」
「……簡単にいえば、一からアニメの内容を考え、企画し、制作をする人達の事ですよ。対してアニメーターは、アニメの作画を担当する人達を指します。一から作品を作るのではなく、すでにアニメとして動き出してる作品の作画を行うんです。
要するに、絵だけを担当するか、企画考案も含む絵以外の部分もあわせて担当するかの違いですよ」
そんな事も知らないのかと言いたげな、軽蔑にも似た眼差しがシオリちゃんから向けられ、思わず、ひぇっと内心で声をあげながら身を縮こませる。
す、すみません。そっちの界隈にはあんまり強くないもので……。
幼い頃ならいざ知らず。アニメの事なんて、世間と子ども達の間で流行ってる作品ぐらいしかわからないよぉ。でも、そんな言い訳、この場で言ったらさらに空気が悪くなる事は見えているので、お口チャックである。
「とはいえまぁ、私の場合は、世間がいうアニメというよりは、CMやPVのような短めの動画制作をメインとしたアニメーション作家になりたいんですけどね」
情けなく身を縮める事しかできない大人を見てどう思ったのか、シオリちゃんが、ふぅ、と小さく息を吐き出しながら説明を続けた。
「なので就職先も、アニメ会社というよりは、PV制作やCM制作をメインとした映像制作会社関連に就きたいと考えておりまして。今回、皆さんにMVの制作を持ちかけたのは、そうした経緯があったからなんです」
なるほど。
つまり簡単に言い直すと、最終的に自分のなりたいものに近い、もしくは関連性のある実績を作りたい、という事で俺達にお声がかかったわけか。
言われてみれば確かに、どんな音楽のMVにだって、それを制作しているスタッフさん達がいるんだよな。ともなれば、そうした映像を作る事を専門とした職や会社があって、それに就きたいと思う人達が居てもなんら可笑しくはない話だ。
(アニメーション作家かぁ。そういうのがあるんだなぁ)
大人になっても知らない事はまだまだ多いぜ。世の中って広い。
拓弥と優作もシオリちゃんの話に納得したらしく、合点したというように頷いている。
(でも、それならやっぱり、もっとちゃんとしたバンドに頼むべきなんじゃないか? この前の優作じゃないが、そういう理由でうちに頼むのって、何か違くね?)
実績らしい実績を作りたいなら――……、先日の優作の言葉が思い出される。
本当にその道で食べていこうと考えているなら、俺達のようなメジャーでデビューする気もない奴らのMVを作ったところで、説得力に欠ける気がする。
どうせ作るなら、もっと向上心があってやる気が溢れていて、すでにそれなりにバンドとしての活動実績を持つ人達と組んだ方が、『実績らしい実績』とやらになるはずだ。
(そう、たとえば――)
音楽を一度やめた俺達とは違い、1人になっても音楽を続けているような奴とか――、俺の頭の中に、今ここには居ないもう1人の幼馴染の姿が思い浮かんだ。
しかし、そんな俺の思考にシオリちゃんが気づくはずもなく。
「というわけで、」となんでもないように話は続けられていく。
「顔合わせも済みましたし、もし皆さんのお時間が大丈夫なら、さっそくではありますが、このまま今後のお話に移らせてもらってもよいでしょうか。実際に制作に入る前に、いくつかお話を聞かせていただきたい事がありまして」
説明はここまでだ、というようにシオリちゃんが話の方向を切り替える。
と、同時に再び鋭い眼光が、まっすぐ俺達大人3人に向けられた。
(うっ、だからなんでこの子、こんなに俺達の事嫌ってるんだよ)
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