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1章 妹と兄と自主制作
1-14
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「…………………………すみません、でした」
ズゥーンと重たい空気を背負いながら、たかのっぽくんが俺達に謝ってきたのは、シオリちゃんと別れた後の事だった。
結局あの後、ファミレスに居づらくなった俺達は、話し合いを中断して店を出る事にした。
それ以前に、たかのっぽくんとシオリちゃんがこんな状態では、さすがにこれ以上の話し合いが難しいのは明らかだ。話の続きはまた後日に回した方がいいのは、誰が見てもわかる事だろう。
なんか俺達、あのファミレスには度々迷惑をかけている気がするなぁ。いつか本気で出禁になったらどうしよう……。
店を出た後は、電車で帰るというシオリちゃんを見送るため、皆で駅へ。
無論、その道中も、たかのっぽくんとシオリちゃんの間に流れる空気がよくなる兆しはなく。無言でギスギスした空気を醸し出す兄妹達に、自然と俺達大人組の間にも緊張感にも似た空気が広がっていたのは言うまでもないだろう。
途中、現状に耐えられなかったらしい優作から、誰か何か言えよ、と言いたげな目が俺と拓弥に向けられたが、こんななかで口を開けるわけもない。無理無理、と首を横に振る俺の横で、拓弥も困ったように苦笑を浮かべていた。
そんなこんなでシオリちゃんと別れ、ようやくいつものメンバーだけになった時だった。
たかのっぽくんが、俺達に謝ってきたのは。
「その、妹とは昔からあんな感じでして……。あまり性格が合わないと言うか、馬が合わないと言いますか……。お互い顔を合わすと、絶対に喧嘩になってしまうんです」
駅中での立ち話もなんだからと、皆で移動してやってきた駅前広場、ロータリー。
ファミレス同様、それなりに人で賑わっていたが、歩道脇の花壇あたりであれば腰を落ち着けて話す事ができた。
「さすがにあの場で喧嘩になるのがまずい事は俺でもわかっていたので、なるべく口を挟まないように努めていたんですが、どうにも我慢ができず……。とにもかくにも、今回はご迷惑をおかけいたしました。本当に、誠に、申し訳ございませんでしたっ」
落ち込んだ様子で項垂れながら花壇に腰をおろしていたたかのっぽくんが、自分を見守るように囲む大人達3人に向かって、ぼそぼそと話を続けた。
……かと思うと、最後の謝罪と同時に、ガバッ! と勢いよくその頭をさげてきた。
場所が場所じゃなければ、土下座でもしていたかもしれない勢いである。
キラキラと、春の日差しを受けて細やかに煌めく金色の頭が、俺達大人組の前に差し出された。
(なんか、いつぞやにも見た事がある光景だなぁ)
確かあの時も、シオリちゃんが発端だったはずだ。
家族と連絡が取れなくなったたかのっぽくんを、シオリちゃんが探しに来たあの日。
それがきっかけで、自分の抱える諸々が俺達にバレたたかのっぽくんが、俺達に隠し事をしていた事を謝ってきたんだよな。
あの時は、俺達大人組の方でもいろいろあって、バンドメンバー皆でギスギスしてて大変だったっけ。
記憶が正しければ、あの出来事からもう半年は経ってるはずだ。
時の流れって本当に早いなぁ。
(……って、そんな現実逃避をしている場合じゃなくて)
「い、いやいやいや⁉ そんな謝らなくても大丈夫だって!」
頭をさげ続けるたかのっぽくんに、俺は慌てて声をかけた。
「そんな謝らなくても大丈夫だって。確かに喧嘩始めた時はびっくりしたけど、でも、その、ほら、発端そのものは俺達に理由があるからさっ。シオリちゃんばっかりが悪いってわけじゃねぇって!」
「なぁ⁉」と、拓弥と優作の方に振り返り、同意を求めるように声をはりあげる。
すると、真っ先に拓弥が「そ、そうだよ」と頷き返してくれた。「俺達に非が全くないわけじゃないし! ねっ、優くん⁉」と、優作にも同意を促してくれる。
優作の方は言いたい事もないわけではないのだろうが、さすがに今のたかのっぽくん相手にそれを言うほど、こいつも大人げない奴ではない。「お、おう。だな」と若干押され気味になりながらも、落ち込む年下を励ますため、俺達の言葉に同意してくれた。
が――、
「いえ、今回の事は全面的にアイツが悪いです」
きっぱりと、たかのっぽくんがそう返してきた。
「皆さんは何も悪くありません」と顔をあげながら続け、首を横にふる。
いつものたかのっぽくんからは考えられないほどに厳しい声音。予想外の反応に、思わずびっくりした大人3人の目が丸くなる。
そんな俺達の視線に、たかのっぽくんがハッとしたように口をつぐんだ。
そうして気まずそうに顔をそむけると、「……すみません」と再び小さな声で謝罪を口にした。
(なんかたかのっぽくん、やっぱりシオリちゃんに当たりが強すぎる気がするな)
ズゥーンと重たい空気を背負いながら、たかのっぽくんが俺達に謝ってきたのは、シオリちゃんと別れた後の事だった。
結局あの後、ファミレスに居づらくなった俺達は、話し合いを中断して店を出る事にした。
それ以前に、たかのっぽくんとシオリちゃんがこんな状態では、さすがにこれ以上の話し合いが難しいのは明らかだ。話の続きはまた後日に回した方がいいのは、誰が見てもわかる事だろう。
なんか俺達、あのファミレスには度々迷惑をかけている気がするなぁ。いつか本気で出禁になったらどうしよう……。
店を出た後は、電車で帰るというシオリちゃんを見送るため、皆で駅へ。
無論、その道中も、たかのっぽくんとシオリちゃんの間に流れる空気がよくなる兆しはなく。無言でギスギスした空気を醸し出す兄妹達に、自然と俺達大人組の間にも緊張感にも似た空気が広がっていたのは言うまでもないだろう。
途中、現状に耐えられなかったらしい優作から、誰か何か言えよ、と言いたげな目が俺と拓弥に向けられたが、こんななかで口を開けるわけもない。無理無理、と首を横に振る俺の横で、拓弥も困ったように苦笑を浮かべていた。
そんなこんなでシオリちゃんと別れ、ようやくいつものメンバーだけになった時だった。
たかのっぽくんが、俺達に謝ってきたのは。
「その、妹とは昔からあんな感じでして……。あまり性格が合わないと言うか、馬が合わないと言いますか……。お互い顔を合わすと、絶対に喧嘩になってしまうんです」
駅中での立ち話もなんだからと、皆で移動してやってきた駅前広場、ロータリー。
ファミレス同様、それなりに人で賑わっていたが、歩道脇の花壇あたりであれば腰を落ち着けて話す事ができた。
「さすがにあの場で喧嘩になるのがまずい事は俺でもわかっていたので、なるべく口を挟まないように努めていたんですが、どうにも我慢ができず……。とにもかくにも、今回はご迷惑をおかけいたしました。本当に、誠に、申し訳ございませんでしたっ」
落ち込んだ様子で項垂れながら花壇に腰をおろしていたたかのっぽくんが、自分を見守るように囲む大人達3人に向かって、ぼそぼそと話を続けた。
……かと思うと、最後の謝罪と同時に、ガバッ! と勢いよくその頭をさげてきた。
場所が場所じゃなければ、土下座でもしていたかもしれない勢いである。
キラキラと、春の日差しを受けて細やかに煌めく金色の頭が、俺達大人組の前に差し出された。
(なんか、いつぞやにも見た事がある光景だなぁ)
確かあの時も、シオリちゃんが発端だったはずだ。
家族と連絡が取れなくなったたかのっぽくんを、シオリちゃんが探しに来たあの日。
それがきっかけで、自分の抱える諸々が俺達にバレたたかのっぽくんが、俺達に隠し事をしていた事を謝ってきたんだよな。
あの時は、俺達大人組の方でもいろいろあって、バンドメンバー皆でギスギスしてて大変だったっけ。
記憶が正しければ、あの出来事からもう半年は経ってるはずだ。
時の流れって本当に早いなぁ。
(……って、そんな現実逃避をしている場合じゃなくて)
「い、いやいやいや⁉ そんな謝らなくても大丈夫だって!」
頭をさげ続けるたかのっぽくんに、俺は慌てて声をかけた。
「そんな謝らなくても大丈夫だって。確かに喧嘩始めた時はびっくりしたけど、でも、その、ほら、発端そのものは俺達に理由があるからさっ。シオリちゃんばっかりが悪いってわけじゃねぇって!」
「なぁ⁉」と、拓弥と優作の方に振り返り、同意を求めるように声をはりあげる。
すると、真っ先に拓弥が「そ、そうだよ」と頷き返してくれた。「俺達に非が全くないわけじゃないし! ねっ、優くん⁉」と、優作にも同意を促してくれる。
優作の方は言いたい事もないわけではないのだろうが、さすがに今のたかのっぽくん相手にそれを言うほど、こいつも大人げない奴ではない。「お、おう。だな」と若干押され気味になりながらも、落ち込む年下を励ますため、俺達の言葉に同意してくれた。
が――、
「いえ、今回の事は全面的にアイツが悪いです」
きっぱりと、たかのっぽくんがそう返してきた。
「皆さんは何も悪くありません」と顔をあげながら続け、首を横にふる。
いつものたかのっぽくんからは考えられないほどに厳しい声音。予想外の反応に、思わずびっくりした大人3人の目が丸くなる。
そんな俺達の視線に、たかのっぽくんがハッとしたように口をつぐんだ。
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