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1章 妹と兄と自主制作
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確かに、年子の兄妹というのは、喧嘩をしやすくなる傾向がある。同年代の友達同士でさえ喧嘩する時はするのだ。
それがほぼ24時間一緒に居る相手ともなれば、喧嘩しない方が難しい。
が、それはあくまでも、喧嘩をしやすいだけという話だ。
本当の本当に仲が悪いとか、お互いの事を嫌いだとか、そういうわけじゃない。もちろん、そういう子も居ないわけじゃないが、そもそも喧嘩が起こるのは、相手と一緒に何かをしようとするからだ。じゃなきゃ、意見のぶつかりあいなど起こらない。
本当に相手が嫌いなら、そもそも相手に話しかけようとすらしないものだ。逆に喧嘩をするような事態に発展する事の方が、まずほぼほぼないと言っていい。
(単純に年子だからという理由で収めるには、たかのっぽくんの態度が冷たすぎるのが気になる。それとも俺が知らないだけで、それなりに成長した年子ってのは、こういう感じなのか?)
さすがに俺も、大学生の年子は相手にした事ないからなぁ。
俺自身は一人っ子だから、兄妹が居るってのもよくわからないし。
姉が3人いる優作なら、何かわかるだろうか。アイツ、あの顔と体つきで末っ子っての、まじで詐欺だと思うんだよなぁ、俺。すぐ感情的にキレちらかすところは、末っ子っぽいけど。
チラッと優作を見てみる。すると、俺の視線に気づいたらしい優作が、なんだよ、と目で返してきた。
なんでもなぁいと首を横に振り返して、たかのっぽくんの方に顔を戻す。
と、俺達からの視線に耐えられなくなったのか。場を誤魔化すかのようにたかのっぽくんが、「妹には」と再び口を開いた。
「その、昔から短気な面がありまして……。自分にとって気に食わない事があると、すぐにあぁやって怒り出すんです。実際それが原因で、今までにも幾度か問題を起こしてきていまして。小学生の時なんか、クラスの男子に髪の色をからかわれたとかで、ぶちキレて黒い絵の具をかぶった事もあるほどで」
「「「絵の具をかぶった……????」」」
あんまりにも予想の斜め上を行くエピソードに、一斉にその口から、間抜けなオウム返しがこぼれ落ちていった。
「絵の具って、あの小学校の授業とかで使う、絵の具? 水彩の?」と、拓弥が困惑気味にたかのっぽくんに尋ねる。「はい」と、たかのっぽくんが頷き返した。当時の事を思い出しているのか、どことなく声音から疲労感が滲み出ている。
(クラスの男子に髪色をからかわれてって事は、それが嫌で絵の具で髪を染めようとしたって事? だとしても絵の具をかぶるって……)
それはもう、短気とかの度をなんか超えてません? 思い切りがよすぎるだろ、シオリちゃん。同じ短気属性持ちの優作ですら、「マジかよ」って小声でドン引いてるぞ。
てか、髪色がって事は、シオリちゃんの黒髪、やっぱりあれ自前じゃないのね。
まぁ、普通に考えてこのプラチナブロンドのイケメンの妹なのだから、妹の髪も同系色じゃないとおかしいか。
なんかもうたかのっぽ家、凄いな。情報が色々ありすぎる。そろそろ俺の情報処理能力がキャパオーバーしそうだぜ。
「とにもかくにも、そんな奴なので、昔からあんまり周囲とコミュニケーションを取るのが下手くそでして。大学に行ってからの事は、正直俺もあんまり詳しくはないのでなんとも言えませんが、でもまさか、あそこまで酷くなってるとは思いませんでした」
たかのっぽくんが、苦々しげな表情を顔に浮かべた。
「こっちが物を頼む立場だというのに、あんな乱暴な物言い。クリエイターだのなんだのって話じゃない。人としての礼儀の問題ですよ。皆さんには、嫌な思いをさせました。本当に申し訳ございません」
再び深々と頭をさげたたかのっぽくんに、大人組の間で戸惑うような視線が行き交う。
さすがに、こればっかりはこちらとしてもフォローする事ができない。シオリちゃんの態度に問題があった事は、どう見たって明らかだ。
俺だって、自分の教え子があんな態度で人に何かを頼んでいたら即注意する自信がある。
でも――、
(……シオリちゃんの言ってる事、それそのものが間違いだったわけではない)
『楽曲を作って、それを誰かに見てもらいたくて動画にしてあげた時点で、それはもう貴方達だけのものじゃなくなります』
『それを聴く貴方達以外の人のものにもなるんです』
シオリちゃんから言われた言葉達が、俺の頭の中で思い出された。
それがほぼ24時間一緒に居る相手ともなれば、喧嘩しない方が難しい。
が、それはあくまでも、喧嘩をしやすいだけという話だ。
本当の本当に仲が悪いとか、お互いの事を嫌いだとか、そういうわけじゃない。もちろん、そういう子も居ないわけじゃないが、そもそも喧嘩が起こるのは、相手と一緒に何かをしようとするからだ。じゃなきゃ、意見のぶつかりあいなど起こらない。
本当に相手が嫌いなら、そもそも相手に話しかけようとすらしないものだ。逆に喧嘩をするような事態に発展する事の方が、まずほぼほぼないと言っていい。
(単純に年子だからという理由で収めるには、たかのっぽくんの態度が冷たすぎるのが気になる。それとも俺が知らないだけで、それなりに成長した年子ってのは、こういう感じなのか?)
さすがに俺も、大学生の年子は相手にした事ないからなぁ。
俺自身は一人っ子だから、兄妹が居るってのもよくわからないし。
姉が3人いる優作なら、何かわかるだろうか。アイツ、あの顔と体つきで末っ子っての、まじで詐欺だと思うんだよなぁ、俺。すぐ感情的にキレちらかすところは、末っ子っぽいけど。
チラッと優作を見てみる。すると、俺の視線に気づいたらしい優作が、なんだよ、と目で返してきた。
なんでもなぁいと首を横に振り返して、たかのっぽくんの方に顔を戻す。
と、俺達からの視線に耐えられなくなったのか。場を誤魔化すかのようにたかのっぽくんが、「妹には」と再び口を開いた。
「その、昔から短気な面がありまして……。自分にとって気に食わない事があると、すぐにあぁやって怒り出すんです。実際それが原因で、今までにも幾度か問題を起こしてきていまして。小学生の時なんか、クラスの男子に髪の色をからかわれたとかで、ぶちキレて黒い絵の具をかぶった事もあるほどで」
「「「絵の具をかぶった……????」」」
あんまりにも予想の斜め上を行くエピソードに、一斉にその口から、間抜けなオウム返しがこぼれ落ちていった。
「絵の具って、あの小学校の授業とかで使う、絵の具? 水彩の?」と、拓弥が困惑気味にたかのっぽくんに尋ねる。「はい」と、たかのっぽくんが頷き返した。当時の事を思い出しているのか、どことなく声音から疲労感が滲み出ている。
(クラスの男子に髪色をからかわれてって事は、それが嫌で絵の具で髪を染めようとしたって事? だとしても絵の具をかぶるって……)
それはもう、短気とかの度をなんか超えてません? 思い切りがよすぎるだろ、シオリちゃん。同じ短気属性持ちの優作ですら、「マジかよ」って小声でドン引いてるぞ。
てか、髪色がって事は、シオリちゃんの黒髪、やっぱりあれ自前じゃないのね。
まぁ、普通に考えてこのプラチナブロンドのイケメンの妹なのだから、妹の髪も同系色じゃないとおかしいか。
なんかもうたかのっぽ家、凄いな。情報が色々ありすぎる。そろそろ俺の情報処理能力がキャパオーバーしそうだぜ。
「とにもかくにも、そんな奴なので、昔からあんまり周囲とコミュニケーションを取るのが下手くそでして。大学に行ってからの事は、正直俺もあんまり詳しくはないのでなんとも言えませんが、でもまさか、あそこまで酷くなってるとは思いませんでした」
たかのっぽくんが、苦々しげな表情を顔に浮かべた。
「こっちが物を頼む立場だというのに、あんな乱暴な物言い。クリエイターだのなんだのって話じゃない。人としての礼儀の問題ですよ。皆さんには、嫌な思いをさせました。本当に申し訳ございません」
再び深々と頭をさげたたかのっぽくんに、大人組の間で戸惑うような視線が行き交う。
さすがに、こればっかりはこちらとしてもフォローする事ができない。シオリちゃんの態度に問題があった事は、どう見たって明らかだ。
俺だって、自分の教え子があんな態度で人に何かを頼んでいたら即注意する自信がある。
でも――、
(……シオリちゃんの言ってる事、それそのものが間違いだったわけではない)
『楽曲を作って、それを誰かに見てもらいたくて動画にしてあげた時点で、それはもう貴方達だけのものじゃなくなります』
『それを聴く貴方達以外の人のものにもなるんです』
シオリちゃんから言われた言葉達が、俺の頭の中で思い出された。
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