Herec 2nd~一度音楽をやめた奴らが結成した『社会人バンド』がMVを作る事になった話~

勝哉道花@みちなり文庫

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2章 父と娘と一触触発

2-14

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 もしかして、マジできらりちゃんが言うように、言う事を全然聞かない娘に嫌気が差したとか言わねぇよな――、一抹の不安を覚え、たらりと冷たい汗が俺の頬をつたう。

 そんな俺の不安もよそに、立ち上がった拓弥が、俺、優作、たかのっぽくんの方へ振り返ってくる。
 そうして、場の空気を変えようとしてか、へらりといつも通りの笑みを顔に浮かべた。

「ごめんね。最後の最後に空気悪くしちゃって」
「あ、いや、う、ううん、そんなこと」

 ないよ、とはさすがに言えず、返す言葉が尻込みになる。
 そんな俺の様子に、拓弥が申し訳なさそうに苦笑を浮かべた。

「とりあえず、これ以上みんなに迷惑かけるわけにはいかないし、おれときらりはここで帰るよ」
「いや、別に俺達、迷惑だなんて思ってな、」
「あ、帰る前にスタジオ代だけ払わないとだよね。いつもと同じで足りる? あぁでも、今日は休日料金だからちょっと高めだっけ。ごめん、ちゃんとした金額覚えてないから、少し多めに置いてくね」

「足りなかったら、あとで言って。逆に余るような事があれば、お釣りは3人でわけちゃっていいから」と拓弥が矢継ぎ早に言葉を続けながら、帰りの準備に入る。自分のギターと繋がっているアンプのもとへ向かい、慣れた手付きで片付けの作業を行っていく。

(どうしよう。本当にこのまま帰しちゃっていいのか?)

 今の拓弥の様子からして、拓弥がこれ以上この話題には触れてほしくない事は確かだろう。
 けど、この微妙な空気をそのままにして帰していいのかと聞かれたら、とてもじゃないがイエスとは言えない。

(でもだからって、何をどう言えばいいのかわからないし……。第一、突っ込んだところで、これはうちの問題だからとでも言われたら、もうそれこそそれまでって話だし……)

 あぁ、もうっ、こういう時ほど、幼なじみの出番じゃないのかよっ。
 今こそ、からかうなりいらない一言なり言って、場をなんとかする時だろ! 

 再びすがる思いで優作を見る。が、さすがの精神図太ゴリラでも、こんな時に言えるような冗談はないらしい。目が合った途端、無理に決まってんだろ、と言いたげに顔が顰められてしまった。

 そんな役立たずのゴリラの右斜め前では、たかのっぽくんが見ていて可哀想になるぐらいに、オロオロと俺達の間で視線をさまよわせている。

 いかん、ダメだこれ、詰んだわ。

 GAME OVERの文字が、古き懐かしきゲームビット音のBGMと共に脳裏をかけていった――……、その時だ。

「……じゃないもん」

 ぽつりと、小さな声が俺達の耳に届いた。

「え」「ほ」「あ?」「へ」

 各人各様の声がスタジオ内にあがり、拓弥、俺、優作、たかのっぽくん4人の視線が一斉に声がした方へ向けられる。

 その先にいたのは、やはりというかなんというか、きらりちゃんだった。

 相変わらず、俯いたままのきらりちゃん。
 しかし先刻とは異なり、なんだかプルプルと、その身体が小刻みに震えているように見える。
 ギュゥッと強く握られたスカートには、可愛いらしい見た目には似合わない、ぐしゃぐしゃで濃いしわが何本も刻まれてしまっている。

 たとえるなら、そう。
 まるで、今にも爆発しそうな何かを、ギリギリのところで堪えているような――……。

「きらり?」と、拓弥が不思議そうにきらりちゃんの名前を呼んだ、

 ――次の瞬間だった。

「わがままじゃっ、ないっ、もーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ‼‼‼‼」

 爆音が、スタジオ内に響き渡った。

 衝撃音とは正しくこの事だろう。キーーーーーーーーンッ! と、マイクをハウリングさせてしまった時にも負けない耳鳴りが、俺の耳を貫いていった。

「どわっ」と反射的に声をあげながら耳を塞ぐ。優作やたかのっぽくんも「うおっ」「⁉⁉⁉」と各々に驚きながら、耳を塞ぎ始める。
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