Herec 2nd~一度音楽をやめた奴らが結成した『社会人バンド』がMVを作る事になった話~

勝哉道花@みちなり文庫

文字の大きさ
53 / 82
4章 臆病者と家族とキラキラ星

4-3

しおりを挟む
 家族の前か友達の前かで、態度は変わるもの。なんてのは、昨日、デパートのフードコートで拓弥、優作と話したばかりの話題だ。

 あの時は確かになぁと思う反面、でもだからってあぁも口が悪くなるものか? と疑問を覚えたが……。なるほど確かに。今の拓弥の様子を見るに、そういう場合も重々ありえる事のようだ。
 自分が思う以上に、人というのは相手によって態度を変えている生き物なのだったらしい。

(でもきっと、それは相手の事が嫌いだからとか、そういう話とはまた別物な気がする)

 むしろ、その反対な気すらする。ちょっと乱暴に言ってもいい。そのように言い合っても対等でいられる。許される。そうわかっているから、信頼しているからこその物言い。そんな風に聞こえる。

 たとえるなら、先の俺と高瀬さんとのやり取りのような。
 こういう態度で接しても問題ない相手だとわかっているからこその、一種の『くだけ』のようなものが、この乱暴には含まれている気がする。

(……それでもやっぱり、たかのっぽ家のそれは、どこか度が過ぎてる気がするけど)

 本当、なんであそこまで仲が悪いんだろう。俺が内心で首をかしげたその時、「大体の理由はわかったよ」と拓弥が口を開いた。

「確かにこれは、きらりと言うよりはおれ達親側の問題だな。おれも昨晩は、ちょっとキツい言い方しちゃったかもしれないって後悔してたし。はー……、まさかそこまで思い詰めさせちゃってたとは、思ってもみなかったなぁ」

「ごめんね。うちの事で、いろいろ迷惑かけちゃって」と拓弥が、申し訳無さそうにへにゃりと眉を垂らして笑う。いつもとはまた違った意味で力のない笑みに、「いや、別に……」と思わずモゴモゴと口ごもりながら俺は返した。

「迷惑ってほど、迷惑はかかってねぇよ。むしろ、拓弥も人の子だったんだなぁって思えて、なんか安心したぐらい」
「えー、何それ。俺、透くんからどんな人間に見えてるのさ」
「しっかり者の優等生で頼れる皆のまとめ役」
「人として完璧すぎない?」

 困ったように拓弥が苦笑する。そうかなー。普段の拓弥ってそういう感じの奴だと思うけど。確かにきらりちゃんの件では冷静さを欠いてるが、それはそれ、これはこれだ。

 実際、昨日のシオリちゃんとの話し合いの時も、率先して話を進めてくれたのは拓弥だったしね。
 普段のバンド内での話し合いだって、拓弥が中心に立って話をまとめてくれる事が多い。

 これで「そんな奴じゃない」なんて言うのは、詐欺って話だ。
「本当にそう思ってんだけどなー」と口を尖らせて抗議すれば、拓弥がまた苦笑した。

 かと思うと、ふっと俺から視線をそらし、緩やかにその首を横に振った。

「……そんないい奴じゃないよ、おれは」
「? 拓弥?」

 ボソッと呟くように返された言葉に、思わずびっくりして目を丸める。

 周りが静かじゃなかったら、きっと拾う事もできなかったほどの小さな声。
 その弱弱しさにあ然としていれば、俺を驚かせてしまった事を悪く思ったらしい拓弥が、先刻も見た申し訳無さそうな笑みを再びこちらに向けてきた。

「ねぇ、透くん。透くんはさ、覚えてる? おれ達が初めてバンドを組もうって話になった時のこと」
「初めてって……、それってHERO ROCKヒーロックを結成した時のこと?」

「Herecじゃなくて」と俺が確認するように問うと、「そう」と拓弥が頷いた。

 HERO ROCK。

 それは、まだ俺達がバンドでやっていく事を夢見ていた時代に組んでいたバンドの名前だ。
 名の由来は言わずもがな、自分達をバンドに繋げてくれた例のアニメだ。とはいえ、完璧に名前を同じにしてしまうと著作権云々とか厄介事が発動してしまうので、字面だけは変えてバンド名に起用した。

 今使っているHerecの名だって、実は『ヒーロック』を手本につけた名前だったりする。

 Hereここrec記録するをあわせて、Herec。

『自分達の作ったものをここに残す』。そんな意味を込めて、たかのっぽくん発案でつけられた名前となっている。

 にしても驚きだ。まさか昨日、俺自身がたまたま振り返った思い出を、当の本人の口から聞かされる羽目になるとは。

 だが、それが今の現状とどう繋がるのだろう。話の意図が掴めず首をかしげれば、そんな俺を見た拓弥が再び苦笑した。

「『本物のバンドをしてみないか』って郁也くんの声かけで、バンドを始めようってなってさ。でも、おれ達だけじゃ機材や練習場所の準備をしようにもまだ難しくて……。だから一度、各々で親に相談しようって話になったでしょ?」

「覚えてる?」と再び拓弥が俺に尋ねてくる。
「覚えてる覚えてる」と俺は拓弥に頷き返した。

「俺や優作、郁也がすぐに親に相談したのに対して、拓弥がなかなか親にバンドの事を言い出せなくて、うじうじモジモジし続けてたやつだろ?」
「うじうじモジモジって。そこまで女々しくはしてな……、いや、うん、まぁ、でもそうだね。うじうじはしてたね。いろいろ理由つけてさ」

「親に負担かけるのはとか、ギターをやるのが自分でいいのかーとかってね」と、当時から変わりない苦笑を顔に浮かべながら拓弥が続けた。

「じゃあ、その時におれが郁也くんに尻を蹴られた事も覚えてる?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

処理中です...