Herec 2nd~一度音楽をやめた奴らが結成した『社会人バンド』がMVを作る事になった話~

勝哉道花@みちなり文庫

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4章 臆病者と家族とキラキラ星

4-9

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 ぽつりぽつりと、思った事が口から出ていく。

 伝えたい何かを探すように。この目の前の怖がりな友人に、伝えたいものを見つけだすように。
 自分の中から浮かんでくる気持ちを言葉に直しながら、スタジオの扉に手を伸ばす。

 俺の突然の行動に驚いたらしい拓弥が、「透くん?」と不思議そうに俺を呼んだ。

 しかし、それには応えず、俺はドアノブをギュッと握った。

「何がどう違うとか、どうしてそう思うのかとか、そういうの上手く言えないんだけどさ。でもやっぱり違うって思うんだ。そりゃあ、正解を選ぶのが正しいってのはわかってるよ? 正しい解答って書いて、正解なわけなんだし。子ども達のテストでだって、たとえ『あと少し違ってれば正解だったのにー!っ』て思うような答えが書いてあっても、だからってさすがに丸にはしてやれないしさ」

「三角ならあげられるかもだけどね」と拓弥にむかって笑う。拓弥が「はあ」と困惑したように相槌をうち返してきた。

「正しい事ができるなら、きっとそれが1番いい。でもだからって、それがいつでも正解かって言われたら、たぶんそうじゃないんだ」

 頭の中に、昨晩の出来事が思い浮かぶ。
 パパに嫌われているかもしれない。そう考え、落ち込む1人の少女。

 あの時、俺が彼女にかけるべき言葉は、いくらでもあった。だがそのどれもが、あの時の俺には薄っぺらく感じられた。自分がそれらを言うには、俺という人間はあまりにも当事者からかけ離れ過ぎていたから。

 そんな立場の奴が何を言っても、きっとこの子の心には響かない。――そう思ったから。

「間違った事をするのは怖いし、それで誰かからバッテンをつけられるのだってやっぱり嫌だけど、でもそうする事が正しいから、1番いいからって、それだけの理由で『正しい事』をしちゃうのは何か違う気がする」

 たとえば。 
 俺達のバンドの形が、世間一般でいう『バンド』とはどこかかけ離れていても、それでもなんとか、どうにかバンドを続けられているように。

 そんな不格好なバンドでも、小さな観客を1人楽しませる事ができたように。

「間違えたって、きっと大丈夫だよ」

 俺の言葉に目を丸める拓弥に、ニッと、今度は力強く笑い返す。

「丸は無理でも、頑張れば三角ぐらいは貰えるから。間違えたって、きっと大丈夫。悪い事ばかりじゃないよ」
「透く、」
「それでもやっぱり『怖い』ってんならさ、」

 ドアノブに力をかける。
 ガチャリと音をたてて、ドアノブが下がった。

 そして――、

「いっそのこと、一度『全力』で間違えてみるってのもおつじゃね?」

 一度やめた好きな事を、もう一度始めたら見えてきたものがあったように。
 間違えた先でしか、見えない光景もあるかもしれないから。

「つーわけで、これが今できる俺の『全力』です」そう言葉を続けながら、俺はスタジオの扉を開けた。
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