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4章 臆病者と家族とキラキラ星
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時を遡ること、昨晩――。
『きらりちゃんと拓弥の事で、相談したい事があります。よってここに、第2回Herec緊急会議の開催を申請します』
泣き疲れて眠りについたきらりちゃんを膝に乗せたままスマホを手に取った俺は、そう宣言しながら、優作とたかのっぽくんの2人を、作りたてほやほやのグループチャットに招集した。
『緊急会議だよ、起きてる奴ら、全員しゅうごーう』と、俺が続けてメッセージを打ち込むのとほぼ同時についた、既読を意味するマーク。
直後、優作から『パロネタが古ぃ』という返事がきた。遅れてたかのっぽくんからも、『第2回……?』と混乱している様子が目に浮かぶような返事がやってくる。
(そういえば、最初に『緊急会議』をした時って、たかのっぽくんはまだうちのバンドにいなかったんだっけか)
まぁ、たかのっぽくんがいるいない以前に、あの時はまだバンドのバの字もスタートしてない段階だったんですけど――、そんなちょっと懐かしい思い出に浸りつつも、時間がないので、すぐに今回の議題へと話を移す。
簡単にきらりちゃんが抱えてる事情を話した後、何か自分達にできる事はないだろうかと、2人に相談した。
『第三者の立場である俺達が、どうこう言うべき事じゃないってのはわかってる。でもさ、ここまで知っちゃっておいてそれで何も見なかったフリするってのはさ、さすがにあんまりじゃないかって思うんだよ』
『少しでいいの。完璧に全てを解決できるようなとか、そんなドデカい事は言わないから。何かこう、ちょっとでもあの父娘がいい方向に進めるような、そんな手助けやきっかけを作る事ってできないかな』
『それにこのままじゃ、拓弥もHerecの活動に身が入らなくなっちゃうかもだし……』
正直、優作あたりには何か言われそうだな、と内心ビクビクだった。
アイツ、こういうひと様の家庭事情に首突っ込むのとか、嫌がりそうなタイプだし。
常識の範囲っつーもんがあんだろとか、なんか小言言ってきそうじゃん?
が、俺の予想に反して、意外にも優作が異を唱える事はなかった。
『んなこと言われてもなぁ』と微妙な雰囲気の返答は来たが、俺の言葉を否定するというよりは、どうするべきか考えあぐねいているような様子だった。
もしかしたら、アイツもアイツなりに今回の件に関しては、見過ごせない部分があったのかもしれない。
なんだかんだ、拓弥と1番付き合いが長いのって優作だしな。
きらりちゃんがいなくなったって話になった時も、真っ先に動いたのは優作だったし。昔からの友人として放っておけない部分があったのだろう。まったく、仲間思いな男である。
考えこんでいるのか、全く返事が来なくなった優作の代わりに、『あの』と声をあげたのはたかのっぽくんだった。
『つまるところ、きらりちゃんが井尻さんに会いたがったのって、授業参観の話を井尻さんにしたかったから、という事ですよね。ならとりあえず、それをできる場を整えてあげるのがいいのではないでしょうか』
『『あ』』
それは確かに。
目から鱗、青天の霹靂。虚を突かれた大人達の指先から、間抜けなメッセージがチャット画面に打ち込まれた。
(状況が状況だから、ついつい複雑に考えちゃってたけど、そうだよな。もとを辿ればこれって、そういう話なんだよな)
娘が大好きな父親に自分の頑張った事を話したくて、それがきっかけで起きてしまった今回の波乱。
ならば、それだけでもいいから解消できれば、とりあえずの現状を落ち着かせる事はできるかもしれない。
1つ問題が解決すれば、他の事にも目を向ける余裕が生まれるはずだ。
むしろ上手くいけば、父娘の関係を修復できる可能性も無きにしもあらずだろう。え、めっちゃいい案なのでは、これ。
優作の方も反対する様子は全くなく、それどころか『たかのっぽくん天才かよ』と褒めそやしていた。
そんなわけで、3人であれやこれやと話し合った結果、俺達はきらりちゃんが拓弥と伝える『場』として、Re:creationを選ぶ事にした。
選んだ理由としては、そこが多分、1番きらりちゃんにとって最適な場所だと考えたからだ。
きらりちゃんが拓弥に話したかったという、授業参観。
その内容を伝えるのに一番合っているのが、Re:creationだったのだ。
――その内容というのが……、
「じゃあ、いくよ~」
事前に決めていた通りのポジションに立ちながら、俺は本日の主役とその主役の後ろに並ぶ楽器隊に声をかけた。
きらりちゃんの右斜め前にあたる位置。きらりちゃんと楽器隊メンバー全体を見舞わせるその位置で、メンバー1人1人と向き合いながら、腕をあげる。
たかのっぽくんと優作が、心得たというように、それぞれに姿勢やスティックを構え直した。
そんな大人達の前で、きらりちゃんがあいも変わらず緊張した顔で立ちながら、しかしその目だけはしっかりと俺の手へと向けてくる。
俺達の様子を、拓弥がじっと静かに見つめてくる。
スタジオ防音扉前。ちょうどきらりちゃんの真正面にあたるその位置で、スタジオ内にあった丸椅子に座りながら、拓弥が俺達の様子を静かに眺める。
全員の視線が定位置に定まったのを感じ、俺は、よし、と小さく心の中で意気込んだ。
そして――……、
「いち、にの、さん、はい」
口にしたテンポにあわせて、構えていた腕を振り出した。
『きらりちゃんと拓弥の事で、相談したい事があります。よってここに、第2回Herec緊急会議の開催を申請します』
泣き疲れて眠りについたきらりちゃんを膝に乗せたままスマホを手に取った俺は、そう宣言しながら、優作とたかのっぽくんの2人を、作りたてほやほやのグループチャットに招集した。
『緊急会議だよ、起きてる奴ら、全員しゅうごーう』と、俺が続けてメッセージを打ち込むのとほぼ同時についた、既読を意味するマーク。
直後、優作から『パロネタが古ぃ』という返事がきた。遅れてたかのっぽくんからも、『第2回……?』と混乱している様子が目に浮かぶような返事がやってくる。
(そういえば、最初に『緊急会議』をした時って、たかのっぽくんはまだうちのバンドにいなかったんだっけか)
まぁ、たかのっぽくんがいるいない以前に、あの時はまだバンドのバの字もスタートしてない段階だったんですけど――、そんなちょっと懐かしい思い出に浸りつつも、時間がないので、すぐに今回の議題へと話を移す。
簡単にきらりちゃんが抱えてる事情を話した後、何か自分達にできる事はないだろうかと、2人に相談した。
『第三者の立場である俺達が、どうこう言うべき事じゃないってのはわかってる。でもさ、ここまで知っちゃっておいてそれで何も見なかったフリするってのはさ、さすがにあんまりじゃないかって思うんだよ』
『少しでいいの。完璧に全てを解決できるようなとか、そんなドデカい事は言わないから。何かこう、ちょっとでもあの父娘がいい方向に進めるような、そんな手助けやきっかけを作る事ってできないかな』
『それにこのままじゃ、拓弥もHerecの活動に身が入らなくなっちゃうかもだし……』
正直、優作あたりには何か言われそうだな、と内心ビクビクだった。
アイツ、こういうひと様の家庭事情に首突っ込むのとか、嫌がりそうなタイプだし。
常識の範囲っつーもんがあんだろとか、なんか小言言ってきそうじゃん?
が、俺の予想に反して、意外にも優作が異を唱える事はなかった。
『んなこと言われてもなぁ』と微妙な雰囲気の返答は来たが、俺の言葉を否定するというよりは、どうするべきか考えあぐねいているような様子だった。
もしかしたら、アイツもアイツなりに今回の件に関しては、見過ごせない部分があったのかもしれない。
なんだかんだ、拓弥と1番付き合いが長いのって優作だしな。
きらりちゃんがいなくなったって話になった時も、真っ先に動いたのは優作だったし。昔からの友人として放っておけない部分があったのだろう。まったく、仲間思いな男である。
考えこんでいるのか、全く返事が来なくなった優作の代わりに、『あの』と声をあげたのはたかのっぽくんだった。
『つまるところ、きらりちゃんが井尻さんに会いたがったのって、授業参観の話を井尻さんにしたかったから、という事ですよね。ならとりあえず、それをできる場を整えてあげるのがいいのではないでしょうか』
『『あ』』
それは確かに。
目から鱗、青天の霹靂。虚を突かれた大人達の指先から、間抜けなメッセージがチャット画面に打ち込まれた。
(状況が状況だから、ついつい複雑に考えちゃってたけど、そうだよな。もとを辿ればこれって、そういう話なんだよな)
娘が大好きな父親に自分の頑張った事を話したくて、それがきっかけで起きてしまった今回の波乱。
ならば、それだけでもいいから解消できれば、とりあえずの現状を落ち着かせる事はできるかもしれない。
1つ問題が解決すれば、他の事にも目を向ける余裕が生まれるはずだ。
むしろ上手くいけば、父娘の関係を修復できる可能性も無きにしもあらずだろう。え、めっちゃいい案なのでは、これ。
優作の方も反対する様子は全くなく、それどころか『たかのっぽくん天才かよ』と褒めそやしていた。
そんなわけで、3人であれやこれやと話し合った結果、俺達はきらりちゃんが拓弥と伝える『場』として、Re:creationを選ぶ事にした。
選んだ理由としては、そこが多分、1番きらりちゃんにとって最適な場所だと考えたからだ。
きらりちゃんが拓弥に話したかったという、授業参観。
その内容を伝えるのに一番合っているのが、Re:creationだったのだ。
――その内容というのが……、
「じゃあ、いくよ~」
事前に決めていた通りのポジションに立ちながら、俺は本日の主役とその主役の後ろに並ぶ楽器隊に声をかけた。
きらりちゃんの右斜め前にあたる位置。きらりちゃんと楽器隊メンバー全体を見舞わせるその位置で、メンバー1人1人と向き合いながら、腕をあげる。
たかのっぽくんと優作が、心得たというように、それぞれに姿勢やスティックを構え直した。
そんな大人達の前で、きらりちゃんがあいも変わらず緊張した顔で立ちながら、しかしその目だけはしっかりと俺の手へと向けてくる。
俺達の様子を、拓弥がじっと静かに見つめてくる。
スタジオ防音扉前。ちょうどきらりちゃんの真正面にあたるその位置で、スタジオ内にあった丸椅子に座りながら、拓弥が俺達の様子を静かに眺める。
全員の視線が定位置に定まったのを感じ、俺は、よし、と小さく心の中で意気込んだ。
そして――……、
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口にしたテンポにあわせて、構えていた腕を振り出した。
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