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4章 臆病者と家族とキラキラ星
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『みんなで、お父さんとお母さんにむけて、えいごでうたおうって。それでお父さんお母さんをビックリさせようって』
『きらりたちね、すっごいがんばってね、れんしゅうしたのよ。お父さんやママをね、すごいっておどろかせたかったの。だからね、きらり、パパにも見てもらいたかったの。だって、パパもきらりのお父さんでしょ』
『パパにも、きらり、えいごでうたえるんだよって、見てもらいたかっただけなのに……っ』
なるほど。そりゃあ確かに、きらりちゃんもいつも以上に奮闘するし、拓弥にも見てもらいたいって考えるわけだわな。
初めての授業参観ってだけでもテンションがあがるだろうに、そこにそんなサプライズ企画を加えてごらんなさいよ。どうなるかは教師じゃない人にだってわかるだろう。
一応小学校で英語が必修科目になるのは中学年――、3・4年生からだけど、学校によってはきらりちゃんのところのように、1年生の段階で英語学習を行っている場合もある。
これは実際に必修になった際に、よりスムーズに英語の授業についていけるよう、1年生の段階で下地を作っておこうという考えによるものだ。
きらりちゃんの今回の授業参観で行った英語の授業というのも、この英語学習の事だったのだろう。
(音楽、演奏、お歌といえば、俺達Herecの出番ってな! せっかく音楽に特化してる奴らがいるのに、これを使わない手はないでしょうよ!)
ま、俺自身は演奏ができないし、今回のボーカルはきらりちゃんで確定だったから、代わりにこうして指揮者役を担うわけになったのですが。
べ、別に、自分にできそうな事がないから、無理やり指揮者役に立候補したわけじゃないんだからね⁉
仲間はずれになるのが嫌で、ドラムがテンポを取ればいいだけのところを、無理に割り込んだとか、そんなんじゃないんだからね⁉⁉
そんな無理矢理自分のポジションを得た情けない大人とは反対に、いつもと違う楽器を弾いているたかのっぽくんの方は、実は彼自らが立候補してくれたものだったりする。『合唱するなら、ピアノでの伴奏があった方がいいですよね。俺、やりましょうか』と彼自らが提案し、担ってくれたのである。
確かに、ピアノの伴奏があるならばそれに越した事はない。
いくらドラムでテンポが取れるとはいっても、所詮はテンポだけだ。伴奏のような、しっかりとした主奏部分を支える旋律があった方が、きらりちゃんのような小さな子には歌いやすいだろう。
とはいえ、たかのっぽくんの抱える事情を考えると、すんなりとピアノ役を頼んでいいのかどうかは迷うものがあった。
ピアノを続けるか、ベースをやっていくか。
その選択で未だに悩み続けている彼に、いくら弾けるからという理由でピアノを頼むというのは、いささか図々しいと言いますか、人の心がなさすぎると言いますか……。
だが、『本当にいいの』と不安げに訊ねた俺に対し、返されたのは『大丈夫ですよ』という迷いのない返事だった。
いわく、『せっかく弾ける奴がいるんだから、弾いた方がいいでしょう』とのこと。
いい子か?
顔もよければ性格もよしって、一体全体、どういう教育をすればこんないい子に育つんです?
これで妹とだけは反りがあわないっていうんだから、マジでシオリちゃんとの間に何があったのか、考えるだけで怖いものがあるぜ。
本当、なんであんなに仲が悪いんだろうなぁ……。
きらりちゃんには、朝起きてからこれらの事を話した。
さすがに昨日の段階で話すには、彼女もいろんな意味で疲れていたしね。話し合い終了後に布団に寝かしつけ、すべての話は今朝に持ち越させていただきました。
俺達からの提案が予想外だったのか、俺から話を聞き終えたきらりちゃんは、しばらくの間、その場でポカンと口を開けて呆けていた。
食べていた朝食のパンをボトリと皿の上に落としてしまうぐらいには、衝撃的だったようだ。
その後、我に返ったきらりちゃんは、「や」と口を開いた。
だがすぐに口を閉じると、おそるおそるといった様子で「いいの……?」と俺を見上げてきた。
『きらりたちね、すっごいがんばってね、れんしゅうしたのよ。お父さんやママをね、すごいっておどろかせたかったの。だからね、きらり、パパにも見てもらいたかったの。だって、パパもきらりのお父さんでしょ』
『パパにも、きらり、えいごでうたえるんだよって、見てもらいたかっただけなのに……っ』
なるほど。そりゃあ確かに、きらりちゃんもいつも以上に奮闘するし、拓弥にも見てもらいたいって考えるわけだわな。
初めての授業参観ってだけでもテンションがあがるだろうに、そこにそんなサプライズ企画を加えてごらんなさいよ。どうなるかは教師じゃない人にだってわかるだろう。
一応小学校で英語が必修科目になるのは中学年――、3・4年生からだけど、学校によってはきらりちゃんのところのように、1年生の段階で英語学習を行っている場合もある。
これは実際に必修になった際に、よりスムーズに英語の授業についていけるよう、1年生の段階で下地を作っておこうという考えによるものだ。
きらりちゃんの今回の授業参観で行った英語の授業というのも、この英語学習の事だったのだろう。
(音楽、演奏、お歌といえば、俺達Herecの出番ってな! せっかく音楽に特化してる奴らがいるのに、これを使わない手はないでしょうよ!)
ま、俺自身は演奏ができないし、今回のボーカルはきらりちゃんで確定だったから、代わりにこうして指揮者役を担うわけになったのですが。
べ、別に、自分にできそうな事がないから、無理やり指揮者役に立候補したわけじゃないんだからね⁉
仲間はずれになるのが嫌で、ドラムがテンポを取ればいいだけのところを、無理に割り込んだとか、そんなんじゃないんだからね⁉⁉
そんな無理矢理自分のポジションを得た情けない大人とは反対に、いつもと違う楽器を弾いているたかのっぽくんの方は、実は彼自らが立候補してくれたものだったりする。『合唱するなら、ピアノでの伴奏があった方がいいですよね。俺、やりましょうか』と彼自らが提案し、担ってくれたのである。
確かに、ピアノの伴奏があるならばそれに越した事はない。
いくらドラムでテンポが取れるとはいっても、所詮はテンポだけだ。伴奏のような、しっかりとした主奏部分を支える旋律があった方が、きらりちゃんのような小さな子には歌いやすいだろう。
とはいえ、たかのっぽくんの抱える事情を考えると、すんなりとピアノ役を頼んでいいのかどうかは迷うものがあった。
ピアノを続けるか、ベースをやっていくか。
その選択で未だに悩み続けている彼に、いくら弾けるからという理由でピアノを頼むというのは、いささか図々しいと言いますか、人の心がなさすぎると言いますか……。
だが、『本当にいいの』と不安げに訊ねた俺に対し、返されたのは『大丈夫ですよ』という迷いのない返事だった。
いわく、『せっかく弾ける奴がいるんだから、弾いた方がいいでしょう』とのこと。
いい子か?
顔もよければ性格もよしって、一体全体、どういう教育をすればこんないい子に育つんです?
これで妹とだけは反りがあわないっていうんだから、マジでシオリちゃんとの間に何があったのか、考えるだけで怖いものがあるぜ。
本当、なんであんなに仲が悪いんだろうなぁ……。
きらりちゃんには、朝起きてからこれらの事を話した。
さすがに昨日の段階で話すには、彼女もいろんな意味で疲れていたしね。話し合い終了後に布団に寝かしつけ、すべての話は今朝に持ち越させていただきました。
俺達からの提案が予想外だったのか、俺から話を聞き終えたきらりちゃんは、しばらくの間、その場でポカンと口を開けて呆けていた。
食べていた朝食のパンをボトリと皿の上に落としてしまうぐらいには、衝撃的だったようだ。
その後、我に返ったきらりちゃんは、「や」と口を開いた。
だがすぐに口を閉じると、おそるおそるといった様子で「いいの……?」と俺を見上げてきた。
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