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4章 臆病者と家族とキラキラ星
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結局のところ、こうした問題事は、どれだけ俺達第三者が出張ったところで、最後は当事者達自身でどうにかしなければならないのだ。
子ども同士の喧嘩だって、大人が話を聞いたり悪い部分を説いたりする事はあるけど、最後に謝ったり許すかどうかを決めたりするのは子ども達自身なわけだしね。大人は彼らが出した結果を見守る事しかできない。
何か言葉を続けようとしてか、拓弥の口が開かれる。だが、音もなく小さく動いた後、すぐに閉じられる。
そうして今度こそ、苦笑らしい苦笑を、困ったと言いたげにその顔に浮かべた。
(何を言えばいいのか、わからないんだろうな)
俺だって拓弥の立場だったら、なんて言えばいいかできっとむちゃくちゃに悩むわ。
自分の言動ひとつで今後の展開どころか、大事な家族との仲すら大きく変わってしまうかもしれないんだぜ⁉ そりゃあ、拓弥でなくたって怖くもなるって話だ。
とはいえ、先も言った通り、第三者は黙って静観を続けるの選択一択である。
本当はめちゃくちゃ口出したいけど。言いたい事あるなら、全部言っちゃえって、思いっきり背中叩きに行きたいけど……っ!
(でも、ずっとこのまま無言を続けていても、何も進まねぇし……。一応、今回の企画の言いだしっぺは俺って事を考えると、このままうんともすんとも言わないなら、俺が何かしらのフォローを挟むべきなのか?)
助けてくれ、俺の最強の仲間達ぃーっ! すがる思いで、後ろにいる楽器隊へ振り返る。
が、目につくのは渋い顔をする優作と、オロオロと困ったようにキーボードの前で立ち尽くすたかのっぽくんの姿ばかりで、頼れそうな雰囲気はどこにもない。2人の方も出方を迷っている様子だ。
あ、これあかん、詰んだ。誰にもどうにもできないやつだ。
理解した現状に、思わず心の中で遠いところを見た、
――その時だった。
「パパ」
きらりちゃんが口を開いた。
予想外の展開に、年上組全員の目が一斉にきらりちゃんの方に集まる。
驚きで目を丸める年上4人。しかし、自身に降り注ぐ視線を気に留めた様子もなく、きらりちゃんは拓弥に向かって大きく頭をさげた。
「ごめんなさい」
「え」
「きらりね、ほんとうはわかってたの。パパに会いにいっても、パパはよろこんでくれないって」
顔をあげたきらりちゃんが、呆然と自分を見つめる拓弥を見返す。
ぎゅっと、何かをこらえるように、その小さな手がワンピースシャツのスカート部分を握った。くしゃりと、握られた部分のチェック模様が大きく歪む。
「おやくそくやぶって会いにいっても、ぜったいパパはよろこんでくれないって、わかってた。ママもぜったいおこるって。お父さんもかなしんじゃうかもしれないって。でもね、それでもね、きらり、パパに会いたかったの……っ」
次第に震えを帯び始める、きらりちゃんの声。
それに呼応するように、父親似の大きな目のふちに、じわりじわりと涙がたまっていく。
「パ、パパがね、きらりとおはなしすると、こまっちゃうことも、きらりちゃんとわかってた……っ、パパがね、もうきらりの家族じゃないなら、それできらりのことをきらいなら、きっときらりが会いにいっても、"めいわく"かけちゃうのかもって。きらり、ぜんぶわかってた。
でもね、それでもね、きらり、どうしてもパパに会いたかったの。パパに、きらり、えいごでうたえるんだよっておはなしたかったの……っ」
「きらり……」
「だからねっ、だからねっ、きらり、パパに『きらい』なんて言うつもり、なかったのよっ。ほんとうに、ほんとうよ。きらり、パパのこと、きらいじゃないもんっ。だって、ほんとうにわがまま言ってるのはきらりだものっ。きらり、ちゃんとわかってるもんっ」
「きらり、きらり……っ」と、きらりちゃんがそこで言葉を切った。
今にもこぼれそうになる涙を抑えるためか、グッと顔に力が入れられる。グッグッと、髪色とおそろいの柔らかな色合いの眉の間に、険しい何本ものしわが刻まれていく。ぎゅうっと、スカートを握る手にもさらに力が入れられるのがわかった。
痛々しいほどに力をこめて涙をこらえようとする幼い少女の姿に、それこそ、こちらの胸がぎゅぅっと掴まれるような苦しさに襲われる。
こういう子どもの姿と言うのは、正直見ていてあまり心地がいいものではない。職業柄とか、それ以前の問題だ。
だが――、
(この子、凄いなぁ)
そんな、素直な感心も胸中にわいた。
子ども同士の喧嘩だって、大人が話を聞いたり悪い部分を説いたりする事はあるけど、最後に謝ったり許すかどうかを決めたりするのは子ども達自身なわけだしね。大人は彼らが出した結果を見守る事しかできない。
何か言葉を続けようとしてか、拓弥の口が開かれる。だが、音もなく小さく動いた後、すぐに閉じられる。
そうして今度こそ、苦笑らしい苦笑を、困ったと言いたげにその顔に浮かべた。
(何を言えばいいのか、わからないんだろうな)
俺だって拓弥の立場だったら、なんて言えばいいかできっとむちゃくちゃに悩むわ。
自分の言動ひとつで今後の展開どころか、大事な家族との仲すら大きく変わってしまうかもしれないんだぜ⁉ そりゃあ、拓弥でなくたって怖くもなるって話だ。
とはいえ、先も言った通り、第三者は黙って静観を続けるの選択一択である。
本当はめちゃくちゃ口出したいけど。言いたい事あるなら、全部言っちゃえって、思いっきり背中叩きに行きたいけど……っ!
(でも、ずっとこのまま無言を続けていても、何も進まねぇし……。一応、今回の企画の言いだしっぺは俺って事を考えると、このままうんともすんとも言わないなら、俺が何かしらのフォローを挟むべきなのか?)
助けてくれ、俺の最強の仲間達ぃーっ! すがる思いで、後ろにいる楽器隊へ振り返る。
が、目につくのは渋い顔をする優作と、オロオロと困ったようにキーボードの前で立ち尽くすたかのっぽくんの姿ばかりで、頼れそうな雰囲気はどこにもない。2人の方も出方を迷っている様子だ。
あ、これあかん、詰んだ。誰にもどうにもできないやつだ。
理解した現状に、思わず心の中で遠いところを見た、
――その時だった。
「パパ」
きらりちゃんが口を開いた。
予想外の展開に、年上組全員の目が一斉にきらりちゃんの方に集まる。
驚きで目を丸める年上4人。しかし、自身に降り注ぐ視線を気に留めた様子もなく、きらりちゃんは拓弥に向かって大きく頭をさげた。
「ごめんなさい」
「え」
「きらりね、ほんとうはわかってたの。パパに会いにいっても、パパはよろこんでくれないって」
顔をあげたきらりちゃんが、呆然と自分を見つめる拓弥を見返す。
ぎゅっと、何かをこらえるように、その小さな手がワンピースシャツのスカート部分を握った。くしゃりと、握られた部分のチェック模様が大きく歪む。
「おやくそくやぶって会いにいっても、ぜったいパパはよろこんでくれないって、わかってた。ママもぜったいおこるって。お父さんもかなしんじゃうかもしれないって。でもね、それでもね、きらり、パパに会いたかったの……っ」
次第に震えを帯び始める、きらりちゃんの声。
それに呼応するように、父親似の大きな目のふちに、じわりじわりと涙がたまっていく。
「パ、パパがね、きらりとおはなしすると、こまっちゃうことも、きらりちゃんとわかってた……っ、パパがね、もうきらりの家族じゃないなら、それできらりのことをきらいなら、きっときらりが会いにいっても、"めいわく"かけちゃうのかもって。きらり、ぜんぶわかってた。
でもね、それでもね、きらり、どうしてもパパに会いたかったの。パパに、きらり、えいごでうたえるんだよっておはなしたかったの……っ」
「きらり……」
「だからねっ、だからねっ、きらり、パパに『きらい』なんて言うつもり、なかったのよっ。ほんとうに、ほんとうよ。きらり、パパのこと、きらいじゃないもんっ。だって、ほんとうにわがまま言ってるのはきらりだものっ。きらり、ちゃんとわかってるもんっ」
「きらり、きらり……っ」と、きらりちゃんがそこで言葉を切った。
今にもこぼれそうになる涙を抑えるためか、グッと顔に力が入れられる。グッグッと、髪色とおそろいの柔らかな色合いの眉の間に、険しい何本ものしわが刻まれていく。ぎゅうっと、スカートを握る手にもさらに力が入れられるのがわかった。
痛々しいほどに力をこめて涙をこらえようとする幼い少女の姿に、それこそ、こちらの胸がぎゅぅっと掴まれるような苦しさに襲われる。
こういう子どもの姿と言うのは、正直見ていてあまり心地がいいものではない。職業柄とか、それ以前の問題だ。
だが――、
(この子、凄いなぁ)
そんな、素直な感心も胸中にわいた。
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