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5章 本気と『本気』と似た者同士
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「…………は?」
シオリちゃんが、ぽかんと口を開けて俺を見返してきた。
「伝える、こと、それ自体……?」
あ然とした声音で、俺の言葉をくり返すシオリちゃん。
あきらかに混乱している様子に、思わず俺も苦笑を返してしまう。
(う~ん、まぁ、そうなりますよねぇ~)
俺だってこんな事言われたら、は? なにそれ? って思いますわ。
いや、主語は? 『伝える事を伝えたい』って、なんだその違和感の塊の日本語は。国語を勉強したての子どもだって、もっとマシな作文書くっつーの。
しかし、俺達が例の楽曲を通して伝えたい事が何かと言われたら、この下手くそな日本語以外に表現できる方法がないのも、また確かな事実だった。
「シオリちゃん、最初に俺達にこの曲のテーマについて訊ねてきた時にさ、『誰かにこういう事を伝えたいとか、訴えたい、励ましたいって思いはないのか』って、そう言ったでしょ?」
「確かに言いましたね」
「俺さ、その時、『わからない』って返したじゃない。『何を伝えたいのか』、わからないって。実を言うと、今も『何を伝えたいのか』は、よくわかってないんだ」
「はあ?」
よりいっそうわけがわからん、と言いたげに、シオリちゃんがしかめっ面をした。
「それじゃあ、結局、テーマはわからないままって事じゃないですか」
「うん。そうなんだけど……、でも、そうじゃないんだ。わからないままである事が、たぶん、あの曲の『正解』なんだと思う」
「正確には、『何を』のところだけが、わからないままでいいんだと思う」そう言葉を続けながら、俺は楽曲のテーマについてバンドメンバーと話した時の事を振り返った。
******
「俺さ、この曲を作った時にね、『誰かに何かを伝えるのって、難しいなぁ』って思ったんだ」
「シオリちゃんともう一度話し合いたい」と提案した俺に驚くバンド仲間達に向かって、俺はそう言葉を続けた。
ロータリーの道なりに置かれたレンガ造りの花壇に座って話し続ける、4人の男達。
人でごった返している場所なだけあって、花壇の周囲も多くの人の姿がある。誰かを待ってるらしい人、誰かと電話中の人、花壇の方を見向きもせずに駅へ向かう人……、老若男女さまざまな人で溢れ返っている。
しかし、これだけの人がいても、誰も俺達の事に気づいた様子はない。そこに座っている俺達の存在を気に留めた様子もなければ、目を向けようとする気配もない。時折、たかのっぽくんの美貌を二度見する人もいたけれど、ほとんどの人は俺達なんて見向きもせずに各々の時間を過ごしている。
それはとどのつまり、ほとんどの人にとって、今ここにいる俺達はただの日常風景の1つで、そこまでさして気にするような存在ではないということ。
自分達の存在を主張したいなら、大声の1つでもあげなければきっと届かない。
それぐらいに今の俺達は、居ても居なくてもいい存在で、かつて夢見たようなビッグなんてものとは程遠いちっぽけな存在なのだ。
その事を否が応でもわからせてくる光景に、なんとなく少し寂しいような、悲しいような、でも仕方ないような複雑な気持ちが俺の胸中に渦巻く。
そんな俺の胸中にバンド仲間達が気づくはずもなく、「『何かを伝える』って、」と拓弥が他3人を代表するように口を開いた。
「それって、歌詞を作るのが難しかったってこと? 歌詞に思いを載せて書くのが難しかった、みたいな」
「それもあるけど、」
作詞に苦戦した当時の自分が脳裏を横切り、思わず苦笑する。
「もっと根本的な『何か』かな。人の想いってか、気持ちってか……、それこそシオリちゃんが言ってたやつに近いかも」
「人に伝えたいものとか、訴えたい、励ましたい事、みたいなやつ」と首をひねりながら言葉を続ける。
自分の考えている事を横にいる仲間達にだけでもちゃんと伝えられるように、慎重に、ない頭を使って言葉を絞り出していく。
シオリちゃんが、ぽかんと口を開けて俺を見返してきた。
「伝える、こと、それ自体……?」
あ然とした声音で、俺の言葉をくり返すシオリちゃん。
あきらかに混乱している様子に、思わず俺も苦笑を返してしまう。
(う~ん、まぁ、そうなりますよねぇ~)
俺だってこんな事言われたら、は? なにそれ? って思いますわ。
いや、主語は? 『伝える事を伝えたい』って、なんだその違和感の塊の日本語は。国語を勉強したての子どもだって、もっとマシな作文書くっつーの。
しかし、俺達が例の楽曲を通して伝えたい事が何かと言われたら、この下手くそな日本語以外に表現できる方法がないのも、また確かな事実だった。
「シオリちゃん、最初に俺達にこの曲のテーマについて訊ねてきた時にさ、『誰かにこういう事を伝えたいとか、訴えたい、励ましたいって思いはないのか』って、そう言ったでしょ?」
「確かに言いましたね」
「俺さ、その時、『わからない』って返したじゃない。『何を伝えたいのか』、わからないって。実を言うと、今も『何を伝えたいのか』は、よくわかってないんだ」
「はあ?」
よりいっそうわけがわからん、と言いたげに、シオリちゃんがしかめっ面をした。
「それじゃあ、結局、テーマはわからないままって事じゃないですか」
「うん。そうなんだけど……、でも、そうじゃないんだ。わからないままである事が、たぶん、あの曲の『正解』なんだと思う」
「正確には、『何を』のところだけが、わからないままでいいんだと思う」そう言葉を続けながら、俺は楽曲のテーマについてバンドメンバーと話した時の事を振り返った。
******
「俺さ、この曲を作った時にね、『誰かに何かを伝えるのって、難しいなぁ』って思ったんだ」
「シオリちゃんともう一度話し合いたい」と提案した俺に驚くバンド仲間達に向かって、俺はそう言葉を続けた。
ロータリーの道なりに置かれたレンガ造りの花壇に座って話し続ける、4人の男達。
人でごった返している場所なだけあって、花壇の周囲も多くの人の姿がある。誰かを待ってるらしい人、誰かと電話中の人、花壇の方を見向きもせずに駅へ向かう人……、老若男女さまざまな人で溢れ返っている。
しかし、これだけの人がいても、誰も俺達の事に気づいた様子はない。そこに座っている俺達の存在を気に留めた様子もなければ、目を向けようとする気配もない。時折、たかのっぽくんの美貌を二度見する人もいたけれど、ほとんどの人は俺達なんて見向きもせずに各々の時間を過ごしている。
それはとどのつまり、ほとんどの人にとって、今ここにいる俺達はただの日常風景の1つで、そこまでさして気にするような存在ではないということ。
自分達の存在を主張したいなら、大声の1つでもあげなければきっと届かない。
それぐらいに今の俺達は、居ても居なくてもいい存在で、かつて夢見たようなビッグなんてものとは程遠いちっぽけな存在なのだ。
その事を否が応でもわからせてくる光景に、なんとなく少し寂しいような、悲しいような、でも仕方ないような複雑な気持ちが俺の胸中に渦巻く。
そんな俺の胸中にバンド仲間達が気づくはずもなく、「『何かを伝える』って、」と拓弥が他3人を代表するように口を開いた。
「それって、歌詞を作るのが難しかったってこと? 歌詞に思いを載せて書くのが難しかった、みたいな」
「それもあるけど、」
作詞に苦戦した当時の自分が脳裏を横切り、思わず苦笑する。
「もっと根本的な『何か』かな。人の想いってか、気持ちってか……、それこそシオリちゃんが言ってたやつに近いかも」
「人に伝えたいものとか、訴えたい、励ましたい事、みたいなやつ」と首をひねりながら言葉を続ける。
自分の考えている事を横にいる仲間達にだけでもちゃんと伝えられるように、慎重に、ない頭を使って言葉を絞り出していく。
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