Herec 2nd~一度音楽をやめた奴らが結成した『社会人バンド』がMVを作る事になった話~

勝哉道花@みちなり文庫

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5章 本気と『本気』と似た者同士

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「それでも、そんな自分でもね、もしこのバンドを通して、皆と一緒に誰かに何かを伝える事ができたら……、それって凄く素敵な事なんじゃないかなって思うんだ」

「だから、おれは透くんの意見に賛成」と拓弥が言葉を締める。
 思ってもみなかった拓弥の言葉に、思わず感動と安堵から言葉が詰まった。

 やべぇ、めちゃくちゃジーンと来た。
 ここが外じゃなかったら泣いてたかも。

「た、拓弥ぃ」と感極まってその名前を呼べば、やはり拓弥が苦笑を顔に浮かべる。

 そうして、感動からまともに話せなくなった俺の代わりをするように、「2人はどう?」と優作とたかのっぽくんの方へ振り返った。

「まぁ、いいんじゃねぇの」と優作が腕を組みながら言った。たかのっぽくんも「皆さんがそれでいいなら、俺も問題ありません」と頷き返してくれる。

「つーか、もともとあの曲の歌詞は透が考えたもんだろ。お前がそこに込めたあれやこれやがあって、それを表現してぇっつーんなら、それに反対する理由はこっちにはねぇよ。まっ、そういう大事な事は、最初からちゃんと考えて作れとは言いてぇけどな」
「えぇ……、優作が優しい……」
「おい、なんだ。俺が優しいのが意外みてぇな言い方は」

「普段から優しいだろうが、俺は」と優作が、ギロリと俺を睨みつけてくる。
 言葉と態度があってないんだよなー。鏡でもあれば、その顔を見せてやれたんだけど。

 その後、渋い顔をするたかのっぽくんを説得する形で、シオリちゃんとの話し合いの場を設ける事が正式に決められた。

 よーし、これでもう逃げられなくなったぞ。どんなに逃げたくても、もうシオリちゃんと会うしかありませーん。そう改めて俺が腹をくくった時、「とはいえ、」と拓弥が顎をさすりながら再び口を開いた。

「透くんの考え方だと、結局『何を伝えたいか』の『何』に曖昧さが残っちゃってるのは変わらないよね。このまま話し合いに行っても、そこをツッコまれたら終わりかもね」

 さすが、我がバンドのまとめ役。そこに気づくとはさすがだぜ。

「そうなのよ~。そこが問題でさぁ」

 思わず俺もガックリと肩を落としながら拓弥に返す。
 すると、俺達のやり取りに思うところがあったらしいたかのっぽくんが、「ですが、」と困惑した様子で口を挟んできた。

「わかりやすい『何か』を作ってしまったら、それこそ酒井さんが最初に言っていた『特定なものじゃなくていい』って考えに反しませんか? 言いたい事が矛盾してしまうような……」
「つーか、この場合、無理に『何か』に絞る必要ってあんのか? 『何かを伝えたい』っつーのがこの曲の想いだってんなら、無理やり限定的な『何か』を取って付けたところで、それこそ後付け感しか出てこねぇだろ」
「でもでも、『何か』の部分が『何か』のままだったらさ、結局何を伝えたいんだー!って話にならね?」
「うーん。でも確かに、優くん達の言う通り、無理やり焦点を絞っても最初の考えと矛盾するのも事実かぁ」

 拓弥、たかのっぽくん、優作と顔をつきあわせながら、楽曲の題材の詳細を煮詰めていく。
 わーわーと、花壇に腰をおろしながら喋り続ける男四人に、やっぱり目を向ける者は誰もいなかった。そんななかで、それでも俺達の『誰か』に楽曲を届けるための話し合いは続けられていく。

 途中で、お昼を過ぎていた事を思い出した優作が「続きは飯を食いながらやろうぜ」と言い出すその時まで、ずっと。
 誰も見てなくても、気づかれなくても、俺達は夢中になってずっと話し合い続けた。

 そうして、皆で導き出した答え。

 それこそが――……。

「『伝える』ことそのもの、というわけですが」

 俺の話を聞き終えたシオリちゃんが、俺に訊ね返してきた。
 相変わらず、シオリちゃんの眉間には深いしわが刻まれている。しかし、先刻のような不機嫌そうな雰囲気はそこにはない。
 どちらかといえば何かを考え込んでいるような印象を受ける。
 難しい問題にぶつかった時、どう問題を解こうか考え込むような、そんな思案を巡らせている雰囲気に近い。

「そう。『何か』の部分をわかりやすい『何か』ひとつのものに焦点を当てないなら、『伝える』そのものに焦点を当てるのはどうかって事になったんだ」

 シオリちゃんに頷き返しながら、説明を続ける。

 最初にその提案をしたのは優作だった。
「特定の『何か』に絞れねぇなら、焦点を当てる箇所を変えたらどうよ」と、昼飯で入った駅前の中華料理チェーン店にて頼んだラーメンを食べながら、そう提案してきた。

「そもそも、最初のきっかけは『何かを伝える事は難しい』っつー考えから来てんだろ。つーことは、問題は『難しい』って感じた点にあるわけだ。なら、要点は『何か』じゃなくて、『伝える事が難しい』って部分にあんじゃねぇの」

 サラッと、それこそ、その時に俺が食べていたカニ炒飯のさっぱりとした味付けの如く。
 あっさりとした声音で告げられた考えに、俺の目が点になったのは言うまでもないだろう。
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