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5章 本気と『本気』と似た者同士
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俺の隣で餃子定食を食べていた拓弥も、優作の隣で中華丼を食べていたたかのっぽくんも、その発想はなかったというように、目を丸めて食べる手を止めていた。
(言われてみりゃあ確かに、このテーマって、『難しい』の部分に帰結してるわけだもんな。『何かを難しい』って日本語は不自然だけど、『伝える事は難しい』なら、まだ日本語として成立するの……か?)
目を白黒にする俺の横で、「そんな事、よく思いついたね」と拓弥が感心した様子で優作に返す。途端優作が「仕事柄、ヒアリングは得意なんでな」とドヤ顔をした。
SEって、ヒアリングなんて事もやんのか。
この短気なゴリラが、他人の話を大人しく聞いてる図とか、全然想像つかねぇの、俺だけですか?
とはいえ、感心していないといえば嘘になるので、口に頬張ったばかりのカニ炒飯を食べながら、俺も拓弥同様に「はるほもな⁉」と素直に感心の声をあげておいた。
返ってきたのは、「バカッ、食いながらしゃべんなっ、飯粒が飛んでくんだろっ」という怒鳴り声だったけど。
解せぬ。
……とまぁ、そんなやりとりはさておき。
その後、改めて『伝える事』に方向性を持っていく形で話を進めた結果、『伝える事』そのものをテーマにしよう、という結論が俺達の間で導き出されたのだった。
「……テーマが決まった経緯はわかりました。ですが、それなら別に『伝える事は難しい』をそのままテーマにしてもよかったのではないですか」
シオリちゃんが、しかめっ面をしたまま問い返してきた。
「そもそも、音楽そのものが誰かに楽曲を聴いてもらう、つまりは作ったものを誰かに『伝えよう』とする行為そのものだと言っても過言ではない代物ですよね。特に皆さんがやっているような歌詞ありきのものは、音楽の中でも非常にメッセージ性が強いジャンルのはずです。今でこそ問題視されてはいますが、たとえばバンドの代表的なジャンルにあたるロックなどは、世界的に見れば政治的な利用もされていた時代もありますし、現代でも社会風刺的なテーマを持つものは多く存在しています。
伝える事に主体を置いてる部分がある作品で、『伝える事』にだけテーマの軸を置くのは題材としては不自然なのではないでしょうか」
「私、言いましたよね。ただの身内盛り上がりなものを見せられて、楽しくなれる人が居ると思いますかって」とシオリちゃんが言葉を続けながら、さらに睨みを強くしてくる。
(う~ん、相変わらず手厳しい)
そこまでツッコんできますかぁ、と思わず顔に浮かべている笑顔がひきつりそうになるが、同時にふとある事に気づき、おや? と首をかしげた。
「なんかシオリちゃん、ずいぶんロックの歴史について詳しいね」
確か、以前たかのっぽくんから聞いた話だと、たかのっぽ家は基本的にクラシックメインの音楽一家で、俺達がやっているようなサブカル寄りの音楽にはあまり触れない家との事だったはずだ。
だからてっきりシオリちゃんも、バンドやロックといったものには、あんまり詳しくないのかと思っていたのだけど……。
まさか政治うんぬんとか社会風刺とか、そんな言葉を今この場面で聞かされるとは思ってもみなかった。
シオリちゃんがハッとしたように、目を見開いた。しまった、とでも言いたげな表情が、その顔に浮かぶ。
が、それも一瞬の事で、パッと俺が瞬き一つした次の瞬間には、すぐに元の険しい表情に戻っていた。
「別に。このぐらいネットで調べればすぐにわかる事です」
「……」
ネットで調べたんだ――、とツッコんだら、また睨まれるやつですよね、これ。
(言われてみりゃあ確かに、このテーマって、『難しい』の部分に帰結してるわけだもんな。『何かを難しい』って日本語は不自然だけど、『伝える事は難しい』なら、まだ日本語として成立するの……か?)
目を白黒にする俺の横で、「そんな事、よく思いついたね」と拓弥が感心した様子で優作に返す。途端優作が「仕事柄、ヒアリングは得意なんでな」とドヤ顔をした。
SEって、ヒアリングなんて事もやんのか。
この短気なゴリラが、他人の話を大人しく聞いてる図とか、全然想像つかねぇの、俺だけですか?
とはいえ、感心していないといえば嘘になるので、口に頬張ったばかりのカニ炒飯を食べながら、俺も拓弥同様に「はるほもな⁉」と素直に感心の声をあげておいた。
返ってきたのは、「バカッ、食いながらしゃべんなっ、飯粒が飛んでくんだろっ」という怒鳴り声だったけど。
解せぬ。
……とまぁ、そんなやりとりはさておき。
その後、改めて『伝える事』に方向性を持っていく形で話を進めた結果、『伝える事』そのものをテーマにしよう、という結論が俺達の間で導き出されたのだった。
「……テーマが決まった経緯はわかりました。ですが、それなら別に『伝える事は難しい』をそのままテーマにしてもよかったのではないですか」
シオリちゃんが、しかめっ面をしたまま問い返してきた。
「そもそも、音楽そのものが誰かに楽曲を聴いてもらう、つまりは作ったものを誰かに『伝えよう』とする行為そのものだと言っても過言ではない代物ですよね。特に皆さんがやっているような歌詞ありきのものは、音楽の中でも非常にメッセージ性が強いジャンルのはずです。今でこそ問題視されてはいますが、たとえばバンドの代表的なジャンルにあたるロックなどは、世界的に見れば政治的な利用もされていた時代もありますし、現代でも社会風刺的なテーマを持つものは多く存在しています。
伝える事に主体を置いてる部分がある作品で、『伝える事』にだけテーマの軸を置くのは題材としては不自然なのではないでしょうか」
「私、言いましたよね。ただの身内盛り上がりなものを見せられて、楽しくなれる人が居ると思いますかって」とシオリちゃんが言葉を続けながら、さらに睨みを強くしてくる。
(う~ん、相変わらず手厳しい)
そこまでツッコんできますかぁ、と思わず顔に浮かべている笑顔がひきつりそうになるが、同時にふとある事に気づき、おや? と首をかしげた。
「なんかシオリちゃん、ずいぶんロックの歴史について詳しいね」
確か、以前たかのっぽくんから聞いた話だと、たかのっぽ家は基本的にクラシックメインの音楽一家で、俺達がやっているようなサブカル寄りの音楽にはあまり触れない家との事だったはずだ。
だからてっきりシオリちゃんも、バンドやロックといったものには、あんまり詳しくないのかと思っていたのだけど……。
まさか政治うんぬんとか社会風刺とか、そんな言葉を今この場面で聞かされるとは思ってもみなかった。
シオリちゃんがハッとしたように、目を見開いた。しまった、とでも言いたげな表情が、その顔に浮かぶ。
が、それも一瞬の事で、パッと俺が瞬き一つした次の瞬間には、すぐに元の険しい表情に戻っていた。
「別に。このぐらいネットで調べればすぐにわかる事です」
「……」
ネットで調べたんだ――、とツッコんだら、また睨まれるやつですよね、これ。
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