僕は空「気」になりました

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5章 遥かなる愛

僕は空「気」になりました

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炎が揺らめき、地獄が広がるこの地で、君――太陽との再会は予期せぬ出来事だった。

この数日、僕は冷気となって君の周りを漂っていた。

連日続く地獄のような光景の中、君の瞳からは涙が幾度も乾いては溢れ、表情からは正気が失せていた。瞳が年老いていくのが分かった瞬間、君の声が小さく響いた。「空、空、助けてくれ」と。

その声に、僕は10年前、あの黒く冷たい海へと沈められた日のことをゆっくりと思い出した。  

あの日はひどく暑く、二人で自転車に乗って海へと向かった。

太陽の首筋を流れる汗が、陽光に照らされて宝石のようにキラキラと輝いていた。

後ろからそっと見つめながら、僕は君の腰に手を当てた。太陽は細くしなやかな体をくねらし、「くすぐったいって、やめろよ」と笑いながら振り返った。その笑顔は、誘うような光を放っていた。

君の香りが近づくにつれ、君との距離が消えた。

僕はそっと背中に顔を寄せた。「やめろよ」と言うけれど、太陽の背中は温かく、しっかりと僕を受け止めてくれた。

「しっかり掴まってろ!」と君が言うと、自転車はぐんぐん加速した。海へと続く道を、風を切って走る。

太陽の汗が僕の肌に染み込み、全身で君を感じていた。

小さな声で「好きだよ」と呟くと、太陽は片手で僕の膝を軽く叩いた。

――聞こえていたのだろうか。  

それは二人だけの、幸福な無の時間だった。

そして、僕らは海に着いた。見慣れた海とはまるで別世界だった。

夏の田舎の海は、平日ともなれば賑わいもなく、君の匂いが溶け合う魅惑の潮の香りが漂っていた。そこは僕と君、僕と太陽だけの世界だった。

沖へと続く堤防の先端は、二人だけの聖域だった。

太陽は海に着くなり、堤防の先端から勢いよく飛び込んだ。

青空に映える、しなやかで程よく筋肉のついた体が弧を描いてダイブする。色白な肌が陽光に照らされ、誘惑の香りを残して海へと消えた。

君は魚のようにキラキラと光りながら泳いでいた。

「空、早くこい!」と眩い笑顔で僕を呼ぶ。

僕は堤防の梯子をゆっくり降り、海へ入った。

君はまるで獲物を狙うサメのように、素早く僕に近づいてきた。

立ち泳ぎをしていると、君は僕の耳元で「好きだよ」と囁き、頬に軽くキスをした。

そして、ぐんぐん水中へ潜っていく。

僕も獲物を追うサメのように太陽を追いかけた。

水中は、本当に僕ら二人だけの空間だった。

手をつなぎ、魚のように泳ぎ回った。

そして、初めてのキスをした。

太陽の体から僕の体へ、熱い空気が流れ込む。

僕も君の体に空気を送り、誘惑の遊びのように戯れた。

そしてけたたましく鳴り響く救急車のサイレンで

再び、地獄の世界へと引き戻された

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