異世界召喚されたが役立たずと言われ砂漠に捨てられたので、廃墟だった地下都市の王になり世界を征服することにした

魔茶来

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1.もらってくれたら、命を捧げます

それは俺のことだが、俺とは違うはずなんだ

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 『アクアのエレメント勇者ヒーローの子供』
 その言葉を聞くと呆気に取られて次の言葉が出なかった。

 もちろん俺の子じゃないのは明白なはずだ。
 つまり前アクアのエレメントの勇者ヒーローの子だろう。
 でもどういうことなんだろう?
 大体召喚者というか基本的に勇者ヒーローって子供作れるの?
 蟻頭とか人間じゃないのもいたぞ?

 前のアクアの勇者ヒーローって人間だったのかな?
 そう言えば俺を砂漠に捨てた男が、ぼそぼそ話していたような気がする。

 五大元素の勇者ヒーローの召喚、奴の国が二名と敵対する国が二人召喚していた。
 そして残りのアクアの召喚石はセグリエ王国という小国が持っていたものを滅ぼして手に入れ、俺を召喚したと言っていた。

 よって前のアクアの勇者ヒーローはセグリエ王国に居たと言うことだ。
 そう考えると、この小僧は滅ぼされたセグリエ王国の子供と言うことになる。

「早く水と食べ物を・・・」
 剣を構えたままだが小僧はフラフラだ、顔が赤く息が荒い。
 多分熱中症じゃないか?

 色々考えて居るとラミアが砂丘の裏にある何かに気が付いたらしく、そちらに移動しようとした。

 すると、剣を向けていた小僧は慌てた様子になった。

「ひ、ひっ、姫・・、妹に手を出すな、そっちには行くな、行けば容赦しないぞ!!」

 そう言うとラミアに向かって剣を振りかざそうとした。

 俺は咄嗟に結界鎧を纏い彼の剣を払い退けるつもりで払うと、何とその剣が折れてしまった。

「えっ、ええ・・父さんがくれた剣が折れた」
 だが小僧はそう言いながらも砂丘の裏に走って行った。

 急いで俺も行くと、先に到着したはずのラミアの様子がおかしかった、そこに存在するものをジッと見つめている。

 砂丘の裏には隠すように少女が寝かされていた、赤い顔に荒い息、小僧と同じで熱中症だろう。

 その少女を見つめて動きを停止したようなラミア。

「どうしたラミア」
 そう声を掛けるがラミアは動かなかった。

 見た感じ少女の症状は深刻だった。
「ラミア、この娘を抱えて戻るぞ。このままだと死んでしまう」

 小僧が飛び掛かってきた。
「妹に触るな・・・」

 だが、小僧も限界だったようで、俺に飛び掛かるとそのまま意識を失った。

 ローブは被っていたが小僧の体は異常に熱い、これは二人に死の危機が迫っているのは明白だった。

 そしてラミアもおかしい、あれから何も言わない。

 急いでフェスリーを隠しておいた場所まで戻ると、結界内に少年たちのスペースを創生する。

 ラミアが二人を魔法で治そうとするが止めた。

 少なくとも熱中症を直接治療する魔法は無いだろう。
 この水も無い場所で体の水分不足や多くの原因で起こっていることを魔法で処理することは良い結果にはならないと判断した。

 そうだ失敗すると最悪は死んでしまう、順序を追って処理するのが正しい処方である。

 まずは結界内の室温調整で涼しい場所を確保し彼らを寝かせた。
 次に分厚い日よけのローブは脱がし、きつい衣服を緩め、体を冷やす準備をする。
 冷たいタオルを使い体の外から冷やす、この時太い血管が通るところを冷やすと効果がある。
 
 また酷い日焼けもあるが、これはラミアに魔法に治してもらう、この辺りは軽い火傷の治療なので魔法でも治ると考えた。

 最大の問題は体の水分補給である、気を失っている二人にどうやって飲ませるかだ。
 病院なら点滴が出来るのだが、そんなことは出来ないよな?

「点滴が出来れば・・・」
 そんなことを言っているとラミアが「点滴ってなに?」と聞いてきたので説明した。 

 ラミアは少し考えてからゴソゴソと何かを探し始めた
「ラスズミの茎を使えないかしら」
 そういうとラミアが例の魔法で薬師から貰った草のようなものを取り出してきた。

「ラスズミの茎って?」

「この細い茎は魔法で伸びるのよ、これで水のようなものを病人に飲ませることができるわ」

「便利なものがあるな、流石異世界だ」

 早速やって見よう、まずは水分と言っても体が吸収するのに適した水が必要だ。
 塩分を少し補給できる程度の塩と別途電解質物資とを少し混ぜたものを作る。

 ラスズミの茎の実験台に小僧の口にその茎を差し込んでラミアが魔法を掛ける。
 そうすると茎はスルスルと内臓まで達した。
 おれは、茎の先にある膨らみに入れた電解水をその膨らみごと少し押す。

 すると電解水が内臓まで届くのだ。
 小僧への水分補給は成功したようなので、少女にも同じ処方をしておく。

 ただし血管に直接入れてないので体中に回るまでは時間が掛かると覆われるので、そのまま二人の様子を見ることにした。

 夕方に小僧が先に目覚めた、でも小僧がなんだか騒がしい。
「ここはどこだ!!俺達をどうするつもりだ」 

 実は小僧は縛ってある。
 なぜかって?、そりゃ剣を振りまわしていたのだ。
 ある意味危険人物だよ。

 その声騒がしい声に少女も目覚めた。
「どうしたのです騒がしいですよ、サンクス」

「ロザリア様、申し訳ございません。捕まってしまいました」

「ここはどこですか?牢なのですか?」
 少女は起き上がった。

 その様子を見たので俺は少女に声を掛けた。
「まだ起きない方が良いよ」
 少女はこちらを向きエメラルドグリーンの大きな目で俺を見た。

「貴方は?」

「ジェイだ、というかそれはラミアが付けた名前だけどね」
 横のラミアを見た。

「私はラミア、貴方は砂漠で倒れていたので助けたのよ」

 小僧がなんか大きな声で否定する。
「嘘ですロザリア様、俺たちはこいつらに捕まったのです。それが証拠に俺は縛られています、きっとリサンダ王国の手の者ですよ」

 全く口の減らない小僧だ、つい反論してしまう。
「大体お前が強盗のような真似をするから縛ってあるんだ」

「強盗とは失礼だぞ。俺は水と食料を分けてもらおうとしただけだ」

 なんか俺もむきになる。
「だいたい人にものを頼むのに剣で脅すのは強盗だろ!!」

 少女が笑い始めた。
「リサンダ王国の手のものなら気を失っている内にリサンダ王国に引き渡しますよ。それにこの人たちは私達に敵意はありません、それどころか治療をして頂いたようですよ。サンクス安心しなさい」

 小僧は食い下がっていた、自分が縛られているのが余程腹立たしかったのだろう。
「ロザリア様、騙されてはいけませんよ、きっと今から引き渡されるんですよ」

「貴方は人を疑うことを辞めた方が良いですね。この人たちは私達の恩人です」

 結局少女の諭すような一言で少年も大人しくなった。

「ラミア様とジェイ様、申し訳ありません、サンクスがご迷惑をおかけしたようですね、非礼はお詫び申し上げます」

 ラミアは彼女の顔が気になるのか、まじまじと見ながら話しかけた。
「良いのよ、そんなことは大丈夫。子供はこんな砂漠に入っちゃダメよ」

 その言葉にまたしても小僧は反発する。
「子供扱いされるのは心外だ、俺はアクアのエレメントの勇者ヒーローの息子だ」

「あほな小僧だな、アクアのエレメントの勇者ヒーローの息子でも子供は子供だろ」

「偉そうに言うな、お前は俺の大事は父さんから貰った剣を折ったんだぞ、絶対に許さないからな」

「あんな簡単に折れる剣を持っているから悪いんだよ」

「何!!、人の大事なものを壊してその言い草か、謝れよ!!」

「ジェイ大人げ無いわよ止めなさい」
 言い返そうとしたがラミアが制止した。
 ラミアに諭されて言い合いを辞めた。
 どうもこの小僧とは馬が合わないな。

「申し遅れましたが、私はロザリア・フラネル、こっちに居るのは兄のサンクス・フラネルです」

 嘘が下手な兄のお陰でバレバレだよ、お姫様。
 でも俺たちは大人だから知らないふりをすることにした。

 今までのやりとりからどう考えても、この少女はセグリエ国の王女だろう、少年は護衛という所か?
 だが子供だけでこの砂漠で何をしようとしていたんだろう?

「ロザリア達はこの砂漠で何をしようとしていたんだ?」

「ジェイの馬鹿野郎、ロザリア様を呼び捨てにするのは止めろ!!」

「サンクス、良いのです。それより貴方は恩人に何という口の利き方をするのですか?」

 全く設定に無理があるな、姉と弟にした方が良かったんじゃないかな?
 茶番が全く茶番にもなっていない、もう全てがバレバレだ。

「私達はこの砂漠にあるドラゴンズゲートを探しに行こうとしているのです」

「ドラゴンズゲート?何だそれ、ラミアは知ってる?」

 ラミアは首を横に振りながら「いいえ知らないわ」と答えた。

 ロザリアは少し気落ちしたようになった。
「ドラゴンズゲート、伝説の都市への入り口。そこには目印として砂漠の中に大きな龍の石像があるそうです」

 大きな龍の像と聞いてラミアに心当たりがあるようだった。
「龍の石像ならあるところを知っているわ」

 ロザリアはそれを聞くと興奮を押さえられない様子でラミアの顔を見ていた。
「し、しっ知っているんですか?、教えてください」

「ええ、でもあれはセンターデザートの南側、ここからだと相当距離があるわよ。子供の足では無理ね」

 少女は悲痛な顔をしながらも決心したような顔をした。
「それでも行かなければならないのです」

「だめ、絶対無理。色々な毒虫、野獣、魔獣色々なものがいるのよ。普通の大人ですらまともに行けない所です。子供だけでは無理です」

 サンクスはお花畑な奴だからバラ色の話をする。
「そんな奴らは俺が全部俺がやっつけてやるさ」

 この馬鹿の頭に拳骨を与えておく。
「あほ、何の根拠もなく言うなよ。何も分からないのに大丈夫なんていうのは無謀でしかないんだ。そんなことをいう奴はバカだ。今日だって熱中症で死にそうだったんだろ、もっと慎重にならないとダメだ。」

 小僧はそれでもあきらめなかった。
「俺たち達には高貴な目的があるのだ。お前達の指図は受けない!!、それと父さんが言っていたんだ、アクアの勇者ヒーローは俺たちが困っていたら必ず助けに来るんだ」

 それは今は俺のことだよ。
 でも俺はアクアの勇者ヒーローじゃないと言ってここに捨てられたんだ。
 だから、アクアの勇者ヒーローなんて今の俺には関係ないんだ。

 小僧、残念だけど、俺が死なない限り新しい奴は召喚できないんだ。

「聞いたことがあるぞ、アクアの勇者ヒーローは死んだんだろう?」

「違うアクアの勇者ヒーローは別の国で召喚されたはずだ。でも人型であるアクアの勇者ヒーローは人の心が分かるから、この世界の殆どの国の大人は腐ってしまっていることも分かるだろう、だから召喚されたら俺たちにセグリエの正しさを理解して味方してくれる。そうさどこの国に召喚されてもアクアの勇者ヒーローは俺たちの味方になってくれるはずだ」

「そんなにうまくは行かないよ、きっと召喚した国の味方になるさ、アクアの勇者ヒーローのことは忘れなよ」

「ジェイの馬鹿野郎、お前に何が分かるんだ、父さんが言っていたんだ絶対にアクアの勇者ヒーローは来てくれるさ」

 馬鹿な奴だ、だからそれは今は俺のことだ。

 『俺が死なないと召喚できない者』を待ち続ける小僧。

 俺は罪悪感と責任感のようなものが沸き上がるのが分かった。
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