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02.眠れる国の王女様と獣の王とアーティスト

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 資料を読み進めるうちに彼等の恐ろしさが分かって来る。

 それは聞いていた以上だった。

 彼等三人の最終奪還作戦では膨大な量のサイボーグや獣ボーグ、アンドロイドが投入された。
 だがその大半が戻って来なかった。
 その数だが・・・
  ・サイボーグ隊員 千名
  ・獣ボーグ    5百匹
  ・アンドロイド  千五百体(マリオネットを含む)

 このうちの9割が戻って来なかった、破壊ではなく戻って来なかったと記載されている。

 もちろん奪還計画なので犯人側の兵器の使用による被害もあるが、最大の原因が彼等三人が抵抗した結果だった。
 もし彼等を説得できていなければ計画は失敗し全滅ということになっていただろうとも記載されていた。

 彼等のふざけたニックネームしか知らなかった俺は驚いた。
 ・『獣の王』
 ・『アーティスト』
 ・『眠れる国の王女様』

 ふざけたニックネームとは裏腹に恐ろしい力を秘めた者達だった。

 被害者である彼等を、なぜこの部隊に入れたのか?
 彼等をリアル世界に戻すために、彼等の力を彼等に知らせることが必要・・・
 ・彼等をリアル世界に戻すことが主目的
  だが、彼等に力の制御を教育すること

 つまり俺の仕事の主なことは彼等をリアル世界の『人』に戻すことだった。

 なるほど責任重大だと言うことだな。

 そろそろ隊員達との顔合わせと挨拶の時間だな。

 彼等はまだ各人に合わせたVRMMOゲーム世界チャネルの中でほとんどの生活をしている。
 早くリアル世界に戻そうと多くの人が彼等のために努力している。
 そして彼等も進んでリハビリをしているはずだが・・・
 今の彼等にとってはリアル世界も彼等にとっては仮想世界RPGの中のチャネルの一つとして考えているようだ。

 さっきの資料にも書いてあるが、このリアル世界もファンタジーゲームのチャネルひとつだと言い切っているらしい。

 それも制限の多いゲームで面白くないとか言っているらしい。

 --部屋を移動する。

 隣の部屋には三つのカプセル状の仮想世界へのダイブカプセルがある。

 多分多くの人はもっと簡素なアクセサリでVRMMOに入り込めるはずだから、この大袈裟な装置は物凄く旧式な装置だと思うだろう。

 だが実はこれは彼等専用に作られた最新式の特殊ダイブカプセルであり、その機能は『拡張神経接続用』の仮装ダイブマシーンである。

 彼等のように生まれる前の状態でこの装置で育ったものしか使えないマシーン。
 この装置は『拡張神経』を育てるのが目的のため人を人として育てることは出来ない。

 お分かりと思うが酷い装置だ人道的に問題がある。
 そうだ、犯罪組織が子供を誘拐し最強の兵士に育てるために作ったものを我々が彼等をリアル世界に戻すために改造したのだ。

 あの事件の犯人はある大国と結託したVRMMOゲームの最大手ガイアサイジングがVRMMOゲームを隠れ蓑にした最新の兵士の作成実験だった。
 あの事件以降ゲーム会社は運営と経営陣を刷新し継続しているが大国は表舞台には現れなかったので罰せられてはいない。

 さっきの資料を読む限り、もし他の国で同じように彼等キメラの能力を持った子供達が再度育てられているとしたら、恐ろしいことだ。

 三つのカプセルから見えるまだ幼い顔をした三人が恐ろしい力を秘めているとは誰も思うまい。

 そんなことを考えて居るとカプセルが開く。
 起きたのは男の子のようだ、顔は資料にあった堂本さんのご子息のようだった。

「来たのが分かるのか?」

「さっきからそこのカメラの内容を俺のチャネルのモニターで見ていたんだ。新しいリハビリとか仕事とかと聞いていたんだけど、あなたがそこの課長さんだね」

「ああ、そうだ巣鴨と呼んでくれ」

 彼は堂本レオン、通称『獣の王』。
 彼の済んで居るVRMMOの世界チャネルの中での彼の通称だ。
 
 密林の世界チャネルのRPG。

 彼はラスボスを演じているらしい。
 レベルが高い勇者たちが来るとそれに合わせた動物や架空の動物になって相手をする。
 今まで負けたことが無いらしい。
 それではゲームにならないだろうと思うのだが、このゲームはそれで良いらしい?

「課長だって?ということは部長もいるの?」

「いや部長は聞いていないな?」

 そうするともう一つのカプセルが開く。
「うるさいな、騒音レベルの話声だぞ、安らかな時間の妨害だ。彼女と一緒なんだから静かに頼むよ」

「おい、アダルトゲーム世界チャネルにダイブしていたのか?」

「このカプセル接触センサも良く出来ているんだ。最高のXXXだったよ」

「いやいや、お前はクレストロ世界チャネルでラスボスやっているんじゃないのか?」

「いつもクレストロ世界チャネルに居るとは限らない、8時間労働で後は自由時間、癒しサイトで嫁さんと一緒にイチャイチャさ」

「嫁さんだって?」

「そうそう、三人ほどと婚姻届も出したよ」

「いやまだ14歳だろ?」

「そんなモノちょちょいのちょいさ」

「ダメだろ、もうお前も警察機構の一人だぞ?」

「仕事時間以外はどの世界のゲームチャネルで遊んでも良いんだろ?」

「お前リアルの世界が分かっているのか?」

「仮想世界と一緒だよ、何も変わらない、特筆すべきは嫌になるほど制限が多いと言うことかな?」

「一度法律を教えた方が良いみたいだな」

「相変わらず小難しいことをいう奴が多いな、分かったよ操作説明書とヘルプは読んでおくよ」

「いや、無いから、この世界はリアルだから!!」

 ちなみにこの生意気な奴は中島来栖、通称『アーティスト』だ。

 音ゲーやダンスなんかの音楽・リズムや体を動かすゲームと幾何学や数字の数学ゲーム、それと芸術を混ぜ合わせたようなミニゲームが連なったゲームワールドに対戦者やラスボスで君臨している。

 単的に表現するなら、天才で芸術家、そしてスケベだ。

 こいつはあちこちのゲーム世界チャネルに浸り過ぎてリアルワールドでの常識が少し欠けているようだ。

 最後のカプセルは開かない。。
 本当のラスボスは身体的に眠っているようだ。
 ただし、精神的には起きてチャネルに入っている。
 そんなことが出来るのが最後のこの子の恐ろしいところだ。

 通称『眠れる国の王女』

 彼女は三人の中で唯一脳に手術の痕がある。
 そして救い出してからも彼女がどこの誰か分からなかった。
 つまり名前も分からなかった。

 彼女の名前は桜川有巣アリス
 ---ただし仮称だ。

 警察機構による彼等三人の奪還激

 ・・・・三人は何も知らず警察機構に抵抗した。
 最終的に警察側の犠牲者は大きすぎた。

 彼等の中でも今の警察が恐れる有巣アリスの力。

 作戦中、犠牲者の七割は有巣アリスの力で負傷もしくは死亡した。

 彼女のRPGゲームチャネル、それはゲーマーが冒険者となりパーティを作っていく。
 やがて町を作り最後に国を作る。
 もちろん国なので農業をする者商業をする者、学生や赤ちゃんも居る国だ。

 その間も彼女は冒険者や魔獣になったり、町の悪徳政治家等々町を作り上げる邪魔をする役割を果たして行く。

 それでも国を作り上げたものは最後のラスボスつまり彼女の国と戦う。

 ちなみに参加者は千名以上で国が出来るということだ。
 そしてゲーマーの作る国は多い時には二百を超えると言われている。

 このチャネルのリアルさが故に挑戦者は多い。

 国になった時点でラスボス(つまり彼女の国)と戦争になるという訳だ。
 参加者は千名以上で彼女と戦う。

 ラスボス=つまり彼女の国というのはおかしな表現だって?

 実は彼女は国軍だ、つまり彼女は国レベルに集合したゲーマーを一人で相手にする。
 彼女はこのRPGのラスボス、それも国というラスボスだ。

 国の全機能、全兵力を使いこなす王女それが彼女だ。

 奪回作戦の時、彼女は「マリカリウス」という兵器を操っていたらしい。
 その兵器は現在も何処かに封印されていると言われている。

 「マリカリウス」とそれを操る彼女は国に匹敵する戦力であると言われている。

 兵器次第では一人で国を相手に出来る。

 本当は彼女は隊員というよりは『警察機構に保護されている』と言った方が良いだろう。

 彼女には何時までも安息の睡眠を与えてやりたいと思った。
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