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03.百獣の王①
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サイボーグ研究が急激に進んだ要因は戦争での戦闘員の強化が始まりだという。
だが戦争が終わると、民生用として戦争被害者や障碍者の無くなってしまった機能を補完するための四肢や臓器への応用が研究されさらに研究が進んだ。
この結果現在ではバイオ臓器や培養臓器を始め色々な体の部位が代替部品として開発されている。
その精度は殆ど義手とは分からないほど精巧なものだった。
この時代ではこのような生体代替部品を利用し医療の幅を広げていた。
もちろんペット用として動物の代替部品のあった。
だが、兵器で利用されたものが民生品として発展したにもかかわらず再度兵器に転用され始めた。
これらの技術は再度サイボーグとして兵士を強化するための方法として利用された。
人の世界では一部改造の強化サイボーグだけでなく脳の一部を含む全身改造のサイボーグも現れている。
-- 獣ボーグ --
それはAIコマンダーが組み込まれた動物をサイボーグ化した兵器だった。
単純なAIコマンダーを組み込んだ動物のアンドロイドであるアニマロイドとは違い本能と言う意思がある。
獣ボーグは意思があることでAIでは出来ない判断パターンを構成できた。
◆ ◆
巣鴨が着任し居室に入る数時間前八角研究所の研究チームの大崎がプラン開始の号令をかけた。
「プラン・ダブラニムを開始する。全員モニタリングの準備をしてください」
「「「了解しました」」」
研究所員達はディスプレイを前に一斉にヘッドセットを装着し準備する。
ガラス越しに見える獣ボーグとアニマロイド数体の部隊を見ながら大崎は本部の永井邦香に自慢げに話しかける。
「邦香君見たまえ。
ダブラニムで使うのは獣ボーグをマスタとしてアニマロイドをスレーブとした兵器なのだ。
今まで指摘された獣ボーグとアニマロイドの弱点を克服したものだ」
「獣ボーグの反応速度の遅延の問題も解決したと聞きますが?」
「邦香君、何が遅延を起こしていたと思う?
最初は拒否反応だと思っていたのだが、実は獣ボーグの大きさだったんだよ。
今までは獣ボーグを大きくし過ぎたのだよ。
今回は司令塔として最大の大きさまでで押さえてある。
あれを見たまえ。
改造後もちゃんと元と同じ速度で四肢を動かせているだろ」
「すいません大崎博士、高速で動作していないので分かりませんよ。
でも理論的にはその通りですね」
「まずは獣ボーグ一体とアニマロイド五体の試作部隊でこの国の警察機構にテストしてもらうとしようかじゃないか」
「どう対応しますかね?」
「警察は数で来るだろうな」
「あれ?兵器は装備しないのですか?」
「兵器は、あの爪と尻尾があるからね。それ以外は装備しない」
「何故ですか?」
「簡単だよ兵器を使うと足が付き易いんだ。
装備するなら後の残らないもので、捕獲された場合も兵器自体の出所が分からないものでないとね」
「確かに銃やミサイルは火薬を始め証拠が残りやすくて作られたところが直ぐに分かりますからね。でも大丈夫でしょうか?」
「大丈夫さ。この国のレベルでこの試作部隊を捕獲もしくは倒せるものはいない」
場内広報用のスピーカから実況が流れ始めた。
「獣ボーグ『ガンドール』のAIコマンドへプランを投入完了」
『ガンドール』は休んで伏せていた体制から立ち上がる。
その動作の後、各アニマロイドは指令されてスイッチが入ったように立ち上がった。
「ガンドールの拘束具解放。格納庫の扉開きます」
格納庫の扉が開き始めるとガンドールは上を向き大きく遠吠えする。
「ぐぉ~っ」
大きな電子音が格納庫に木霊するとともに、その後アニマロイドも応答するように遠吠えた。
「ガンドール暴れて来い!!」
大崎の指令がスピーカから流れると一気にガンドールとアニマロイド部隊は目的地に向かって走り出した。
◆ ◆
何も起こらなければ、それでも良い訳でその時間で彼らをリアル社会に戻す行動をすれば良い。
ということで初日から事件など起こらないだろうと思っていたので同じ世界にダイブしようかと思っていた。
だが有巣は眠っているし来栖は『大人の時間』とか表示したまま連絡が出来なくなった。
「全く、十四歳でよくやるよな・・」
ということでレオンだけが相手してくれそうだったので密林世界にダイブする準備をしていた。
「フォアン、フォアン、フォアン、フォアン」
非常アラームが鳴る。
俺の隊は子供が多いので大きなベルではなく可愛いアラーム音にしてある。
ここだけの話だが、有巣が起きないようにするためだという噂もある。
直ぐに上の指令センターの中村指令に連絡してみる。
「巣鴨か、支援要請が来ている・・・というか支援指令だ。
N市で所属不明な獣ボーグとアニマロイド集団の襲撃を受けてるとのことだ」
年下なのに相変わらず上から目線だった。
俺の上官だから仕方がないけどね。
「獣ボーグとアニマロイドならN市で対応できるだろ?
なんで俺の所なんだ?」
「獣ボーグの動きがセオリー通りではなく、本当の俊敏な動物のようだという。
それと今までにないソフトウエアを使っているようでアニマロイドの動きが違うらしい。
そんな訳で『獣の王』の出番だ」
「ちょっと待て、なんでそこまでお前が指令するんだよ?」
「細かいことは良いんだよ。ともかく出動だ」
仕方がない、出撃させることにする。
そうさ他の二人ではなくレオンであれば問題はない。
「レオン出動できるか?」
「はい。あまり自信はありませんが」
初めての出動に緊張しているのだろうか自信がなさそうだった。
「大丈夫だろう」
前回の奪回作戦での彼らの攻撃は犠牲者の数からしても無敵と言えるだろう。
だがそのことを言うのは厳禁だ。
そう彼らを人、いやリアル世界に戻すのが目的だからだ。
でもそんな彼らに頼る今の俺達、大人の事情は頂けないな。
彼らの支援マシンは三機が新規に開発されていた。
来栖のための「ザナドゥ」、レオンのための「ベスティア」、有巣のための「ワンダラー」である。
「ベスティアを準備するが、初めてだからリモートで操作するか?」
「ベスティアはマニュアルは読んでいるしシミュレーターで練習しておきましたよ。
それとN市で起こっている襲撃だったらリモートではレイテンシーが問題になるのでクラウドからでは操作できませんね」
流石だ、既に調査済みか・・
着任する前からそこまでやっているのか・・・
本当に彼らにとってリアルワールドもRPGの世界の一部なんだろう。
遊んでいる間にこちらのことも遊びの一貫として情報を集めてたようだった。
「それでは乗り込むか?」
「そうします」
「では出撃だ」
レオンがダイブカプセルごと搭乗口に取り込まれていく。
そしてレオンの支援マシン「ベスティア」に格納される。
「ベスティア発進シーケンス。リニアレール延長。
ベスティアはモードチェンジしてください」
「レオン了解、ビーストモードからトレイラーモードになります」
「ベスティア」はビーストモードからトレイラーモードになると移動中にリニア・ブリッドカウルが被さる。
その後リニア・ランチャーと呼ばれるリニアレールの端にある機構にセットされた。
「リニアランチャー稼働」
リニア・ブリッドカウルはリニア動作を始めリニアレールを走り始めた。
超電導レールに乗り発射されるレオン、その速度は一気にマッハを超えていく。
「レオン大丈夫か?」
「ダイブカプセルに寝転んでいるから大丈夫ですよ」
レールエンドに近づくときスクラムジェットに点火しリニア・ブリッドカウルが外れる。
スクラムジェットは加速し続けマッハ8以上になる。
移動手段としてこれほど早いものはないのだが、何処でも使えるというものではなくリニア・ランチャーという発射台が無ければならない。
つまり帰りはリニア・ランチャーがあるところまではトレイラーモードで移動することになる。
「こちらレオン、スクラムジェット安定、目的の場所まであと十分」
流石だった、国内であればどこでも目的地まで三十分で着く。
ちなみに俺は、ここでレオン着くのを待っている。
レオンが着き次第マリオネットを出して管制を始める予定だった。
「ネットで見ると相当悲惨な状況のようですね。
警察機構側のサイボーグと獣ボーグが全滅に近いですね。
あぁっ、この獣ボーグ早いな。」
「レオンは大丈夫そうか?」
「確保せずに全滅なら簡単だと思いますけど?
獣ボーグは確保ですよね。
だって命があるはずだから」
「その通りだ。出来そうか?」
「頑張りますよ」
その自信にあふれた言葉に感心するが、警察機構が全く手が出ない相手にどう挑むというのだろうか?
だが戦争が終わると、民生用として戦争被害者や障碍者の無くなってしまった機能を補完するための四肢や臓器への応用が研究されさらに研究が進んだ。
この結果現在ではバイオ臓器や培養臓器を始め色々な体の部位が代替部品として開発されている。
その精度は殆ど義手とは分からないほど精巧なものだった。
この時代ではこのような生体代替部品を利用し医療の幅を広げていた。
もちろんペット用として動物の代替部品のあった。
だが、兵器で利用されたものが民生品として発展したにもかかわらず再度兵器に転用され始めた。
これらの技術は再度サイボーグとして兵士を強化するための方法として利用された。
人の世界では一部改造の強化サイボーグだけでなく脳の一部を含む全身改造のサイボーグも現れている。
-- 獣ボーグ --
それはAIコマンダーが組み込まれた動物をサイボーグ化した兵器だった。
単純なAIコマンダーを組み込んだ動物のアンドロイドであるアニマロイドとは違い本能と言う意思がある。
獣ボーグは意思があることでAIでは出来ない判断パターンを構成できた。
◆ ◆
巣鴨が着任し居室に入る数時間前八角研究所の研究チームの大崎がプラン開始の号令をかけた。
「プラン・ダブラニムを開始する。全員モニタリングの準備をしてください」
「「「了解しました」」」
研究所員達はディスプレイを前に一斉にヘッドセットを装着し準備する。
ガラス越しに見える獣ボーグとアニマロイド数体の部隊を見ながら大崎は本部の永井邦香に自慢げに話しかける。
「邦香君見たまえ。
ダブラニムで使うのは獣ボーグをマスタとしてアニマロイドをスレーブとした兵器なのだ。
今まで指摘された獣ボーグとアニマロイドの弱点を克服したものだ」
「獣ボーグの反応速度の遅延の問題も解決したと聞きますが?」
「邦香君、何が遅延を起こしていたと思う?
最初は拒否反応だと思っていたのだが、実は獣ボーグの大きさだったんだよ。
今までは獣ボーグを大きくし過ぎたのだよ。
今回は司令塔として最大の大きさまでで押さえてある。
あれを見たまえ。
改造後もちゃんと元と同じ速度で四肢を動かせているだろ」
「すいません大崎博士、高速で動作していないので分かりませんよ。
でも理論的にはその通りですね」
「まずは獣ボーグ一体とアニマロイド五体の試作部隊でこの国の警察機構にテストしてもらうとしようかじゃないか」
「どう対応しますかね?」
「警察は数で来るだろうな」
「あれ?兵器は装備しないのですか?」
「兵器は、あの爪と尻尾があるからね。それ以外は装備しない」
「何故ですか?」
「簡単だよ兵器を使うと足が付き易いんだ。
装備するなら後の残らないもので、捕獲された場合も兵器自体の出所が分からないものでないとね」
「確かに銃やミサイルは火薬を始め証拠が残りやすくて作られたところが直ぐに分かりますからね。でも大丈夫でしょうか?」
「大丈夫さ。この国のレベルでこの試作部隊を捕獲もしくは倒せるものはいない」
場内広報用のスピーカから実況が流れ始めた。
「獣ボーグ『ガンドール』のAIコマンドへプランを投入完了」
『ガンドール』は休んで伏せていた体制から立ち上がる。
その動作の後、各アニマロイドは指令されてスイッチが入ったように立ち上がった。
「ガンドールの拘束具解放。格納庫の扉開きます」
格納庫の扉が開き始めるとガンドールは上を向き大きく遠吠えする。
「ぐぉ~っ」
大きな電子音が格納庫に木霊するとともに、その後アニマロイドも応答するように遠吠えた。
「ガンドール暴れて来い!!」
大崎の指令がスピーカから流れると一気にガンドールとアニマロイド部隊は目的地に向かって走り出した。
◆ ◆
何も起こらなければ、それでも良い訳でその時間で彼らをリアル社会に戻す行動をすれば良い。
ということで初日から事件など起こらないだろうと思っていたので同じ世界にダイブしようかと思っていた。
だが有巣は眠っているし来栖は『大人の時間』とか表示したまま連絡が出来なくなった。
「全く、十四歳でよくやるよな・・」
ということでレオンだけが相手してくれそうだったので密林世界にダイブする準備をしていた。
「フォアン、フォアン、フォアン、フォアン」
非常アラームが鳴る。
俺の隊は子供が多いので大きなベルではなく可愛いアラーム音にしてある。
ここだけの話だが、有巣が起きないようにするためだという噂もある。
直ぐに上の指令センターの中村指令に連絡してみる。
「巣鴨か、支援要請が来ている・・・というか支援指令だ。
N市で所属不明な獣ボーグとアニマロイド集団の襲撃を受けてるとのことだ」
年下なのに相変わらず上から目線だった。
俺の上官だから仕方がないけどね。
「獣ボーグとアニマロイドならN市で対応できるだろ?
なんで俺の所なんだ?」
「獣ボーグの動きがセオリー通りではなく、本当の俊敏な動物のようだという。
それと今までにないソフトウエアを使っているようでアニマロイドの動きが違うらしい。
そんな訳で『獣の王』の出番だ」
「ちょっと待て、なんでそこまでお前が指令するんだよ?」
「細かいことは良いんだよ。ともかく出動だ」
仕方がない、出撃させることにする。
そうさ他の二人ではなくレオンであれば問題はない。
「レオン出動できるか?」
「はい。あまり自信はありませんが」
初めての出動に緊張しているのだろうか自信がなさそうだった。
「大丈夫だろう」
前回の奪回作戦での彼らの攻撃は犠牲者の数からしても無敵と言えるだろう。
だがそのことを言うのは厳禁だ。
そう彼らを人、いやリアル世界に戻すのが目的だからだ。
でもそんな彼らに頼る今の俺達、大人の事情は頂けないな。
彼らの支援マシンは三機が新規に開発されていた。
来栖のための「ザナドゥ」、レオンのための「ベスティア」、有巣のための「ワンダラー」である。
「ベスティアを準備するが、初めてだからリモートで操作するか?」
「ベスティアはマニュアルは読んでいるしシミュレーターで練習しておきましたよ。
それとN市で起こっている襲撃だったらリモートではレイテンシーが問題になるのでクラウドからでは操作できませんね」
流石だ、既に調査済みか・・
着任する前からそこまでやっているのか・・・
本当に彼らにとってリアルワールドもRPGの世界の一部なんだろう。
遊んでいる間にこちらのことも遊びの一貫として情報を集めてたようだった。
「それでは乗り込むか?」
「そうします」
「では出撃だ」
レオンがダイブカプセルごと搭乗口に取り込まれていく。
そしてレオンの支援マシン「ベスティア」に格納される。
「ベスティア発進シーケンス。リニアレール延長。
ベスティアはモードチェンジしてください」
「レオン了解、ビーストモードからトレイラーモードになります」
「ベスティア」はビーストモードからトレイラーモードになると移動中にリニア・ブリッドカウルが被さる。
その後リニア・ランチャーと呼ばれるリニアレールの端にある機構にセットされた。
「リニアランチャー稼働」
リニア・ブリッドカウルはリニア動作を始めリニアレールを走り始めた。
超電導レールに乗り発射されるレオン、その速度は一気にマッハを超えていく。
「レオン大丈夫か?」
「ダイブカプセルに寝転んでいるから大丈夫ですよ」
レールエンドに近づくときスクラムジェットに点火しリニア・ブリッドカウルが外れる。
スクラムジェットは加速し続けマッハ8以上になる。
移動手段としてこれほど早いものはないのだが、何処でも使えるというものではなくリニア・ランチャーという発射台が無ければならない。
つまり帰りはリニア・ランチャーがあるところまではトレイラーモードで移動することになる。
「こちらレオン、スクラムジェット安定、目的の場所まであと十分」
流石だった、国内であればどこでも目的地まで三十分で着く。
ちなみに俺は、ここでレオン着くのを待っている。
レオンが着き次第マリオネットを出して管制を始める予定だった。
「ネットで見ると相当悲惨な状況のようですね。
警察機構側のサイボーグと獣ボーグが全滅に近いですね。
あぁっ、この獣ボーグ早いな。」
「レオンは大丈夫そうか?」
「確保せずに全滅なら簡単だと思いますけど?
獣ボーグは確保ですよね。
だって命があるはずだから」
「その通りだ。出来そうか?」
「頑張りますよ」
その自信にあふれた言葉に感心するが、警察機構が全く手が出ない相手にどう挑むというのだろうか?
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