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お嬢様とシェリル、ユリアナと異世界のカーシャ

クリシェの思索(1)

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 音を忍ばせクリシェの部屋に入る”陰”……
「クリシェ姫様、カルバモス卿の事件、報告書をお持ちいたしました」

「ありがとう、ご苦労だった」

「シャムカリン半島におります潜入班に伝えておきます、喜びましょう」

「下がってよいぞ」

 その夜クリシェはいつもの様にシェリル姫の情報を整理していた。

「今回も何とも、ごっちゃ煮状態ね、本当に……
 シェリル姫って飽きさせないわね!!
 え~っと、ユーラザリン?
 ああJUSTの代表か……
 聖戦騎……グラウザー……、妹?……、」

「これはビンゴね!!、確定よ確定!!」

「今までの推察を裏打ちするように、報告書の通りだとすると『聖戦騎エイル様』
 それがユリアナの前身で確定だわね……」

 報告書の中にある一文に目がとまった。
「精霊力……」

「でも、精霊力を使ったね?
 それも『オーバードライブ』とかいう方法……
 違う、それだけじゃないわ『精霊クィーン』と叫んでいるわ……」

「謎な存在よね、精霊力の知られていない力なのかしら?
 正教会に属していた聖女であることと、戦闘に特化した聖戦騎であったことは確かになったわ
 彼女の葬送の儀は昔の資料によると確か11年前だった
 ユリアナが『互助会』をこの地で始めたのも、その頃
 ユリアナ様はエイル様確定、よってエイル様が生きていたことは事実だ……」

 クリシェは上を向いて考えていたが……
 次の報告書を手に取った。

「こっちの報告書は薄いですね……
 名前は不明……通称はお嬢様?
 従者はマリアス……
 ”お神成り”…青い髪になった?
 なにこれ?……」

「これって、神降ろしだよね……
 ただ、立場がおかしいような気がする、降ろされた方が低い位なの?
 謎な存在だ……”お嬢様”ね、覚えとくわ……
 シェリル姫との関係性がはっきりしないが、言葉からすると関連があると言うことだろう……
 陰に追跡調査を続行させよう」

 ここで少しお茶を飲むクリシェ

「やはり緑茶が一番ね、落ち着くわ」

「では、メインディッシュと行きましょうか!!」

「4mの壁を破壊……ここだけ読むと化け物扱いよね・・・……
 私だって、この間のビームを見ていなければ、そんなバカなと思っちゃうわ」

「やっぱり左手、そしてユリアナ様にはっきり言っているわ『聖女』だってね、確定、確定、うん、うん……」

「シェリル姫は聖女、そして右手の聖痕はまだ顕現していない……そう考えるのが自然ね
 そしてシェリル姫の左手の聖痕、それは『創生』の聖痕、これも間違いないと思われるわ」

 クリシェは古い粘土板を重そうに持ち上げ表面をさっと拭き誇りを飛ばす。
「そして今までの調査だけでは不足する情報を入手することも出来たのよ……」

「古代粘土板にある情報では、聖女と呼ばれる者には7つの聖痕が発生する可能性を示しているわ……
 でもこの文字も無いころの粘土板なので絵でしか確認できないけどね」

「そうそう、想像よ、想像力が重要よ……」

「シェリル姫やユリアナ様の聖なる武器、”セイント・アームズ”は『聖なる光』を固めた武器
 それを作った聖女は大聖女と言われている」

「ちなみに竜王に聖なる槍を寄贈した大聖女の話は残っている
 その記録によると彼女は最初は通常の聖女であり、左に聖痕が現れ段々と力が増大したと記録されている
 だが、聖戦騎であったとは記録にはない」

「創生の聖女は物を作り出す聖女……
 でも戦えないということになる……」  

「シェリル姫は戦える聖女……
 つまり昔現れた大聖女とも違うわ」

「たぶん創生の聖痕は、ただの通過点だと思われる
 なぜなら、シェリル姫はその力を創生ではなく、それ以外の用途に発揮できる」

[創生のための『聖なる光』を集める力ってどんな力?、と考えて見たけど不思議能力ね……」

「だって鉄をも超える物質化するほどの光って?
 一瞬で集めること自体不可能でしょう、というかそんなに光の量が存在するだろうか?
 先の聖女は集めるのに1年以上掛かっているような記述だった」

「シェリル姫も簡単に光を集めそして利用するという使い方をしているが……
 創生にその力を使うと、どんなものか計ってみたいものだ……」

「シェリル姫の創生の力はとんでもないものなのでは無いだろうか?
 一瞬で創生できるほどの光を集めるかもしれない……
 いや、違うな、私が見る限りあの光の量は作り出されていたような気がする
 シェリル姫は”聖なる光”を作り出せるのでは無いだろうか?」

「これは推測なんだけどね……
 たぶんシェリルの左手の力が強すぎて右手の聖痕の顕現が遅れていると考えるべきだと思う」

「だから、次に現れる聖痕は、右手の聖痕か、おでこの聖痕の可能性が高い……
 聖痕がまた現れて、隠せなくなったら、どうするかしらシェリル姫……」



  「シェリル姫、聖痕が複数顕現する『大聖女』は確定です」



  「そして私は、その大聖女に呼ばれた『瓦礫少女』という所か……」
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